[女性誌速攻レビュー]「nina’s」3月号

深刻な相談なのに、答えがポップすぎる「nina’s」の産後クライシス企画

2014/03/05 21:00

■真剣味がまったくない産後クライシス

 「nina’s」においては、オシャレは幸せな家庭への片道切符。さらにいえば、オシャレな生活を送るための手間や努力こそが、素敵な奥さんの証し。クリエイティブな夫に寄り添い、交通の便が悪そうな海辺の古民家で酵素シロップを作り、子どもの世話や犬の散歩して、時々はオシャレな展示会にも行く。時代の最先端をいくようで、メンタルはとことん昭和な「嫁」であるニナmamaたち。なるべく泥臭いことは表に出さない「nina’s」では珍しい、夫婦問題のページはこちら「産後クライシスをやっつけろ!!」。

 キュートなパステルカラーのデザインで、産後クライシスって何? なぜ起こるの? みんなはどうだった? 夫側の意見は? 解決策を教えて、えらい人! といった具合。ピンクのふわふわ文字で、結構ドぎついことが書かれています。いい嫁、いい奥さんを目指していたニナmamaたちだからこその苦悩が。

「主人のことは大好きですが、育児も家事も何も手伝ってくれないので『少しはやってよ』と、つい小言を。そしたら、『文句があれば別れてもいい』って言われてしまったんです。以来、何かお願いをするたびに『おまえが欲しいって言ったから子どもを作ったんだ。イヤなら離婚だ』って……。(31歳/専業主婦)」

 まるで「婦人公論」(中央公論新社)の読者手記かと見紛う、夫のパワハラモラハラっぷり。この相談者の解決法も予測をはるかに超えており、「『パパのこと大好きだから絶対に別れないよ』と伝えたら、『離婚』と言わなくなりました!!」とのことでした……。

 「nina’s」が推奨する、クライシス回避の夫婦円満法はズバリ「ほめて伸ばす!」。ほめる達人の先生によると「脳というのは人称を認識しないので、ほめた人の脳内にもそのほめ言葉がそのまま響き、妻も一緒に成長できるんです」とのこと。まるで一石二鳥のノリで、「オットとの会話は“半音”上げる!」「“信頼”ではなく“尊敬”すべし!」など、そのスジの人が見たら卒倒の後に焚書坑儒されそうなアドバイスが羅列されておりました。

 この企画も、あくまで「産後クライシス」という言葉がここまで話題になっているから、トピックとしてキャッチーだから取り上げられているのでしょう。たとえばクリエイティブ夫婦も実はセックスレス問題を抱えてるとか、本当はライダーグッズが欲しいのに外国製のオモチャしか買ってもらえない子どもの実情とか、オシャレな表層に抑圧された部分には向き合わないのが「nina’s」のルール。こだわり抜いたママ会は、その抑圧の発露とも考えられるのではないでしょうか。
(西澤千央)

最終更新:2014/03/05 21:00
nina's (ニナーズ) 2014年 03月号 [雑誌]
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