[女性誌速攻レビュー]「日経ウーマン」7月号

貯蓄をしても安心できない読者に贈る「日経ウーマン」的遺言書のススメ 

2011/06/08 21:00
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 「人生を変える!」「自分を磨く」「貯蓄」「●●術」のローテーションで成り立っているんじゃないかと思えるぐらい、短いスパンで似たような特集名が表紙を飾る「日経ウーマン」。プロ野球観戦の楽しみのひとつに、ピッチャーローテーションから先発を予想するというのがあるのですが、「日経ウーマン」もそういった楽しみ方ができそうです。びっくりするようなタイミングで恋愛やセックス特集をぶつけてくるところも、予想のしがいがあるってもんです。さて、今月のトピックを見ていきましょう。

<トピック>
◎「書く習慣」で人生を変える!
◎こんな時代に 結婚できる人の新条件
◎給料&ボーナスの賢い貯め方・殖やし方

■遺言書のススメ

 大特集は「『書く習慣』で人生を変える!」です。「日経ウーマン」の特集構成は、前半が読者のアンケートやアイデアの紹介、後半は達人からのアドバイス、というのが基本です。もちろん、今回も基本に忠実。前半では、まず最初に、「書き続けていた夢がかなった!」「毎日記録して減量に成功した!」「思いを紙に書き出したら震災による心の乱れが落ち着いた」など、読者の声とともに書くことの素晴らしさを提唱します。そして、業種も目標もさまざまな女性のノートや手帳の使い方アイデアを一挙公開。1冊だけ、という人はごくまれで、基本は複数使い。カラーペンや付せんは当たり前、イラストを描いたり切り抜きを張ったりと工夫もいっぱい。けい線に沿ってびっしり書かれた小さな文字を見て、あまりの細かさとマメさに脱帽です。しかもそれは毎晩寝る前に書いている日記帳です。日記だって手を抜かず、どんなことにもストイック! それが「日経ウーマン」読者です。

 老後に向けて盤石な準備をしておくのも「日経ウーマン」読者にとっては当たり前。その究極の形とも言える特集が「アラサー女子たちのエンディングノート術」。「一生懸命貯めたお金は、私に万が一のことがあったら誰のものになるの?」「私の介護は誰が担うのだろう?」という読者のために、遺言作りのプロが丁寧に教えてくれています。

 まずはノートを二冊用意。一冊は介護が必要になったとき誰に介護してほしいか、脳死になったらどうしてほしいかなどを記入する「医療ノート」、もう一冊は預貯金や形見分け、葬式や埋葬の希望などを記入する「財産ノート」。エンディングノートは遺言書と似ていますが、エンディングノートに法的な拘束力はありません。不動産や多額の貯蓄があれば、このノートをベースに法的効果のある遺言書の作成を考えた方が良いそうです。それほど財産がなく、扶養家族がいない人なら、エンディングノートでも取りあえずは大丈夫だそうなので、遺言書を作るつもりで書くと具体的な内容が見えてくるかもしれません。

 日本人女性の平均寿命は86歳。「日経ウーマン」読者は余生50年にして、自分の介護について、脳死になった場合について、財産分与について、答えを出さないといけないんですね。備えあれば憂いなし、ですが、ここまでしなきゃいけないなんて……。老後の不安で貯蓄に走り1,000万円貯めても安心できない読者が多い中、エンディングノートはどれだけ安心感を与えられるのでしょうか。一人でも多くの読者に安心を……老婆心ながら祈らずにはいられませんでした。

■貯蓄はこのためだったのか!

 「3.11で激変したリアルな結婚観に迫る!」と銘打った結婚特集。読者アンケートに支えられている「日経ウーマン」。ここで言う”リアルな結婚観”は、あくまでも「日経ウーマン」読者に聞いたところによると、ということをお忘れなく。それを踏まえて特筆したいのが、「幸せな結婚をしている人はここが違った!」という特集。

 今までは、相手の収入や年齢を気にする「リスク回避婚」だったのが、震災以降は、困難があっても一緒にいる覚悟を持つ「リスク乗り越え婚」が急上昇しているそうです。ここで紹介されている読者4人の結婚までの歴史をひも解くと、「夫の収入が一時的になくなった」「夫が低収入」「夫の仕事が不安定」という金にまつわる何かしらの困難に遭遇しています。それでも、彼を自分の扶養家族にしたり、稼ぎのない彼を食わせるために自分が一家の大黒柱になると腹をくくって困難を乗り切り、結婚に踏み切ったそう。

 彼に金がない=困難なリスクなんですが、「日経ウーマン」読者の30パーセントは300万円以上の貯蓄を持ち、8パーセント弱は1,000万円も持っています。全体の割合から見たら少ないかもしれませんが、誌面では常に貯蓄・貯蓄と言い、「1,000万円貯める方法」「年収アップの方法」など、金を貯めることに対して貪欲な「日経ウーマン」を読んでいる人が、貯金ゼロなわけがありません。「彼に金がない」というのは結婚を考える際にリスクになるかもしれませんが、「日経ウーマン」読者にとってはそんなにリスキーじゃないんです。だって、すでに自分が「貯蓄」という保険をしっかり備えていますから。

 好きになった人が無収入だったら……。その可能性はゼロではありません。0.1パーセントでも可能性があるなら、事前に保険をかけておく。「日経ウーマン」イズムは、結婚という市場においても変わりありません。そう思うと、「日経ウーマン」にとっては、貯蓄=婚活といっても言い過ぎじゃないのかもしれませんね。

 「日経ウーマン」が推す「貯蓄」に対する新たな発見があった今月号。貯蓄額に幸せが比例するわけではありませんが、額が多いに越したことがないのは確かです。貯蓄のために日々節約し、月に一度の給料日にはハーゲンダッツ(300~650円)を食べたり、スーパーでお菓子を大人買い、デパ地下スイーツを2~3個買い(共に1,000円前後)といった、文字通り”ささやかなご褒美”で、仕事に対するモチベーションを上げる「日経ウーマン」読者たち。そんな彼女たちに向けて、来月号も漏れなく貯蓄特集が組まれております。「節約&貯めテク、大公開!」と、一粒で二度おいしい特集名です。これからも貯蓄と仕事に忙しい働き女子のために、堅実でためになる特集を期待しております!
(エメラルド真希)

『日経 WOMAN (ウーマン) 2011年 07月号』

舞台『風と共に去りぬ』のPRで米倉姐さんが登場だよー

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最終更新:2011/06/08 21:00
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