"噂の女"神林広恵の女性週刊誌ぶった斬り!【第138回】

「気功師夫妻に作詞のアドバイスを請う」ELT・持田香織の洗脳が止まらない

2012/08/14 21:00
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「女性セブン」8月30日号(小学館)

下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の”欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!

第138回(8/9発売号より)

 旅行先のバンコクで現地の記者やジャーナリストと話す機会があった。日本でも大々的に報じられた昨年の大水害。しかし地方の被害は甚大だったものの、日本で報じられたようなバンコク中心地の被害はほとんどなかったという。特にテレビの台風や大雨など自然災害報道は、年々大げさになる傾向がある。センセーショナルな映像は数字が取れるから。本当の被災を正しく報道するならいいが、“絵になる”場所だけ瞬間的にクローズアップし、その後の復旧報道はおざなりだ。かの地で、宮城、岩手、福島の今後を思った。

1位「ELT持田香織 スピリチュアル気功師夫婦にべったり 3億円の新居の不気味」(「女性セブン」8月30日号)
2位「名門私立中学最悪のいじめ事件」(「女性セブン」8月30日号)
3位「谷亮子 期待はずれ柔道に『私が出たら』発言の波紋」(「女性セブン」8月30日号)


 今週はお盆休み。女性週刊誌も合併号ラッシュだったため、「女性セブン」のみのランキングである。そして――なんともデジャブ感溢れる記事に遭遇した。

 まずは1位。Every Little Thingの持田香織(34歳)の洗脳ネタである。持田は現在、ある気功師夫妻にハマり、大金を使ったり、家族と距離を置いたり、奇妙な振る舞いをしているのだという。うーん? あのオセロ・中島知子とそっくりである。

 きっかけは5年前からの体調不良や精神不安。気管支炎を患い、歌手としての危機に陥った時に、気功師夫婦と出会った。しかしただの気功ではない。パワーストーンだの、パワーグッズだのといった怪しい文句が並ぶ自然治癒治療院らしい。持田は彼らの施術を受け「肌の色が白く」「艶っぽく」「血色もよくなり」「心が喜んだ」のだという。時には気功師夫妻を追いかけ静岡県掛川市まで出向き、時にはツアー先にまで気功師夫妻を迎えるほどののめり込みよう。

 だが施術の値段は全身1万3,000円とべラボーに高いわけではない。しかも通うのは週1回ほど。ここまでだったらさほど問題があるとは思えない。だが夫妻に出会って1年ほどで、持田の行動は少々常軌を逸していく。「家族と暮らすのが夢」と2004年に建てた都内一戸建ての実家に両親を残し、持田は単身気功師夫妻の出張所のある都内マンションへ引っ越してしまったという。さらに、仕事にも気功師夫妻を介入させる。作詞にアドバイスを請い、最新アルバムには夫妻の名前を掲載。またライブでは気功師夫妻がいかに素晴らしいかを宣伝する。気功師夫妻から購入した金粉入り塩を体にすりつける。そして――都内の気功師夫妻出張所の至近距離に3億円の5階建てビルを建築中なのだとか。しかも両親の暮らす実家を担保にしてまで、だ。住居でなくビル? 気功師夫妻の出張所をテナントにする気なのか? そんな疑念まで沸く。

 ここまでいけば立派に“ハマっている”。しかしどうして芸能人ってやつは、こうした胡散臭いものに容易にハマってしまうのだろう。さらに持田は芸能人というよりアーティストであり、より精神世界に傾倒しがちな人種でもある。最近でも別の女性アーティストの精神世界への依拠、奇行もいくつか話題に上った。作詞や作曲の世界では、時に“神が降りてくる”らしい。作品を創作し続け、ヒットを出し続けるのは、想像を絶するほど大変なことなのだろう(実感はできないけど)。売れっ子になれば、複雑な人間関係、利権を狙う有象無象の存在、都合のいいようにコントロールしようとする関係者など、精神的ストレスもあるはずだ。そうした心の隙間に、スピリチュアルはいとも簡単に入り込む(スピリチュアルでなく“男”というケースもあるが)。

 過去にも数多くあった洗脳騒動。その報道がきっかけで周囲が事態の重大さを認識し、早期に対処できたケースもあったが、逆に本人を孤立させ、意固地にさせ、「やはり信用できるのは気功師夫妻だけ」という事態にもなりかねない。前者は飯星景子、後者は中島や、古くは貴花田洗脳がその例だろう。今後の洗脳報道のありようも再考する必要があるそうだ(中島引きこもりでマスコミが大挙し、24時間マンションを取り囲んだのは多くの意味で問題大だ)。

 ともあれ、今回持ち上がった持田洗脳問題、家族と専門家の早期サポートで、大事になる前に収束することを願うばかりである。

 2位もまたデジャブ感満載の記事だった。今、社会問題となっている学校でのいじめ問題。昨年起こった滋賀の公立中学を舞台にしたいじめ自殺がきっかけであったが、今度は都内の超有名私立中学が舞台である。そして「セブン」の堂々のスクープでもある。

 政治家や芸能人など著名人子息が多く通う超有名私立中学で、そのいじめ事件は起こった。5月下旬女子3人、男子1人のいじめグループがA子さんという女子生徒をトイレの個室に追い込んだ。それを男子生徒がさらに追い、被害者A子さんのいる個室に侵入、チンピラ顔負けの言動をした上、撮影までしたというものだ。通常、ここまでの行為に及ぶには、以前から大小さまざまないじめが存在することは容易に想像できるし、今回だけでも卑劣ないじめである。

 だが「セブン」がこれをトップ特集として大きく取り上げ、スクープと銘打ったのは、別の意味がある。このいじめグループのリーダーが「誰もが知る超有名人の娘」だったからだ。この有名人娘は男子を配下に置き、気に入らない生徒を男子に命じていじめるなど“影の番長”として恐れられる存在なのだという。なんだか昭和50~60年代の“荒れた学園ドラマ”のようだが、これで俄然「いじめ事件」は「芸能事件」へと変貌するのだ。

 さらに事件はそれだけではなかった。被害者の親が激怒して抗議すると、学校側は事情聴取を行ったが、退学になったのは男子生徒のみ。首謀者の超有名人娘とほか2人の女生徒は、3日の停学、おまけになぜだか被害者A子さんも停学処分となったという。そして、学校はこの一件に緘口令を敷いた。その背景には、もちろん公立同様、学校の事なかれ主義、隠蔽体質のほか「超有名人娘への配慮」も指摘されているらしい。

 「セブン」記事では、この「超有名人いじめ娘」事件を端緒に、公立と私立の差を挙げている。例えば、公立にはいじめの報告義務があるが、私立にはなく、したがって悪質ないじめでも表面化せずもみ消されてしまうこと、名門ゆえイメージを重視するといった経営的隠蔽体質も存在することなど、さまざまな問題点を指摘。また、現在のいじめの悪質化・陰湿化、いじめにおけるメールなどのツールの存在、今時の子どもたちの「孤立を恐れる」体質、子どもたちの中にも存在する勝ち組・負け組みという序列や格差などにも言及し、検証していく。実に5頁を割いての大特集である。

 確かに力の入った意義のある記事だ。だが、次の展開を思うと手放しで絶賛する気にならない。今回の記事の手法は、あの次長課長・河本準一の「生活保護問題」記事を彷彿させる。というか、切り口や展開の仕方がそっくりだ。今年4月に勃発した河本生活保護も「セブン」のスクープが発端だった。その際「セブン」は、当初河本の実名は出さず“有名芸人”と匿名扱いした上で、生活保護の支給方法、チェック機能などの問題を指摘した。今回の記事同様に。そしてほどなく“有名芸人”が河本だと断定され、大騒ぎになったのは周知の通りだ。今回もまた、誰も批判できな“いじめ”という切り口で、超有名人娘を俎上に上げた。既にネットでは、超有名人が誰なのか実名を挙げ断定している。

 生活保護やいじめ問題の検証という、一見誰も批判できない錦の御旗を掲げた立派な記事に仕立ててはいるが、実はその裏、記事が何を言いたいかというと、「超有名人娘がいじめをしていた!」ということなのだ。もちろん読者の興味も「超有名人は誰?」となるのは当然である。

 立派な検証記事部分は、あくまで“アリバイ工作”。主眼は「有名人」である。もちろん以前の生活保護問題は、河本本人の問題であり、河本の経済的事情を記す必要があった。よって“有名芸人”を特定するのは仕方がなかったとしても、今回のいじめ事件は、果たしていじめの首謀者が「超有名人娘」と特定する必要があったのか。ただ有名私立中学での陰湿ないじめ問題では、駄目だったのか(それでは「セブン」としての記事のスクープ性、そして売れ行きが違うのは明白だけど)。

 生活保護スクープ後に巻き起こった河本騒動を思うと、今度は超有名人はもとより、その娘にまで波及する問題だ。近いうちに「超有名人」が特定され、衆目の元に逸らされるのは間違いない。そして今度は、超有名人とその娘が、メディアと世間からの“いじめ”に晒されるのだ。いじめは深刻な問題だ。しかし「超有名人娘」の存在ゆえ、問題が矮小化されないかと、大きな危惧を抱いてしまった記事だった。

 バンコクにいたので、五輪後半の報道漬けからは免れたが、柔道は前半だったし、コメンテーター(解説?)としてテレビ出演した谷亮子の発言やインタビューには目を通していた。そしてその発言に、何度もひっくり返った。なんだか他人事。柔道界に君臨した元女王という自覚はない。政治家でもない。発言が浅い。しかも「現役時代、ライバルは誰?」と聞かれ、「いませんでしたね」とさらり。たまげた。惨敗に終わった福見友子に対しても、あまりに冷淡なコメントで「私じゃなきゃ駄目なのよ」という態度がありありだった。後輩に対する配慮なんて皆無。そして、その態度が実際に口から出てしまったのがこの発言だった。「みなさんが望むなら(次回リオの)準備をしたい」だって。さすがヤワラちゃん。小さい頃からチヤホヤされていると、こんな恥ずかしい、人の気持ちが判らない人間になってしまうという典型だ。しかも「みなさんが望むなら」って何??? 何サマ?? 「ほーらね。福見じゃあメダルは無理。今回私が出られたらよかった。だからみんな、次は私を強く望んでね。メダルが欲しいなら、国民全員で持ち上げてくれないと」ということか。誰も望んでいないので(少なくとも私は)、無理して出なくて結構です。

最終更新:2012/08/14 21:00
『谷亮子物語―夢かけるトップアスリート』
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