ドラマレビュー第7回『八重の桜』

歴史を描くあまりにドラマを放置した『八重の桜』、ようやく動き出した物語

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「八重の桜 後編」(NHK出版)

 『八重の桜』(NHK、以下同)の第一話を見た時、すごいものが始まったと思った。本作は「幕末のジャンヌ・ダルク」と呼ばれた新島八重の生涯を描いた大河ドラマ。物語冒頭、福島県・会津の鶴ヶ城では激しい銃撃戦の音が鳴り響いていており、城下のあちこちで火の手が上がっている。そこに突入する土佐藩兵を次々とスペンサー銃で撃ち殺していく八重。無骨な拳銃を構える綾瀬はるかの姿を見た瞬間、「超カッけぇ」と思い、この続きを早く見たいと思い期待に胸を膨らませた。

 しかし、そこからが長かった。

 画面構成(レイアウト)や美術設定における映像レベルの高さに関しては、文句の付けようがないクオリティだろう。チーフ演出を務める加藤拓は超大作『坂の上の雲』の演出を担当していたが、あの作品の二〇三高地での戦争シーンの映像も素晴らしく、おそらく予算規模の面でも国内最高峰の映像だったといえる。大河ドラマは歴史モノが定番化しているため、戦国時代でも幕末でも戦争をどう描くかが必須課題となっている。しかし、今までの大河ドラマは、映像が安っぽく、レイアウトが狭くて建物がセットにしか見えないため、ビジュアル面での不満が大きかった。それがCGの発達と『龍馬伝』以降のプログレッシブ・カメラ等の導入による撮影技術の革新によって、少しずつ改善されていき、『坂の上の雲』で1つの完成を見たといえる。『八重の桜』はその廉価普及版とでも言うような作品だ。1年というタイムスパンで、あのクオリティをどれだけ維持できるのかが今後の課題だが、映像レベルに関しては今のところ高い水準を維持しており、心配は無用だろう。

 むしろ問題は脚本である。正直、第二話以降は、複雑な物語についていけずに何度も挫折しそうになった。タイトルの通り、物語の主人公は綾瀬はるかが演じる八重で、銃を持ち武装した彼女が女戦士として侍たちと戦うという、戦場で銃を持って戦う美少女という『風の谷のナウシカ』的モチーフこそが、このドラマのあざといまでのセールスポイントだったはずだ。しかし、歴史ドラマとしての格調を優先するあまりに、八重が物語にコミットしない放置プレイが続き、幕末の維新志士たちの政治的駆け引きや、歴史的経緯を丁寧に描くあまりに、ドラマとしての勢いを削いでしまったように思う。

 脚本を担当しているのは『ゲゲゲの女房』の山本むつみ。元々、時代劇を多く手掛けており、膨大な資料を組み合わせることで、擬史を組み立てていくことを得意とする脚本家だ。その意味で大河との相性は良いはずなのだが、本作に関しては、擬史的辻褄合わせに夢中になるあまりに、ドラマ自体がわかりにくくなっていたように感じる。『篤姫』や『江~姫たちの戦国~』のように、無理やり歴史上の出来事にヒロインを絡ませるのは、さすがに安易だと思うが、八重があまりに物語に絡まないため、「歴史の辻褄合わせが見たいんじゃなくてドラマ(物語)が見たいんだ」と何度も思った。おそらく、それで離脱した視聴者も多いことだろう。

 しかし、会津藩が幕府に裏切られて賊軍となる、という歴史の辻褄合わせがやっと終わり、第二十話「開戦!鳥羽伏見」から、白虎隊の悲劇としてもよく知られる戊辰戦争へと物語は一気に雪崩こむ。やっと八重も本編に絡む気配を見せ始め、現在は目が離せない展開が続いている。おそらく、この6月で戊辰戦争が大きく描かれ、第一話冒頭での鶴ヶ城での籠城戦に繋がっていくのだろう。次々と八重に起こる悲劇を考えると気が重いが、そこで描かれるであろう壮絶な戦争を考えると、わくわくさせられる。

 『八重の桜』は、舞台が福島県ということもあり、『あまちゃん』と並んで東北復興ドラマとしてPRされている。しかし描かれているのは、いかに会津藩(福島)が江戸幕府(東京)に切り捨てられたのかという、悲劇の物語だ。同時に、物語冒頭のナレーションでは、戊辰戦争で使われた銃の多くが、アメリカの南北戦争で使われていて、不要になった物が流れこんできたものだった、と語られており、ドラマの節々で描かれる八重が魅せられている銃の存在が、新しい時代の象徴であると共に、不吉な予兆として描かれており、暗に原子力発電所と重ね合わされているようにも見える。

 そういった裏読みできる比喩関係の面白さが随一なだけに、この半年のもたつきは歯がゆくてしょうがなかった。しかし、やっと面白くなってきたので、途中で脱落した人も、今月だけでも見てほしいと願う。
(成馬零一)

うんちくオヤジの話に愛想笑いで半年付き合った感じ

しぃちゃん

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