【ジャニーズ・ワールド】

少年野球からミュージカルへ、ジャニーズ事務所の創業物語『ジャニーズ・ファミリー』

2013/07/13 14:30
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『ジャニーズ・ファミリー ―裸になった少年たち―』(オリオン出版)

 TOKIO・城島茂が脚本構想したという映画イベント『ジャニーズ・フィルム・フェスタ 2013』の開催が発表された。出演者には、TOKIO(国分太一、長瀬智也)、KinKi Kids(堂本光一)、V6(坂本昌之、井ノ原快彦、岡田准一)、嵐(大野智、櫻井翔、二宮和也)、タッキー&翼(滝沢秀明)など26名以上のジャニーズタレントというすごい顔ぶれが揃う。

 内容は、城島がHey!Say!JUMPのメンバーを連れて架空の島「ライセンス島」を訪れ、そこで待つ、テレビ司会、映画、舞台、音楽など各ジャンルで活躍するジャニーズの先輩から、一流のジャニーズタレントになるための神髄を学んでいくというもの。この奇妙奇天烈な世界観、昨年帝国劇場で上演された『ジャニーズ・ワールド』にもどこか通じる、いかにも「ジャニー喜多川」な世界だ。

 そんなジャニーさんの世界への知識を、ますます深めていくためのテキストとして今回手にとったのは、1976年に出版された、『ジャニーズ・ファミリー ―裸になった少年たち―』(和泉ヒロシ著、オリオン出版)。

■ジャニーさんは軍関係者だった

 たのきんトリオの登場まではまだ間がある。フォーリーブスはもうベテランになり、郷ひろみが移籍、豊川誕がデビュー、そんな頃に出版された本だ。本書は、ジャニーズ事務所設立にいたるまでの若きジャニーさんの半生が詳しく書かれているのが特徴だ。ヤング・ジャニーさんは、一体どんな日々を送っていたのだろうか。

 1952年。

そのころ、アメリカの情報局(CID)の情報員という肩書きをもった、ひとりの男性が来日した

 それがジャニーさんだった。CIDとは、「アメリカ陸軍犯罪捜査司令部」の略称で、ジャニーさんは米軍関係者として日本にやってきた。ロサンゼルス生まれの日系二世。本名ジャニー・H・喜多川。アメリカのショービジネスの世界で働いていたこともある。現在の代々木公園やNHKの場所にあった米軍施設、ワシントンハイツで暮らしていたジャニーさんは、心にある思いを抱くようになる。

日本の少年たちに夢がなかったし、遊びさえもなかったような印象をうけ、強いショックとともに深い悲しみを感じたのだ

 少年たちに夢を。そう思ったジャニーさんが取り組んだのは、少年野球団の結成だった。チーム名は、「オール・エラーズ」「オール・ヘターズ」などの候補の中から結局、「ジャニーズ」に決定。ジャニーズという名前がこの世に誕生した瞬間だ。

 そんなわけで、ジャニーさんの自宅に野球少年たちが続々と集結するようになってきた。じわじわとジャニーズの原型の香りが漂う。その中に、「練習がなくても必ず集まってくる少年のグループがあった」。それが、のちにアイドルグループの「ジャニーズ」となる面々だ。

■ジャニーさんの悔恨が原動力に

 それにしても、野球チームがなぜアイドルタレント事務所になったのか。それは、ジャニーさんが野球と同じぐらい、ミュージカルが大好きだったことに理由がある。ジャニーさんは、いつも集まってくるメンバーたちを連れて、映画『ウエストサイド物語』を毎日のようう見に行っていたのである。ここに、ジャニーさんの思惑が秘められていたのかもしれない。いつの間にかスクリーンの中で繰り広げられるミュージカルの世界に魅せられていった少年たち。ある日の映画の帰り道、彼らが街中で突然踊り出した。

ちょっと前屈みになり、爪先き立ちして、指を鳴らす格好で、映画の中の一場面を再現したのであった

 そして彼らは、ジャニーさんに切り出した。「ミュージカルをやってみたい!」。これを聞いたジャニーさんは、「計画通り」とニヤリとしたかもしれない。しかし、最初はただ笑っただけで、返事はしなかった。

「彼らは、ミュージカルというものが、何なのか、本当の意味を知らなかった」

 ジャニーさん、カッコいい! しかし、彼らの熱意に本気を感じて心が動いていく。それというのも、「本心をいえば、ジャニーさん自身が、ミュージカルをしたかったのである」「そのことが実現しないまま、現在にいたったことへの悔恨がずっと尾をひいていた」からにほかならない。ジャニーさんも、舞台に立ちたかった。「ジャニーさんは、四人組に自分の見果てぬ夢を託したのである」。さあ、盛り上がってきた! そして、

この日、ジャニーズが誕生したのである

 ジャジャジャーンと、壮大なBGM でも流したくなってくる。それから50年。この「ミュージカルやりたい」宣言がなければ、ジャニーズは今も少年野球チームのまま、SMAPも嵐もSexy Zoneも、この世に送り出されなかったのかもしれない。我々は皆、「初代ジャニーズの皆さん、ありがとう」と感謝するべきだ。

 ところでこの初代ジャニーズには、今のグループにも時折見られるイメージカラー戦略が導入されていた。

それぞれの色で、個性が分けられるというジャニーズの個性こそ、ジャニーさんが予見した通り、従来にない芸能界のヌーベル・ヴァーグ(新しい波)となり、一気に人気を独占してしまうのである

 本書でメンバーカラー別の意味合いが解説されている。カッコ内に現在のジャニーズメンバーカラーも一部付記した。イメージと合っているかどうか考えると面白い。

■青→清々しい純粋な性質を表わし、ちょっぴりスローなのを目覚めさせてやる
(SMAP・中居正広、嵐・大野智、関ジャニ∞・安田章大、KAT-TUN・上田竜也)
■黄→あたたかい色で、人の気持ちを考えてやる心を持ち、でも、慎重さを欠く短所を注意する
(SMAP・草なぎ剛、TOKIO・山口達也、NEWS・増田貴久、A.B.C-Z・塚田僚一)
■赤→天真らんまんな現代っ子的な行動力。そしてその長所が短所に走るのをとめる
(TOKIO・長瀬智也、V6・森田剛、嵐・櫻井翔、Hey!Say!JUMP・山田涼介)
■黒→地味でまじめでキチンとした性格を表わす兄貴分であり、一番大切な基(もとい)である
(少年隊・東山紀之、関ジャニ∞・横山裕)

 本書のあとがきには、こう書かれている。

やがて、ジャニーズ・ファミリーの汗と血と涙の結晶が実を結んで、私たちの前にどっかりと動かしがたいものとなって聳(そび)えたつだろう

 今のジャニーズは、まさにこの一文通りの存在となっている。映画で城島に率いられたJUMPメンバーが学ぶのはまさに、その「実」の部分なんだ。そんなことを思う1冊だった。
(太田サトル)

最終更新:2013/07/13 14:30

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