[連載]ギャングスタのスターたち

セルアウト型の音楽を足がかりに、“ビジネスマン”として成功したショーン・コムズ

2013/06/08 17:00

 ショーンは「パフ・ダディだと悪いことが起こりすぎる」と、P.ディディに改名すると発表。映画界にも進出、ハル・ベリー主演の『チョコレート』(01)などに出演し、話題を呼んだ。本業でもブリトニー・スピアーズやイン・シンクなど、ポップアイドルの曲もプロデュースするようになり、女性アイドルグループ「Dream」と契約を結ぶなど、ポップ界にも君臨するように。リアリティ・コンペ番組を手がけたり、大統領選挙に投票しようと呼びかけるキャンペーンを展開したり、米スポーツ最大のイベント「スーパーボウル」のハーフタイムショーに出演したりとイメージを完全に回復させた。

 05年に「ディディ」と改名したショーンは、『MTVビデオ・ミュージック・アワード』の司会を務め、「TIME」誌の「最も影響力のある100人」に選ばれた。翌年、所属ラッパーのメイスが、50セント率いるG-unitに入るために契約を解除したいと申し出てきたものの突き放し、怒った50セントが、ショーンをディスる曲「Hip-Hop」を発表する騒動が勃発。50セントとはしばらく険悪な関係にあったが、07年にジェイ・Zと3人で「Forbes I Get Money Billion Dollar」でコラボし、今は和解している。

 現在はショーンのクロージングラインも成功し続けており、マンハッタンの5番街に店舗を構えるまでに。香水、ウォッカ、レストランにテレビプロデューサーなど、手広くビジネスを広げており、制作会社も設立。今年夏には音楽ケーブルチャンネル「Revolt TV」を開局させる予定である。複数の女性との間にもうけた6人の子どもたちもすくすくと育っており、「やりたいことがありすぎて、寝る時間がない」とぼやきながらも、公私ともに充実した日々を送っている。

 常に時代の3歩先を行くショーン。才能あるトラックメイカーに頼りっぱなしで音楽はろくに手がけていないと陰口を叩かれたり、作詞も「ゴーストライターが手がけたもの」というウワサを認めるなど、イチから音楽を作るクリエーターとしては疑問が残るところもあるが、プロデューサーとしてのショーンがいなければ、数多くの名曲がこの世に誕生しなかったのは紛れもない事実だ。

 きらびやかなイメージとは対照的に、「成功に近道はない」「自分は忍耐強く、コツコツと仕事をこなしてきた。一夜にして成功をつかむのは不可能。そう簡単に運が回ってくることはないが、あきらめてはいけない。遊ぶ時間も、家族との時間も犠牲にして、まじめに働かなければならない」と発言しているショーン。12歳で働くことの楽しさを学んだ彼は、根っからのビジネスマンであり、これからも、幼少時代から夢見てきた“大きな歓声”を浴び続けることだろう。

最終更新:2013/06/08 17:00
『bmr レガシー:スーパープロデューサーズ』
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