[女性誌速攻レビュー]「MORE」4月号

ヨーカドーの服が好き、美容院は禁止!?  寂寥感漂う「MORE」娘の貯蓄生活

2012/03/02 16:30
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「MORE」4月号(集英社)

 韓国人男性を彼に持つ女の子が、朝から韓国海苔を頬張ったり、夜はマッコリバーに繰り出したりするというストーリー……先月の「MORE」の着回しコーデが”不自然なまでの韓国推し”としてネットの話題に上がっていました。あらためて読み返したのですが、これくらいの「ありえへん」は毎度のことのため筆者は完全にスルーしておりました。

 トンデモな設定を打ち出し、力技で○○daysを駆け抜ける。モンスター級の「そんなヤツおらへんやろ~」が割拠する。女性誌内のシチュエーションコント、それが着回し企画です。不自然過ぎ! というツッコミ自体がこの企画には虚しく響きます。そもそも着回しコーデに”自然”など存在しませんから! 個人的には愛されOLみっこ(矢野未希子)の「OLからスイーツコラムニストへ華麗なる転身!」の方がひっくり返りました。韓国大好きOLの設定にびっくらこいた方々は、是非これを機会にさまざまな女性誌の着回しコーデをチェックしてみてくださいまし。ちなみに今月のみっこは「スイート江戸っ娘みっこ」として着回し企画を賑わしておりますよ。どんな江戸っ子!!

<トピックス>
◎かわいい!使える!「ほめられ春服」誌上展示会
◎スペシャル本音トーク 赤西仁 Here I am
◎貯蓄エキスパートの「貯まる生活」30Days

■ロングカーデ解禁の意味するものとは

 先ほどの「スイート江戸っ娘みっこ」、設定は「銀座老舗和菓子屋の末っ娘で、実家の手伝いをしつつ、習い事にも忙しい日々」を送るという、このご時世になんともユルい生活を謳歌する女性でした。クール国際派の夏南(大屋夏南)と「仲良し銀座ガールズの毎日UNIQLO着回し18DAYS」を展開させておりますので、みっこ好きUNIQLO好きはぜひチェックを。

 さてさて、競合誌とまさかの企画被りをしていた”ほめられ春服”特集を飛び越えまして、「5年目OL夏希VS.2年目OL麻里子『100%好印象』お仕事着回し15DAYS」を見てみましょう。「リアルOLが選んだ”正解ワードローブ”で!」が好評なのか、定期的にリピートされる人気企画。平たく申しますと、この春参入してくる新人さんたちに「これがアタイらOLの鉄の掟だよ!」と、先輩OLがメンチ切るという趣旨です。

 まずはお約束のOL座談会から、「2年目OL」「5年目OL」さんの本音をキャッチしてみましょう。2年目OLさんの悩みはズバリ「地味とオシャレの板挟み」。「うちは規定が厳しいほうだし、女性の先輩が多くてとにかく”目をつけられないように”って考えていた」「2年目になったら無難=ただの地味。”おしゃれに気を使ってる”っていう女子力をさりげなくアピールするのも大切だよね」「トレンドすぎは注意。チェックのスカートはいた子が『女子校生?』って言われてた」など、厳しい現実が垣間見えます。「レースやフリルはもう着ないな。新人の時そういうの着てる先輩のことを『イタイな~』って思ってたから。自分もそう見られるのが怖くて」「私はワンピを解禁した」「一枚で目立つ分、私たちに柄ワンピは”まだ”だよね」守りに入れば地味と罵られ、攻めれば出る杭として打たれてしまう。これが2年目のジンクスというやつです。

 一方5年目OLのご褒美と言えば「ロングカーデ解禁」です。新人さん、とにかくロングカーデにはご注意を。「後輩は着られないアイテムだけに『素敵ですね』って言ってもらえることが多い気がする」らしいです。2年目が”まだ”と感じた柄ワンピもOKになるのが5年目OL。「一枚でインパクトのある服をいくつか買い足したよ。プリントワンピとかキレイ色のスカートとか。(中略)見た目でも『存在感を示したい』って気持ちが芽生えてきたんだと思う」こうやってオンナは何のてらいもなくアニマルプリント(柄ではなく一匹もの)を着こなすようになるんですよ。

 OL服の世界には、ある意味制服と同じくらいの強制力ある不文律が存在します。もういっそのこと社則に「5年目までロングカーデ禁止」とか書いちゃえばいいじゃんと、この企画を見るたびに思うのですが、女性ファッション誌が存在する理由って、もしかしたらこういうところにあるのかもしれません。

■女性誌って「憧れ」の世界を見せるんだよね?

 続きまして「密着したら、やっぱり違った!貯蓄エキスパートの『貯まる生活』30Days」を。個人的に目を覆いたくなる企画です。「月収平均20.6万円、なのに平均貯蓄673万円!そんな読者に徹底密着1ヶ月。すると、やっぱり”貯まる”お金の使い方、してるんです!」とあります。「I LOVEmama」(インフォレスト)や「すてきな奥さん」(主婦と生活社)の節約モノを「陽」とするなら、「MORE」の貯蓄ページは「陰」。真夜中にひとり、薄暗い部屋で貯金通帳を肴に大五郎を飲むイメージで読み進めましょう。

 30歳・ひとり暮らし・彼ナシさんは「旬の野菜を使った自炊生活、洋服のはぎれを利用してヘアアクセを作るなど、ていねいな生活を楽しんでいる」女性。日曜日にスーパーや青果店をめぐり底値を調査、メニューは決めずに安いものをまとめ買い。1週間分を調理&冷凍し光熱費をカットするそう。とある日のメニューとして「ししゃも」が紹介されていました。空いた時間にはぎれでシュシュを作ったり、シンクの掃除用にはき古したストッキングを切り分けたりするのが一番の幸せだと語っています。それだけではありません。ラブママの”神”である100均ですら「もったいない」と、引き出しの収納ケースはメモ用紙を編んで手づくりするのだそう。その甲斐あってか、都内に3DK3,000万円(!)のマンションを購入済み。メモ編み御殿ですね。

 28歳・ひとり暮らし・彼ありさんの節約も感涙もの。残業デーはスーパーの割引惣菜、デートは立ち飲みでひとり1,000円。半分だけonにしたホットカーペット(弱)で二人の距離を縮めているとかいないとか。26歳・実家・彼ナシさんは、お若くして「イトーヨーカドーの婦人服が大好き!」とか「週末は化粧品会社のサイトをチェックして、各種無料お試しセットに応募」とか「美容院には9カ月行ってません」とか。い、息ができない!

 とある貯蓄達人の「水筒でなく、ペットボトルに浄水器の水を入れてます。お水はケチらず買ってるよ、と(笑)」という一言が、とどめのように胸を刺した貯蓄特集。同僚との飲み会も、友達とのコンパも断り、ただひたすら貯める日々。どこか後ろ暗さを感じながらも、貯まる悦びが私を離さない。次々と出来上がるはぎれシュシュ。止まらないメモ編みテク……誰か、貯蓄娘をマインドコントロールから解いてあげて!

 「MORE」の読みものページ御三家と言えば「結婚・SEX・貯蓄」。この三つはお互いが補完し合っているように見えて、そのベクトルは全く違う方向を向いています。だから今日のMORE娘たちはこんなにも困惑しているのだと再認識した次第です。OL服鉄の掟、貯蓄狂のオンナたち……「昔から洋楽好きで~」という赤西仁の呑気なインタビューページに思いがけず救われた、MORE4月号でした。
(西澤千央)

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最終更新:2018/08/14 19:11
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