[女性誌速攻レビュー]「DRESS」8月号

自立した独身アラフォー雑誌を卒業!? 「DRESS」が「結婚と恋愛」にはしゃぎ始めた!

2014/07/12 19:00

 前々から思ってたんですが、この35~45歳あたりを指す「アラフォー」ってくくり、現実にまったく即していないと思うんです。自分のメンタリティー経験からいって、35になる時と40になる時と、どちらがインパクトがあったかって、そりゃ40になる時でした。30代と40代では、メンタリティーが違うのです。少し前に「DRESS」で一生懸命特集していた「卵活」でも、38歳と43歳では自然妊娠できる可能性がかなり違うとのことで、やっぱり40が分かれ目でした。現在、40代前半の筆者は、ぶっちゃけ35歳の女性を「仲間」だという感覚にはなりません。バブルを経験したという意味でも、40代後半の女性の方が自分に近い気がするのです。

 だから、この企画で登場した3名が全員30代である時点で、まず自分と同じ視点にはなりませんでした。しかしサブタイトルは「ダイアナ・エクストラバガンザさんに叱ってもらいました」なので、もしかしたら見識の深さとか落ち着きを持ち合わせていない、叱られやすそうな人材を選んだのかもしれないし、座談会の内容を少し操作したのかもしれません。ともかく、アラフォー3名にまったく共感できないので、勝手に知らない人たちが怒られてるという印象しかない企画でした。なるほど、確かにこれは「INDEPENDENT WOMEN」の名前にふさわしくないかもしれません。

■多婚特集の落とし穴

 続いて「102人のリアル恋愛データ」という企画も見ていきましょう。「Project DRESS」という、「DRESS」の読者会員に恋愛についての緊急アンケートを取ったそうで、それがまとめられたページです。例えば「浮気をしたことはありますか?」「ある(1回)19%、ない39%、ある(2回以上)42%」という風に、16の質問に対しての回答が円グラフで紹介されています。その他、「あなたは今恋をしていますか?」「年上、年下のどちらが好きですか?」といった質問が並んでいるのですが、なぜか「独身の方は、結婚をしたいと思いますか?」という質問がないんです。恋愛について聞くなら、当然そこは聞いてみたい項目でした。もしかして、「結婚したい」「いい人がいたら結婚したい」で100%になってしまったとか、グラフとして紹介しても面白みのある答えが出なかったのでしょうか。

 このあとにも疑問な点が。「多婚さんに学ぶ、幸せのつかみ方。」という2回以上結婚をしている多婚の人を取り上げた企画が続くにもかかわらず、「あなたの今の状態を教えてください」という質問の回答が、「未婚(彼がいる)」、「未婚(彼がいない)」、「既婚」だけなのも気が利かないですね。単語には未婚か既婚の2つしかないのですが、バツイチの筆者としては、自分を「未婚」と言うのには抵抗があります。一度してるのに“未”っていうのもね。それに、多婚についての特集をするなら、実際に読者がどのくらい多婚なのかも知りたくなりました。

 つまり、なんとなく誌面では多婚女性にそのよさを聞き、「多婚はいいよ」という流れになっているのに、せっかく取ったデータが生かされていないんです。多婚特集を企画したのが、「読者は結婚願望が強いから、その後押しをしたい」からなのか、「読者は結婚願望が薄いから、あえて多婚のよさを教えたい」からなのか、せっかくのデータが宙ぶらりん。あ、もしかして“緊急”アンケート、とわざわざ書いたのは、多少データの取り方に不備があっても、データ収集の目的が曖昧でも、仕方ないよねっていう伏線だったのかな ? 

 INDEPENDENT WOMEN に向けた雑誌であるなら、結婚することにこだわらない姿勢が自然なような気がするけど、それを取り払った「DRESS」としては、あくまでリベラルな立場で読者に語りかけたいってことなんでしょうか。卵活特集の時にも思いましたが、雑誌全体としての方向性や目指すスタイルがどうにも見えにくいのです。巻末に載っているマニフェストはなんのためなのか、卵活をするのは果たして自由になることなのか。結局、既存の30代向け雑誌と同じようなことをするのなら、アラフォーの価値や存在意義ってなんでしょう。あえてそこに切り込んだのなら、とことん追求してほしいと思ってしまいました。
(増井涼子)

最終更新:2014/07/12 19:00
『DRESS(ドレス)2014年 08月号 [雑誌]』
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