[TVツッコミ道場]

中井貴一の軽妙なナレーションがこそばゆい『サラメシ』の妙

2011/05/20 16:00
nakaikiichi.jpg
「蒼い素描」/EMI Japan

 5月7日から始まったNHKの新番組『サラメシ』、”サラリーマンの昼メシ”で、”サラメシ”ということみたいです。NHK的にこの言葉、流行させたい感じなんでしょうか。

 旅番組なんかで時々ある、VTRにあいづちや感想をナレーションであてていく作りで、そのナレーションを担当しているのが中井貴一。毎回何組かのサラリーマンのお昼ご飯を取り上げる内容だ。番組HPには、「少しでもおいしく幸せなランチにありつこうと、毎日財布とにらめっこしている全国の働く人々に贈るおいしくてオシャレな番組です」とあり、「おいしくてオシャレな番組」というところに独特の美意識がありそうだ。ナレーションで、

「働く大人たちを、僕らはサラリーマンと呼ぶ。働く大人たちには、必ず昼が来る。ランチをのぞけば人生が見えてくる。働く大人の昼ごはん、それが、サラメシ!」

 と、貴一もどこか誇らしげだ。さて、そんな『サラメシ』、7日の第1回の最初に紹介されたのが、名古屋の食肉卸会社の営業マン。
 
 彼の「サラメシ」(あんまり使いたくないが)は、250円の「から揚げ弁当」。安い。彼のお昼ご飯は毎日ほとんどコレだといい、入社以来の6年間で800食は食べたとか。

「同じ250円弁当がいくつかあって食べ比べしたら、たぶんこれが絶対に一番になると思います」

 なんかキリッと語っていたが、これには理由があった。この「から揚げ弁当」を食べ続けるのは、値段と安さだけが理由ではない。この弁当の鶏肉自体が、自分で納品している自信の商品だからだ。自分が卸した鶏肉を、調理をしてくれるスーパーのオバちゃんたちがこんなに美味しくしてくれている。そんな感動と、日々品質の確認をする意味もあって、毎日から揚げ弁当を食べる。そこに、中井貴一の「キリッ」としたナレーション。

<唐揚げ弁当のおいしさを確かめることは、営業マンとしての、誇り!>

 この「キリッ」と感は、14日放送のグーグル東京オフィスの社員食堂のパートなんかにも漂う。ビジネスニュースなんかで取り上げられることも多いが、飲み物にいたるまですべて無料だったり、社内に遊び道具がたくさんあったりと、とにかく「自由な発想」のための環境づくりに力を注いでいる。当然、社員のコメントも、

「新しいアイデアにつながっていく」
「刺激があっていいと思います」

 と、キリッとカッコいい。

<この自由な感じ。ITだなぁ。素敵な社風。就職したい!>

 と、貴一も思わずヨイショして転職したくなる宣言。そうか、このへんが「オシャレ」担当か。他にも、シルク・ドゥ・ソレイユ「クーザ」のパフォーマーや、義肢製作会社で働く女性、夏目漱石や勝新太郎が愛したメニューなど、多岐にわたる「サラメシ」が紹介されるが、それぞれのVTRにつく中井貴一の、高めテンションというか、ヘンに柔らかなナレーション芸を楽しむのが一番の見所だろうか。

 アメリカから来た飛行船パイロット、ジムさんのサラメシ(7日放送分)。週5日、6時間上空を飛びっぱなしで、当然お昼は機内で食べることになる。この日の「サラメシ」は、スコーン、バナナ、そしてサンドイッチ。全部コンビニ商品で、

「眺めはファーストクラスだけどランチはエコノミークラスだよ」

 というジムのジョークに、貴一はこんなナレーションで返す。

<僕は島根の高校生が開発したぜんざいのシュークリームがオススメなんですよ>

 なんだそれ。さらに、都内の小学校の校長先生(14日放送分)が、再開発で高層マンションが次々に建ったことで児童数が数年で激増したが、児童数が増えたからといって給料も増えるわけではないといったジョークに対し、貴一も役者の世界もそうだとナレーションで言う。

<セリフが多いからってギャラが多くなるわけではないんですよ>

 これがアドリブなのか台本なのかは知らないが、アドリブだったら普通にスゴいし、台本だったら、軽めのノリで「言わされてる」ことを思うとまたスゴい。「サラメシ」という言葉が流行るかどうかまでは分からないが、貴一ギャグの世界はなかなか楽しめます。
(太田サトル)

『蒼い素描(デッサン)』

右手にリンゴは、、ないのね

amazon_associate_logo.jpg

【この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます】
東幹久が下町を散歩する『ちい散歩』、なぜかパロディー番組化?
「秀樹、感激~♪」を封印し、意外性を打ち出している西城秀樹の現在
『イロモネア』でのたった一言で、観客すべてを敵に回したピース綾部祐二

最終更新:2011/05/20 16:13
アクセスランキング