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持参金数千万のご令嬢も!? 2,000人集結で大騒動になった「婚活パーティー」

2013/06/26 16:00

■婚活大行列がお目見え!

 ところが、実際には参加者が後から次々に押し寄せ、ついに神社の境内から溢れてしまった。そこで、急遽予定を変更。1キロほど離れた多摩川の河川敷へと場所を移すこととなった。そのため、参加者は受付で氏名・経歴などを告げて番号札をもらい、雪ヶ谷大塚駅から多摩川まで移動する事態となり、中原街道に長い行列ができる大騒動になったという。主催者によれば「300人どころか2,000人以上だった」と回想している。

 さて、その集団お見合いの内容だが、受付で番号札をもらえば、あとは会場で自由に異性へコンタクトできる。気に入った相手がいたら、その相手の番号をもとに主催者事務所で氏名や素性を確認し、後日あらためて手紙で交際希望を申し込むというシステムだった。

 参加者は東北から九州までほぼ全国各地から、女性は平均年齢26歳とのことだった。中には、子ども連れの未亡人や、母親同伴の若い女性の姿も見られたらしい。持参金2,000万円を用意してきた若い女性もいたという。聞けばどこかの会社重役の令嬢だったとのこと。ちなみに、2,000万円といえば、現在の価値に直せば軽く15億円以上になる。そこまで結婚願望は強かったということだろうか。

 ともあれ、この最初の集団お見合いではほとんどの参加者に交際希望の申し込みがあり、大成功のうちに終了した。さらに翌年4月には第2回の集団お見合いが開催され、この時には参加者が1万人を超えたという。この企画は大反響を呼び、真似をしたイベントが次々に企画された。特に市町村が企画するケースが多く、神奈川・鎌倉市などは湘南海岸で水着での集団お見合いまで開催したほどだった。

 さて、現在に目を移すと、結婚を希望する適齢期の男女は多い。内閣府が2009年および11年に実施した調査によれば、20代から30代の独身男女の8割、女性では9割が結婚を希望しているという。にもかかわらず、近年も晩婚化や未婚率上昇という状況が続いている。「婚活」という言葉を作ったことで知られる中央大学教授の山田昌弘氏は、若い世代の非正規雇用につく人の増加などによって、経済的に不安定だったり、出会いの場が得られなかったりという事情が大きいと指摘している。

 ほかにも、興味深いところでは、「恋愛は面倒だけれど結婚はしたい」と思っている人が結構多いという点である。内閣府のアンケートでは20代から30代の男女の約3割強は「恋人は要らない」と答えており、その約55%が「恋愛が面倒」と回答している。しかし、そういう人たちでも、多くが結婚を望んでいる。恋愛は面倒臭いが結婚はしたいというわけであろう。

 ともかく、現代も戦後と同様に「結婚はしたいができていない」という男女が多いことは確かなようだ。そして、現代人が出会いを求めて、街コンやお見合いパーティーに出かけることも、66年前と基本的には何も変わっていない。いかにインターネットやモバイルといった便利な機器が普及しても、結局決め手になるのは生身の人間同士のコミュニケーションだということだろう。「集団お見合い」はどれだけ時代が移ろいでも変わらない、男と女の“ツボ”を掴んだ企画なのかもしれない。

橋本玉泉(はしもと・ぎょくせん)
フリーライター。事件や世相などに関するルポのほか、歴史・文化、民俗・庶民生活、性風俗についての記事を多く執筆している。著書に、『怪しい広告潜入記』、『色街をゆく』(ともに彩図社)などがある。

最終更新:2013/10/03 17:05
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