ドルショック竹下の「暴走リビドー綺譚」

究極のエロスは”窃視”……セフレのエロ動画で欲情する女の妄想と現実

2011/09/19 17:00
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(C)ドルショック竹下

 夜。震災の影響による節電ムードもだいぶ薄れ、街灯が煌々と灯る住宅街を女が歩いている。黒髪のボブにやわやわとした肌、あどけない顔立ち、ルーズなデザインのワンピース。少女のような容姿をしたその女は、うつむきがちに歩き耳を澄ませる。テレビ番組に興じる家族の笑い声、手桶で風呂の湯を掻く音、穏やかな日常が紡ぎ出す生活音……それらの音のどれもが、女の関心を惹くことはなかった。そう、女はどこぞの家からセックス中のアエギ声が聞こえてきやしないかと期待しているのだった。

 女の名前はミヨコ。33歳独身で映像編集の会社に勤めている。ミヨコが「他人のセックスをのぞく」ことで興奮するという性癖に明確に気がついたのは高校生の時分だった。同級生の家で男子3人、女子3人の飲み会が開かれた際、飲みなれない酒を背伸びしてあおるうちに一組の男女がいちゃつき始めたのである。身体も心も「早く大人になりたい!」と悲鳴のような叫びをあげるお年頃。その男女は他の同級生たちを残し、どこかへと消えていった。いたずら半分にふたりを探しに行ったミヨコは、ほどなく和室の押入れから漏れ出る声を聞くことになる。

「ハァ、ハァ……あんっ」

 幼少の頃、親に「ダメ!」とさえぎられながらも、こそこそと見たドラマのエロシーン。普段、机を並べて学んでいる同級生たちによって、それが目の前で再現されている――。押入れの中は暗くて、その姿をはっきりと確認することはできない。聞こえてくるのは荒い息遣いと押し殺した声だけ。それがいっそうミヨコの想像を掻きたて、全身の毛穴が熱によって押し広げられるような感覚をもたらした。

 また、こんなこともあった。高校を卒業して数年後、こじゃれたダイニングバーでアルバイトをしていたときのこと。店でコンパを開いていた大学生のうち、一組の男女がトイレに鍵をかけ篭ってしまった。しかも、中からはアエギ声が……。様子を見てくるよう店長に言われ、緊張しながらトイレの個室に声をかけると男の声で「大丈夫でーす」。ほどなくして男女は何事もなかったかのように席へと戻っていった。あのアエギ声はなんだったのだろう。もしかしたらミヨコの深層にくすぶっていたのぞき願望が、幻聴を聞かせたのかもしれない。

 もちろん、ミヨコは処女ではない。愛くるしい容姿と天性の酔っ払いが幸い(災い?)して人並み以上の男性経験を持っているが、自分自身の性交に関してはあまり偏執がない。それよりも「涼しい顔をして一緒に仕事をしているこの人とあの人は実は付き合っていて、夜はねっとりといやらしいセックスをするに違いない」などといった穿った見方、リアルにいる知人のエロ妄想をすることでオナニーする方が圧倒的に欲情できる。

 そんな彼女の最高のオカズは、以前セフレだった男がくれた動画。男には某高級外資系ファッションブランドに勤務する別のセックスフレンドがいた。六本木ヒルズにある支店の接客担当だけあって、スタイル抜群でバッチリメイクのいかにもプライドが高そうな美人。男はミヨコの「他人のセックスをのぞきたい」という願望を知り、その美人と開店前の店舗でセックスしている様子を携帯で撮影し、親切にも送ってきてくれたのだ。六本木ヒルズに構えられたシックかつラグジュアリーな店内。美しく配置されたショーケースに両手をついて、バックからヤラれている高級ブランド店員。黒ジャケットの裾から覗く小尻を突かれるたびに、きっちりまとめられたポニーテールが揺れる。そのたたずまいを見て、ミヨコは「高貴だわ……」と呟く。AVでしか見られないようなことが、実在の高級ブランド店舗において実在の高級ブランド勤務女性により行われている。普段は覆い隠されているものを盗み見る、窃視する。これがミヨコにとっての究極のエロスなのだ。

 その夜もミヨコは住宅街を歩いていた。「あの~……」突然、男に声をかけられる。30代、180cmはあろうかという長身のサラリーマンだ。おびえもせずミヨコは問いかける。

「どうしたの? 何がしたいの?」
「踏んでほしい。踏んでほしいから、一緒にホテル行こう」

男が懇願すると、ミヨコは一言。

「そんな面白くないところ、行かない」

 近所の小さな公園に連れて行き、望み通り変態男を踏みつける。わざわざ「非日常」に出かけてはつまらない。日常に侵食してこそ、彼女のエロティシズムは成立するのだ。

『痴態覗き悦楽記』

高級ブランド店員もなにやってんすか

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最終更新:2011/09/19 17:28
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