介護をめぐる家族・人間模様【第20話】

「成長しきれていない危うさが怖い」介護系SNSを退会した管理人が見た世界

2013/11/24 19:00
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 天皇陛下の葬送の方針が発表された。一般人のエンディングも盛んだが、天皇陛下のエンディングも進んでいることに畏敬を覚えた。陛下のご意向で、皇后さまとの合葬も検討されたというが、皇后さまはご遠慮されたとのこと。「すわ、皇后さまも!」と喜んだ妻たちも多かったのではないだろうか。皇后さまが遠慮されたのは「おそれ多い」からである。誤解なきよう。

<登場人物プロフィール>
小野 優子(34)都内勤務の会社員。独身

■「介護職の仕事をしている人たちって真面目なんだ」

 「介護系のSNSに登録してくれない?」

 小野さんは友人からそんなお願いをされた。そのSNSは主に介護職に就いている人や、介護をしている人が会員登録して、情報交換をしたり日頃の悩みを吐き出したりするもの。友人の会社がそのSNSを立ち上げ、ある程度“活性化”する必要があるようだった。小野さんは介護の世界にはあまりなじみがなく、「ケアマネ」や「介護ヘルパー」という職業は聞いたことがあったが、具体的にどんな仕事をしているのかよくわからなかった。

「友人からは介護に興味がある一般人ということで、SNSでの投稿にコメントしたり、時には日記を書き込んだりしてくれればいいと言われました。つまり“サクラ”ですね。まだそのSNSは競合のSNSに比べて人数も少なくて、投稿や情報交換も活発じゃなかったようです」

 登録会員数の少ないSNSだっただけに、日記を更新する人やコメントを入れる人は大体決まっていた。何回かコメントを入れてやりとりするうちに友達も増えていき、慣れてくるとSNS内のコミュニティの管理人も任されるようになった。

「介護の仕事をしている人って真面目なんだなと思いました。投稿は仕事のことが中心で、悩みを書き込んだ人には熱心なアドバイスが入ります。常連さんは30代くらいのシングルマザーでヘルパーのケイトさん。地方のスポット番組に介護相談員として出演している、介護業界では有名人らしいブルーマンさん。介護職ではないらしいけれど、いつも癒やされる写真をアップしてくれるSHOWさん。それからお姑さんの介護まっただ中で、よく愚痴を投稿するマメマメさん。あと、若い介護士の龍之介さん。施設長をしているらしくよくほかの人のアドバイスをしている望さんとか、おじさんヘルパーのポッキーさんとか」

 介護職の人たちは真面目だという印象を持った小野さんだったが、投稿を読んだり、時にはメッセージでやりとりしたりするうちにケイトさんやマメマメさん、龍之介さんなどに深刻な内容の投稿があるのが気になるようになった。

「所詮バーチャルな世界ですから、誰でも虚構はあると思うんですよ。現実から逃避したくて、SNSでは違う自分を演じるのは仕方ないと思う。でもこのSNSは逆で、明るく振る舞いながらも現実の苦しさが透けて見えるんです。この人たち、現実世界ではちゃんと普通に暮らしていけてるんだろうかって心配になるほど。施設の上司やお客さんの悪口を書いたり、挙げ句勤務先をすぐ辞めては違う施設に移ったり。空き時間を使って、何回も投稿していると思ったら、突然退会したり。すると今度は明らかに同じ人が違うハンドルネームで再入会していたり……精神的に不安定な人が多いなと」

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