「女を、生きのびろ! 第3弾 上野千鶴子トークセッション」イベントレポート

「なぜ不倫をしないのか?」上野千鶴子が指摘する、“理想の結婚”がはらむ矛盾点

2016/09/11 19:00
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 先日、東京・六本木にて「女を、生きのびろ!第3弾 上野千鶴子トークセッション 私たちのエロスはどこへゆくのか?」という女の性について考えるイベントが開催された。登壇したのは、『スカートの下の劇場 ― ひとはどうしてパンティにこだわるのか』(河出書房新社)や『おひとりさまの老後』(法研)などの著書で知られる、社会学者の上野千鶴子さん。アグネス・チャンの子連れ出勤を擁護した「アグネス論争」などでも有名だ。

 同イベントの参加資格には「性愛の話題に対して極度の抵抗感や嫌悪感がない女性」とあり、参加に当たって上野さんの『発情装置 新版』(岩波現代文庫)が課題図書として指定された。同書は、ブルセラ問題から春画、売春、少年愛マンガまで、性をあらゆる側面から論じている。

 女性が、性についてオープンに語れるようになったといわれる近年。ティーンズラブコミックという女性向けのキレイ絵柄のエロマンガや女性向けのAVレーベルまでも登場した一方で、まだまだ女性が性に対して正面から向き合うことのできない社会だと実感することも。そのため主催者側は、こうしたイベントに足を運ぶ女性はレアな存在であると述べ、筆者も「性に対して抵抗感がない」と自覚する女性は、それだけで「自分は性的に解放されている」と思っているのではと感じていた。

 同イベントは、主に参加者からの質問に、上野さんが答えていく形で進行。上野さんのめった切りともいえる回答により、彼女たち、そして筆者も、「どれだけ自分たちが社会的通念に縛られているか!」と気付いたのではないだろうか。

■「男に選ばれない女はカス」という洗脳

 上野さんによる“一刀両断”な発言とは、どういったものなのか? 例えば、参加者からの「職場の男性にセクハラをされたが、大人の女性としてどう切り返せばいいのかわからない」という質問には、「イヤなことはイヤだと言わなければ、相手には伝わらない。面倒くさい女だと思われた方が、あとがラクですよ」と返すなど、全ての質問に会場の予想を上回る返事が返ってくる。

 バツイチである筆者が特にハッとさせられたのが、“女の承認欲求”に関しての言及。筆者はよく知人に、「一度結婚しているといいわよね、『一度は男に選ばれたんだ』っていう実績があると余裕でしょう」などと言われることがある。が、その考え方を上野さんはバッサリと切って捨てる。

「女性の場合、(自分の性欲からではなく)男から性欲の対象として認めてもらいたいという、女としての承認欲求がある人もいます。セックスをしている女の子に『楽しいの?』『感じるの?』と聞くと『いいえ』と言うんです。快感がないのにするってことは、男の性欲のために自分の体を提供しているということ。40年前までは、男に選ばれない女はカスだった。『オレサマをむらむらさせる女』だけが女で、それ以外は女の規格ハズレ。そうやって女性たちは洗脳されてきました。だけど実際は、『男に選ばれても選ばれなくても私はわたし、自分の価値ぐらい自分で見つける』というのが、40年前のウーマンリブでした」

 こうして上野さんの話を聞くと、男性が言う「女として見られないよりも、『やりたい』と思われた方がいいでしょ?」といったセリフも、真に受ける必要はなく、「自分の性欲の言い訳をしているだけでは?」などと、違った視点から捉えることもできそうだ。しかし、こうした「男に選ばれる・選ばれない」というテーマが議題が上がること自体、いまだ女が自らの価値を、自分の尺度で決めることができない証しなのかもしれない。

『発情装置 新版(岩波現代文庫)』
上野千鶴子節に酔いしれたわ~
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