[女性誌速攻レビュー]「家庭画報」4月号

本物のマダム・岸惠子、「家庭画報」における新連載がギャグのような内容

2012/03/07 16:00
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「家庭画報」2012年4月号(世界文化
社)

 「家庭画報」4月号は、創刊650号記念号。特別2大付録が付いています。ひとつは、誌面の企画と連動した「魅惑のフェルメール 名画ポストカード」12枚セット。美術展のおみやげみたいな、アレです。もうひとつは、銀座にあるビューティブランドを紹介する綴じ込み付録「銀座ビューティ」。抽選で97名様にサロンで”とっておきのおもてなし”が体験できるというプレゼントも付いています。

 この冊子の中で、スキンケアカウンセラーの鶴岡悦子さんはこう語ります。「(銀座は)先人たちの間で行き交った美のエネルギーがいつしか土地に宿り、世界でも希な、上質でエネルギッシュな風土がつくり上げられたのでしょう」。また、美容アドバイザーの佐伯チズさんは「銀座にふさわしいきちんとしたドレスコードや礼儀、立居振舞いなど、この街には”見えない敷居”があります。(中略)この街には伝統文化を継承する古きよきものと世界の最先端を行く新しいものの両方が存在しますが、共通しているのは一流だということ」と銀座という街を分析。

 現在はファストファッションとアジア系観光客のショッピングスポットとして知られる銀座ではありますが、ある世代、ある種の人々の銀座=一流信仰って根強いですよね。おふたりの言葉、このまんまいくつか単語を換えれば、別の意味で渋谷や原宿、六本木、秋葉原などについても語れるんじゃないかしら。思わず佐伯チズ先生の真っ白いお顔が、「渋谷という街が私をつくった……」とマジ顔して語るマンバギャル(死語?)に見えちゃいましたよ。肌の色は違うけど、”聖地”を熱く信仰している点では同じ。ラブ&ピース、みんなで分かり合おうよ!
 
<トピック>
◎創刊650号特別企画 咲き誇れ桜
◎岸惠子「日本再発見の旅」
◎創刊650号特別企画 女優・賀来千香子さんがまとう「家庭画報コレクション」

■季節は巡ります

 特集は、「創刊650号特別企画 咲き誇れ桜」。企画のひとつとして、「私の京都桜」と題し、京都好きを自認する方がそれぞれ思い出深い桜を紹介しています。豪華絢爛に咲き乱れる桜をバックに登場する方々は、皆さま家元や若主人、絵師、女将、京都府知事夫人、女将、大学教授といった肩書きをお持ち。こうした人は、ガイドブックに載っているようなミーハーな花見名所ではなく、知る人ぞ知る京都の桜に思い入れを持ち、西行だのなんだのを引用して知的に語れるものなんですね。もー内容に関してはただただ「素晴らしいわー」「美しいわー」と感嘆する以外にありません、脱帽っす(溜息)。

 それにしても、この晴れやかなグラビア、開花時期を考えると、1年近く前に撮影したものであることが想像されます。編集部の皆さんたら、そんなに前からこの創刊650号記念号に向けて取り組んでいたとは……。思えば昨年の花見の季節は、筆者はほとんど記憶がありません。これらの桜は、あのとき見られなかった桜なんだと思うと感慨深いものがあります。何が起きてもこの650号成功に向けて折れなかった、編集部の仕事にかける熱意と気迫を感じました。
 
■岸惠子の自由すぎる紀行文

 新連載が始まりました。岸恵子「日本再発見の旅」です。24歳で渡仏した岸が、「自分の国をもっと知りたい」という思いから日本各地を巡るというもの。第1回の旅先は、以前から行ってみたかったという屋久島です。これがあまりに自由すぎて、読んでいて笑わずにいられませんでした。

 紀行文で岸は、屋久島に惹かれた理由は「さだかではないのです」と言い放ち、「たぶん、何千年もの間生き続ける縄文杉や、屋久杉の姿を写真で見て魅了されていたのかも」と曖昧に説明します。島に着いてあまり豪華ではない小さなホテルの部屋に入ると、ガラス窓の向こうに広がる東シナ海に感動して、「私の想いは、インド洋に浮かぶセイシェルズ群島の首都、マエ島に飛びます」と、マエ島の思い出話を20行あまり。岸サン、本当に飛んで行かないで~!

 屋久島ガイドの話をノートにメモするも、「手が攣れるほど素早い手書きのメモは今見ると何が何だか分かりません」とまさかの失態。一応、想像力で補って文章を続けるのですが、結局途中で「このあたりから、わが筆跡読解不能」と放棄! そして締めの文章は、「こんどもし来ることがあったら、往復十時間という、高山の縄文杉に挑戦したいな、と夢みます」だって。魅了されていた縄文杉、見に行かなかったんかーい! さすが、フランスマダムの鷹揚さですね(フランスマダムってこの人と中山美穂しか知りませんが)。1回目からこんな調子とは、先行きが楽しみでなりません。

■ミーハーな一面ものぞかせて……

 今月は、ファッションページも充実しています。まず、「創刊650号特別企画 女優・賀来千香子さんがまとう『家庭画報コレクション』」。10ページにわたり、賀来千香子がアルベルタ フェレッティやグッチなどを着て登場しています。別のページでは、「木村佳乃さんがまとう 大地が作る春色 『紅花紬』」と題して、6ページ中3ページで和装で登場。別のページでは、南果歩が「南果歩さんがまとう”春のきれい色”」と題し、17ページ中10ページに登場と、これでもかと女優を投入。ページの量は年功序列かな。

 それぞれ「家庭画報」の常連女優で、木村佳乃は昨年11月出産、南果歩はハリウッド俳優夫人と、いかにも「家庭画報」ウケしそうなマダム。一方、賀来千香子は2月に宅麻伸と離婚したばかり。もちろん誌上でその件に関する言及はもちろん、それ以外のコメントも一切ありません。モデルに徹しています。だけど、コメントがないだけに、余計に「最近離婚した賀来千香子」というイメージが拭いきれない……。いっそあっけらかんと「心機一転、スタートを切ります」みたいな軽い一文が入っても、誌面の雰囲気は損ねないと思うのですが、格式高い「家庭画報」でそんな無粋は許さないのでしょうか。

 でも、なんだかんだ言って芸能大好きですよね。中ほどのページでは、「今、注目のあのひとが着る 2012春夏パリコレウション」と銘打って、由紀さおり、郷ひろみ、冨永愛、奥田瑛二&安藤和津一家、森泉らを篠山紀信が撮影しています。森泉なんて、「最近、世の中はファストファッションが中心になっていていいものに憧れる気持ちが足りない気がして、ちょっと寂しいです」なんてお祖母さん(森英恵)の商売を気遣っていました。森泉といえばバラエティでは完全に”セレブ(笑)”的な位置づけ。いったいなぜこの人選!? 伝統ある有名私立小学校と言いつつ蓋を開けてみたら成金芸能人の子どもばっかりだった、みたいな一抹のちぐはぐ感が漂う記念号でした。
(亀井百合子)

「家庭画報」

岸さんって世間的認知よりもアレレな人だと思ってました……

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最終更新:2012/03/07 16:00
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