特別インタビュー

高城剛氏の提言「経団連という”財閥”を解体すべき」

2011/07/22 11:45
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Photo by 笹村泰夫

 あの高城剛氏が、3.11の東日本大震災直前に日本を離れて以降、6月末に久しぶりに日本に帰国。直撃インタビューを敢行した。もちろん、気になるのは、妻の沢尻エリカが離婚届を提出できる期限とされた「5.16」以降、どうなっているのかだが、これについては、「弁護士を含め、誰からも連絡がきていない。別に何も変わらないから、話すことがないよ(笑)」と一言で終了。インタビューは、世界中を旅しつつ、常に未来を見据えてきた、高城氏のグローバルでハイパーな視点から見た、3.11以降の日本について割かれた――。

――今回の3.11東日本大震災をどう受け止めていますか?

高城氏(以下、高城)すでにいくつかのインタビューでも答えていますが、震災や原発事故の問題というよりは、その後の対応でハッキリと露呈した日本式システムが問題だと思います。今忘れてはならないのは、震災の被害者の数より、1年間の自殺者のほうが多いことです。その原因は日本式システムの行き詰まりであり、多くの人がそのシステムが今回の問題の核であることを問わないし、事実、機能していないように思えますね。

――3.11当日は、高城さんはどこにいたのですか。

高城 震災が起こる少し前から、ある週刊誌の取材で沖縄の西表島にいました。偶然にもその取材の内容というのが、僕らが以前から手がけてきた風力発電システムと循環型の水システムについてだったのですが、今思うとそれも何か因縁めいてるような気さえします。

――あれから4カ月が経過しましたが、その間はどんな活動をされていたのですか。

高城 友人やその家族を沖縄やバルセロナで受け入れたりしながら、僕はロンドンへ入り、そこで原発の専門家と討議しながら、ロシア政府の情報を得ていました。この人物はチェルノブイリ事故後の土壌改良プロジェクトに携わっていた人で、かつてロンドン滞在中の僕にオーガニックを教えてくれたひとりです。

――そこでは具体的にどんな情報を?

高城 レベル4と日本の政府は言ってるがとんでもないと。「すぐに廃炉にしなければならない絶望的な状態だ」と、ロシアは初期段階から話していました。ヘリで水をかけていましたが、まったく無意味で、すぐに周囲を閉鎖してコンクリの壁や膜を作り、放射線が漏れないように鉛を流し込んで固めてしまわないとダメだと。でないと、外に漏れ出して手遅れになると断言していました。

――ロシア側がその作業を手伝う意思があったとの話も漏れ聞こえていますが。

高城 彼もそう言ってましたね。その技術に関しては高い経験値を持っている国だから。ところが、日本がロクに検討もしないで断ってきたので、ロシア高官がめちゃめちゃ怒ってるんだと。僕も首相官邸に友人がいるので直接アプローチしてみましたが、官邸もパニックで埒が明かないという状況でした。

――政府が機能していなかった。

高城 それもあると思いますし、裏では外交問題という面もあったのじゃないかと思います。だから、僕は海外の友人たちと連絡を取りあいながら、最終的に、日本側から「原子炉を処理する請負業者を探している」という一筆さえくれれば、ロシアは外交問題にならないように、民間企業として処理部隊を現地に出動させるところまで実は話ができていました。

――処理部隊を福島へ派遣するとなると、ロシアの隊員にも多大なリスクが発生するわけですが。

高城 もちろんそう。隊員が被曝して死人が出る可能性はあるが、それを覚悟のうえで出動させると。このあたりのことは、僕の新刊『時代を生きる力』(マガジンハウス刊)に、詳細を書いています。

――聞いてるだけで絶望的になりますが、諸悪の根源はどこにあるのでしょうか。

高城 僕は責任の所在が曖昧で意思決定が遅い日本式システムにすべての原因があると考えています。個々の政治家や役人がどうだとかいう話ではなく、問題はシステムそのものにある。典型的なのが官僚組織をはじめとする公務員システムですよね。何もしなくても年功序列で出世して給料が上がっていく。失敗しても誰も責任をとらない。国際的にはまったく通用しない古くなったシステムを、日本はいつまでも堅持している。古くて大型なので、お金=税金も必要。これが今日直面している問題だと僕は思っています。エネルギーの話だけではありません。

――そのシステムの弊害が、震災対応にも顕著に出ていたと。

高城 東電をみれば明らかですが、今は民主主義より資本主義のほうが力を持っていると思いますよ。ハッキリいえば、経団連を中心とした大企業群の問題だと思います。バブル崩壊以降、企業は新しいイノベーションに挑戦せずに、保守的になり、目先の利益追求のため、労働力が安い地域に多くの生産拠点を移動させ、国内労働者は疲弊しました。そして、国内は独占に近い企業が生き残り、幅を利かせるだけになったのです。さらに、そのようなことを、事実上国家が後押しする形になりました。日本は戦後、問題だった当時の財閥を解体し、また韓国では1997年の金融危機でやはり財閥解体をして新しい仕組みを作りました。今の日本には、経団連を中心にした事実上の財閥がありますが、マスメディアのスポンサーでもあるので、マスメディアでここを問題として取り上げる人はいません。特に大口を叩く人ほど口に出しません。そして何より、天下り以上にマスメディアには”財閥”関連のご子息がコネで就職しています。メディアも政治も二世だらけの同じ構造なのです。これを解体しないと、新しい日本=既得権益ではない本当の力がある日本は絶対に生まれないと思いますね。

――個人の幸せより企業の利益が優先されてるという意味ですか?

高城 それは、比較の問題ではないと思いますが、事実上そのようになっていると感じます。日本の「民主主義」とやらの実態を少し乱暴に言うと、国民より一部の役人が偉くて、一部の役人より政治家が偉くて、政治家より多くの役人が偉くて、多くの役人より大企業が偉いという構造なんだと思います。そして、かつての大企業が雇用を生み出して国民を豊かにするという古いモデルに代わるものを、いまだに誰も提案できていないことも問題だと思います。

――そうした中で、このほどメルマガをスタートされました。そういえば、高城さんのメルマガって、ありそうでなかったですね。

高城 3.11以降、いよいよこの国も大きな変革期を急速に迎えることになったと思います。もう出版するだけでは間に合わないと思ったのと、日本式システム問題の典型的な例のひとつである電子出版の立ち後れなどが、発行の理由です。そしてメルマガだと双方向でコミュニケーションがとれるので、多くの人との個々の問題に即した素早い質疑応答も可能であることがポイントだと思います。

――申し込み数は今の時点(編注:6月下旬。メルマガスタートから約1週間後)でどのくらいですか。

高城 おかげさまで登録者数は2,000人近くになりました。ペースとしてどうなのか分からないですけど。

――1週間で? 早すぎますよ。特に告知らしきこともしていないのに。

高城 質問の量がすごいですね。なるべく丁寧に答えていきたいと思っています。

――政治家も官僚もメディアもあてにならないとなると、我々はどうすれば?

高城 いざというときに国が頼りにならないのは、今回の3.11で明らかになったと思います。そして、何も考えずに、マスメディアに依存しすぎることが危険だということは間違いないと思います。となると、一人ひとりが情報を入手し考え、価値観を根本から変えて、考え方や生き方を変えていくしかないでしょう。

――原発事故に関しても、日本では報じられないニュースが海外では早くから流れています。

高城 つい先日も、アメリカのニュースで「フクシマで小さな再臨界が起こったようだ」と報道されたばかりです。衛星画像で独自取材している海外メディアもあります。また、一国だけでは、エネルギーも経済も決められない時代ですので、より広く俯瞰で世界を見るために、コンビニとバラエティー番組とネットのことだけを考えている自分の殻をこっそり破ることから始めるといいと思います。大々的に殻を破ろうとすると、きっと周囲に足を引っ張られると思いますよ。だから、こっそり。
(構成/浮島さとし)

 インタビューの翌日、すぐに上海に旅立ってしまった高城氏。そんな同氏の新刊『時代を生きる力』(マガジンハウス)は、東日本大震災後の日本のエネルギー問題、マスメディア、政治、ライフスタイルなどを軸に、危機的になりつつある”未来”を語る一冊。また、メルマガ「フューチャーリポート」もコンセプトを同様に、よりリアルタイムにコアな情報を発信している(毎週金曜日発行/月額840円)。

『時代を生きる力』

ロシア政府……

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最終更新:2011/07/22 11:45
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