[女性誌速攻レビュー]「Ray」2012年8月号

飯食って、男漁って、かつ内定ももぎ取る! 「Ray」流就活術に平伏す

2012/06/27 16:00
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「Ray」2012年8月号(主婦の友社)

 夏の足音がどこからか聞こえるこの季節。大好きなカレや女友達と遊びたい盛りの「Ray」読者に向けて、誌面はいつにも増して調子に乗っています。「Happy Summerなおしゃれ夢ノート」という特集では、やれ海だ旅行だ夏祭りだ花火大会だと大騒ぎ。「夏だもん! 素敵なことがきっとある!」とでも言わんばかりです。そんな、Summer教の熱心な信者である「Ray」読者たちを横目に、本誌発売日の2週間前に出た「日経ウーマン」7月号の第1特集は、「人生が輝く! スッキリ片づけ術」……。めいっぱい遊ぶことで人生を輝かせる女と、必死に片づけることで人生を輝かせる女。女の人生って、本当にさまざまですね。

 <トピック>
◎Happy Summerなおしゃれ夢ノート
◎就活★勝ち組の法則
◎ゲッターズ飯田式 勝 合コンの極意

■ケーキ一個でヤらせる宣言!

 Rayモデルや芸能人、読者モデルが、夏にどんなことをしたいのか、オススメのファッションとともに紹介する第1特集「Happy Summerなおしゃれ夢ノート」。さまざまな意見の中で気になったのは、「ピエール・エルメ・パリのアニバーサリーケーキを食べたい!」という青山学院大学の女の子。「ここのマカロン大好きなの。高くて手を出しにくいからこそ、これをプレゼントされたら……、どんな人でも恋に落ちちゃうかも(はぁと)」と、高らかに「ケーキ一個でヤらせる女」宣言をしています。そのほかにも、簡単な女発言は続々と登場。「彼と時間を気にせずおしゃべり(はぁと)」「浴衣姿を褒められたい(はぁと)」「5段アイスを食べたい(はぁと)」と、どんな男でも簡単に叶えてあげられるような夢ばかり。「婚約指輪のダイヤが小せぇ」で大バッシングを受けている元CanCamモデルに聞かせたいものですね。

 しかし、この「俺にもチャンスがあるのでは?」と思わせることこそ、「Ray」のモテテクと言ってもいいのではないでしょうか。「ケーキ」「アイス」など「女の子らしさ」というオブラートに包んだ、ハードルの低いおねだりをする。そこに引っかかった多くの男から、ちやほやされること(=モテ)を楽しむ……。一見爽やかに見える「Ray」誌面から、女と男の騙し合いっこを垣間見てしまったような気がします。まぁ、「Ray」読者だけでなく、女という生き物は、本命のカレには、何を買ってくれるか云々は、まったく求めないとは思います。全国の「女の子らしさ」に騙された男子には、ご苦労様ですとしか言いようがありません……。

■Ray流就活では合コンも武器に

 前回のレビューで、「『Ray』では、このご時世にもかかわらず、働く女を取り上げない」と言ったばかりなのに、今号で、まさかの「就活★勝ち組の法則」という読み物ページが! 「大好きなカレといつまでも(はぁと)」という、一歩間違えると加山雄三的ロマンチシズムに足を踏み入れてしまう「Ray」の就活事情とは。早速読み進めてみましょう。

 「勝ち組★就活リアル体験談」では、4人の勝ち組就活生が登場。それぞれが、大手外資系金融、大手商社、大手損保、大手銀行などなど、この就職難にもかかわらず、複数の内定を得ているようです。航空系、旅行会社、大手PR会社と、3社から内定をもらった熊田麻子さん(仮名)は、大学1年生の頃から、“ネタ作り”に奔走していたのだとか。英語力を鍛えるためにオーストラリアへ留学し、その後すぐバイト代を貯めて中国へ。しかし、それだけではほかの子と差がつかないという不安から、テレビ局でADのアルバイトもしていたそうです。芸人もびっくりの“ネタ作り”に懸ける思いが、ひしひしと伝わってきます。就職するためだけに大学に通ってるわけじゃないんだから、4年間くらい遊べばいいのに……なんて口に出そうものなら、「上の世代の人は、どんだけ就職難か、全然わかってない!」とお叱りを受けてしまうかもしれません。

 一方で、「合コン」を武器に内定をもぎ取った「Ray」スピリットを貫く就活生も。なんでも、「女子大なので社会人合コンする機会も多く、3年になると“合コンがOB訪問”化。(略)人事の方との食事会の場で『うちに来てほしい』といわれました。」とのこと。オーストラリアにも、中国にも行かず、ADのバイトもせず、ただ飲み食いをさせてもらい、男を物色し、かつ内定もいただく。恐るべき強欲さに、ただただ平伏したくなります。しかも、この内定をもらった企業が「IT系ベンチャー企業」だというのがまた……。「ライフハック」「戦略的」「ノマド」などが口癖で、MacBook Airを持ち歩く細身スーツのギラついた男が、女子大生相手に仰々しく仕事論を語る様子がありありと目に浮かびます。鬱陶しいにもほどがありますが、そこは、内定のためにから揚げでも頬張りながら、ぐっと堪えたのでしょう。女子大生を取り巻く現代の就活事情が、複雑化の一途をたどっていることを実感しました。

 就活企画に続く読み物ページは、「ゲッターズ飯田式 勝 合コンの極意」です。今回は仮面合コン(仮面をつけたまま歓談し、男女の気が合った場合のみ仮面を外すルールがある合コン)の潜入レポート。その中で、合コンに参加した「Ray」読者4名が自己紹介をしているんですが、それぞれ「似ているのは某女子アナです」「小林星蘭ちゃんに似てるって言われます」「(似ているのは)桐谷美玲とかガッキーです」「眞鍋かをりに似てます」と、強気発言を連発! 自分では1mmも思っていないくせに、勘違い女だと思われたくないためだけに、「スッピンが岸部シロー似なんですよ~」などとたいしてウケもしない自虐に走るのではなく、真っ向から「私は美人だ」と自称する。そのメンタリティさえあれば、就活もきっとうまく行くんじゃないかな。
(豊島ユイ)

最終更新:2012/06/29 16:05
『Ray 2012年 08月号』
来月号の読み物ページは、「無防備の装い方」だって
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