【messy】

やっぱり気になる【女性用バイアグラ】。バイブコレクターはどう考える?

2015/06/11 20:00

 女性用バイアグラのニュース、気になりますね。messyでも「女性用バイアグラ、使いたい?」というアンケートを実施中で、個人的にも結果がたいへん気になるところです。

 「性欲がまったくない」「とても低い」というのは悪いことでもなんでもないし、それがその人なりの〈性〉との距離感だと私は考えています。性欲が強いほど、または性経験が多いほど、たしかに動物的なパワフルさは感じますが、人間は知性と社会性の生き物。本能を基準にして優位性を誇ったり、誰かを自分より劣位に置いたりするのはナンセンスです。

 でも、「性欲がない」ことで困るシーンが少なくないのも、また事実。子どもを授かりたい(医学の力でセックスなしに妊娠が可能な時代だとしても)、パートナーの欲求に応じられない、そのせいでパートナーとのコミュニケーションが成り立たない……。お互いが性欲ゼロだったら問題ないのでしょうが、そういうケースはどちらかというと少ないのではないでしょうか。

 女性用バイアグラの詳細はまだよくわからないところが多いのですが、「性的欲求低下障害を抱えた女性向け」の治療薬というからには、性欲を喚起するお薬なのでしょう。ここ、おもしろいですね。男性のバイアグラやシアリスなどのED治療薬は、性欲を刺激するものではなく、勃起をサポートするものです。これらの薬を飲んだところで、性的興奮を得られなければ勃たないわけです。もちろん男性にも性欲がなくてパートナーとディスコミュニケーションになり苦労されている人はいるはずですが、それは女性とくらべて圧倒的少数派、だから勃起さえできれば性欲のほうはなんとかなるという考えなのでしょうか。

◎不心得な男に悪用されませんように

 ところで〈女性の性欲を刺激する〉については以前、当連載でも一度〈媚薬〉を考察しましたが、これがまぁほんと、男性にとっては〈夢〉なんですよ。私はスポーツ新聞で年配の男性向けにいろんなラブグッズを紹介する連載記事を書いていますが、なかでも反応がいいのが、媚薬です。最近では〈ラブサプリ〉といわれることもありますね。自分は何もせずして、女性がひとりで勝手にムラムラしだす……という現象は男性にとって、ひとつの理想。ラブサプリが掲載された日は、ショップへのお問い合わせもひときわ多いと聞いています。

 すでに指摘されていることではありますが、私も「悪用する男性が出てくるのではないか」という心配を捨てきれません。「女性をより愉しませたい、ふたりでより感じたい」という願望からラブサプリを使う人もいるでしょうが、「俺が楽するために、女性にラブサプリを使う」という男性の存在をどうしても否定できないからです。この女性用バイアグラも、そんなふうに使われるのではないか……。女性の性欲を、その女性自身のものではなく、〈俺の、男のためのもの〉とする輩には嫌悪感しか感じませんが、そういう人間がいる以上、この薬の承認には慎重になってほしいと願わずにはいられません。この薬を入手するにはバイアグラ同様、病院で出される処方箋が必要になるのでしょうが、これまたバイアグラなどと同様、ネットなどでいくらでも手に入りそうという懸念はありますけれども。

 ほんとうに困っている人に届いてほしい薬ですが、これは〈きっかけ〉にしかならないことも忘れないでいただきたい。性欲低下からはじまるセックスレス、およびディスコミュニケーションをすべて解決する魔法の薬ではないということです。「これを飲めばとりあえずムラムラするし」というテンションでするセックスでも、最終的に愉しめれば結果オーライ。「また、してもいいかな」という気持ちになりますが、ムラムラはしたもののやっぱりセックスが苦痛だった。でもパートナーの求めには応じたほうがいいから、毎回薬を飲んでセックスをしつづける……。満足感や幸福感とほど遠いこんなセックスは、自分自身も損なうし、わずかながら残っているかもしれない欲望がさらにすり減らされるだけです。

◎手っ取り早さに振り回されるのは✕!

 私は自然礼賛派(母乳至上主義でミルクを否定したり、とかそういう極端な人のことをここでは指します)ではないので、医療の力を借りたり便利なツールを利用することにはかなり積極的です。バイブだって道具ですもんね。でも、それ一辺倒になったり、〈手っ取り早さ〉に飛びついてそれですべてを解消しようとするとなると、疑問があります。

 たとえば以前、ある女性から「彼とセックスするときも、まず電マを当ててもらう。それだと確実にイケるから」という話を聞いたことがあります。セックスで〈イク〉ばかりにこだわりすぎるのは感心できませんが、最初から〈ふたりでオーガズムを目指す〉という試行錯誤を放棄して、電マ使えばいいでしょ、手っ取り早くイケるじゃんという理由で道具に手を伸ばすのは、それ以上に感心できません。それはセックスを貧しくする行為です。だからこそ、この女性用バイアグラでセックスできるようになったとしても、パートナーと身体を重ねることの本質的なよろこびを見いだせないままでは、やはり自分自身が消耗してしまい、下手するとされにセックスがきらいになってしまうと思うのです。

 薬を飲めばいろんなことが一気に解決するという考えは、バイアグラで俺のペニスさえ勃てばセックスして射精までできる=問題解決という、男性的な考え方のように感じます。この薬で救われることもたくさんあるけれど、薬だけではどうにもならないこともまた数多くある。女性用バイアグラにかぎったことではないでしょうが、使う側の姿勢が大きく問われる薬であることは間違いなさそうです。

■桃子/オトナのオモチャ約200種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。

最終更新:2015/06/11 20:05
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