[女性誌速攻レビュー]「STORY」10月号

“私のための歓迎会には艶ワンピで”、「STORY」による働く女性の夢物語

2010/09/02 16:00
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「STORY」2010年10月号(光文社)

 ヌードなり、卵巣企画なり、飛ばし過ぎるぐらい飛ばす「美STORY」にすっかり押されまくりの、本家「STORY」。そりゃ、「ビューティー」の冠のもとに、エログロな企画を打ちこんでくる「美STORY」と、一応ファッションメインの「STORY」では、はっちゃけ具合が違います。ただ、最近気になることが……。「STORY」と「美STORY」で似たような面子なり、企画が出てきていること。先日発売された「美STORY」の中で、沢尻エリカが表紙を飾り、インタビューで「山咲千里さんがいちばんの”美先輩”」と話していましたが、今月号の「STORY」では「『キレイの化学反応』、し合う女たち」で沢尻&山咲が登場しています。これって、同じに日に合同取材!? それでもいいんです。出版不況ですもの、細かく節約して、面白い企画が掲載されれば、読者に取って損はナシ! という風に勝手にハードルあげてしまいましたが、今月号の「STORY」は、面白い?

<トピックス>
◎大特集 働く40代の服が、参考になる!
◎「キレイの化学反応」、し合う女たち
◎「小物使い」に大人の余裕が出る!

■林真理子は見た!!

 萩原健一&「STORY」モデル・冨田リカの熱愛がアラフォー界を賑わしておりますが、今月号の林真理子先生の連載に驚くべき証言がありました。なんと先生、その現場近くにいたというじゃありませんか!! ショーケンのトークショーにゲストとして呼ばれた先生が、楽屋でヒマをもてあましていたとき、「トントン」とドアをノックしたのが冨田リカだったのだとか。同じトークショーの別公演で出演が決まっていた彼女は、先生とショーケンのファンであること、二人に会えて感動したということを、「図々しさや、いやらしい計算はなく」伝えにきたようです。

 「中年になってから、他人へのアプローチをさわやかにやってのけられる人」「きっと彼女は、私の楽屋のドアをノックするように、ショーケンの扉を叩いたに違いない。(中略)ショーケンが、いっぺんに冨田さんに惹かれたのもわかるような気がする」と、先生は冨田リカにベタぼれの様子。

 というのも先生、この手の「一般的にはさして有名ではないものの、女性誌等ではカリスマ的人気を誇る」輩が苦手なようで、「こういった方の中には、もの凄い勘違いをしている人たちがいる。初対面の私にいきなりタメ口をきいたり、あるいはヘンに卑屈になる」だって。”この手の輩”が気になる方は、どうぞ光文社大人カワイイ三姉妹誌を探してみてください。先生曰く「女性というのは、鋭く同性を見抜く」もの。私は最近離婚したあの方とか、離婚しそうでしないあの方とか、先生をタメ語でイラつかせたのではないかと踏んでいます。

 姉妹誌「美STORY」の対談で出会ったというショーケン&冨田リカ。その時彼女は「素敵な友達になっていただけますか?」と大胆アプローチしたらしいです。「STORY」世代が”素敵な友達”っていうと、どうも銀座で寿司を奢ってくれたり、ホテルのラウンジに花束持って駆け付けたりする”私が輝くためのレフ板”のイメージしか湧かないんです。恐れながら、そんな責任の一端は、林真理子先生、あなたにあると思えてなりません。

■「STORY」を席巻する、謎の職業婦人たち

 先月号のクローゼット特集で、「STORY」にも不況の波が!? とお伝えしましたが、今月の大特集は「働く40代の服が、参考になる」。仕事スタイルを「バリキャリ組」「契約組」「復帰組」と分け、それぞれのリアルストーリーを誌上で再現しています。これがすごい。契約組ゆりこの場合は、「以前はあんなに楽しかったママ友とのランチやお茶も、子供の話や旦那の愚痴ばかりと、同じ話にうんざり」と、のっけから今までのキラキラ日常スタイルを全否定。そして派遣に登録しようと一念発起、初出勤服の「ふんわりブラウスとティアードスカートのフェミニンな装い」に、同僚年下男子から熱い視線が注がれています。「私のための歓迎会にはおニューの艶ワンピで。年下の男性社員からちやほやされ、久々に姫気分を満喫」しちゃうし、家庭に帰れば「仕事の大変さを知り夫にも改めて感謝」と、めでたしめでたし……。なんという夢物語なんでしょう。

 こういうの、どっかで見たことあると思ったら、アレ。男性誌の巻末によくある「天然石のブレスレットをはめたら、童貞の僕がなぜかモテモテに」って誇大広告にクリソツ。「ミニスカートで人生変わる」しかり、今回の「お仕事復帰でモテモテ」しかり、「STORY」ってホント、人生一発大逆転が好きですよね。

 登場するキャリア読者たちも、虎視眈々と一発逆転を狙ってます。親業訓練インストラクター、美人ライフコンシェルジュと、想像すらつかない謎の職業婦人たち。読み進めてまいりますと、これらの方たちは自分で肩書きを作ったとのこと。でも職業として成り立っているということは、この得体の知れないカタカナ職業の元に、何らかの人と金が集まっているということですよね。輝きたい願望の強いアラフォー世代の心の隙間に忍び寄る、これぞ本当の隙間産業。「STORY」女性は現代の山師です。

 これらの企画に押されていましたが、「『キレイの化学反応』、し合う女たち」もキョーレツでした。寺島しのぶ&井川遥、川原亜矢子&シルク、欧陽菲菲&梅宮アンナ、山咲千里&沢尻エリカが「友であり、ライバルである私たち」トークを披露しています。お互いを誉め称え、「そんな私たちって最高じゃない?」と問いかけてくる皆さん。いろんな意味で目を逸らしたくなりました。女が友情を語るときの、あの「私を見て」感が、芸達者な方たちにより濃縮100%でこちらへと向けられるのです。妖怪・山咲千里の隣では稀代のエリカ様も単なる小童に見える。そんな「STORY」のせいで、今夜も寝苦しそうです。
(西澤千央)

「STORY」

熱帯夜の正体は、光文社カルチャーだったか!?

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最終更新:2010/09/02 16:00
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