ドラマレビュー第34回『ダークシステム 恋の王座決定戦』

『ダークシステム』、テレビ規格を無視した“少年マンガ的”な台詞回しが生む快感

2014/02/26 21:00

 近年、マンガやアニメを原作としたドラマは多いが、生身の役者が演じる実写作品に移植する際、台詞を原作のまま再現すると大抵は不自然で目も当てられないものになってしまう。本来、その不自然さをどう解消するのかが、脚本家の腕の見せどころなのだが、『ダークシステム』は、その不自然さをあえて強調することで、独特の世界を作り上げている。

 元々、『ダークシステム』は幸修司が2009年に自主映画として制作・監督したもので、『ジョゼと虎と魚たち』や『のぼうの城』の監督として知られる犬童一心が企画・シリーズ構成を務め、幸は原作・脚本を担当している。こういったケースは極めて異例なのだが、今後、『ダークシステム』のような自主映画が、テレビドラマでリメイクされることで、幸のような新しい才能を取り入れるというパターンは増えてくるのかもしれない。

 本作が放送されている「ドラマNEO」は、KinKi Kidsの堂本剛が主演、福田雄一が監督を務めた『天魔さんがゆく』や、KAT‐TUNの中丸雄一が主演を務めた三木聡監督の『変身インタビュアーの憂鬱』など、ジャニーズ事務所出身のアイドルが主演でありながら、癖の強いマニアックな作品を放送する枠として定着しつつある。『池袋ウエストゲートパーク』や『木更津キャッツアイ』(ともにTBS系)などの宮藤官九郎の脚本作品を筆頭に、ジャニーズ事務所出身のアイドルがマニアックなドラマに出演するという流れは、今となってはそこまで珍しいことではないが、『ダークシステム』のマニアックな世界観は極北だと言える。

 少しだけ残念なのは、ヒロインのユリがお飾りで見せ場が少ないところか。彼女を男たちが取り合うという物語の構造上仕方がないのだが、時々モノローグで入る冷静なツッコミは面白いだけにもったいないと思う。今後は加賀見とユリの父親の対決となるのだが、最後は是非ともユリ本人に加賀見と戦ってほしい。
(成馬零一)

最終更新:2014/02/26 21:00
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ジャニ起用しなければ面白かったかも(小声)
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