角川慶子の「シロウトで保育園作りました」第89回

送り迎えにハワイ旅行、新居建築、保育園ママたちの「実家力・おばあちゃん力」にビックリ

2015/06/06 16:00
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私がプロデュースしている音羽の坂こども園では、靴下の取り間違いを防止するために、まず保育園に入ったら玄関で靴下を脱がせます。これで靴下の間違いは解消したようです

 新年度が始まってから2カ月。保育園はやっと落ち着いてきました。かなり減ったといってもいまだに起きる服の取り違い問題(名前書こうよ!)、特に靴下には頭を悩ませています。年中組の子どもであっても自分の服全部を把握することができないので、あやふやになったときに記名してあると持ち主に返すことができます。

 服がなくなった場合、そのときに登園していた年齢の近い同性の子から連絡していくのですが、保護者が「見ておきます」と言って、2週間ぐらいしてから「ありました」と連絡が来たことがたびたびあります。同じコートをほかの子が着て帰ってしまい、間違えた子からの申し出が遅かったため、すでに保育園側でコートを弁償したこともありました。それからというもの、入園の際には「記名のない持ち物の責任は取れません」「ピンやゴム類はなくなるものだと思ってください」と書いた紙を渡しています。

■現代の二世帯住宅は妻方の家族と同居が主流!?

 保育園を経営していると園児たちの「実家力」には驚きます。キャビンアテンダントをしているママ、フライトの日は、朝の送りはパパで、お迎えはママのお母さん(子どもにとってのおばあちゃん)。入園前はママのお母さんにフルタイム託児していたそうです。保育園を中抜けしてプール教室に連れて行くのもママのお母さん。金銭的にも実家力は目立ち、一族で行くハワイ旅行は、全部おじいちゃん持ち。ほかにもママの実家の敷地に、新居を建てた、あるいは建ててくれた、ママの実家にマスオさんなどのご家庭も多く、「駒沢の森こども園に通わせるなら、祖母がお金を出すっていうのです」などとびっくり発言まで飛び出します。

 見学にママとママのお母さんで来られる方が多いし、ママのお母さんの発言力は絶対です。観察していると、夫婦力を合わせて頑張るというより、場所柄ママの実家近く(同じマンション同士もいます)で住むケースが多いような気がしますね。ママのお母さんは、ママを必死で育て、勉強させ、名が通った会社に就職させたのです。育児を理由に会社を辞めてほしくないので、献身的にサポートしてくれるともママから聞きました。

 不思議とパパの実家の力を借りているケースは少ないかもしれません。うちも私の母親と一緒に住む我が家を建てたとき、営業マンが「二世帯住宅を建てられる方は、最近だと妻方の家族と同居というケースばかりです」と言ってたし、昔みたいに「長男の嫁」みたいな感覚がなくなっているのだと思います。

 うちでもおばあちゃんの存在はやっぱり偉大で、娘が小さい頃は預かってくれている間に私が息抜きできて、本当に助かりました。料理を子どもと一緒に作ったり、編み物を教えてくれたり、母親よりも時間のあるおばあちゃんの方が向いていることも多々ありますよね。母親は怒る場面も多く、悪役に徹することもありますが、子どもはいつも笑っていて優しいおばあちゃんが大好き。これからもいい逃げ道になってくれると思います。近所に住んでいると(もちろん同居が一番)、力強いことは確かです。

 まー、物事にはもちろんマイナス面もあります。「子育てに口出しされる」「いつまでも子ども扱い」「いろいろと詮索される」など、いい距離を保っていないといけません。仲がよくても、ずっといると息苦しい……。これが本音かも。

 うちの場合は、ドアを2つにして、完全に切り分けました。マンションの隣同士に住んでいる感覚に近いかもしれません。お互いいい部分しか見ないので、気に入っています。お金は掛かったけれど、ひとり親なので「なにかあったら心配」からは解放されたし、「孫と娘と住めてうれしい、ありがとう、あんたすごいわ」と言われて、有名大学にも入れず、まともな就職もしなかったバカ娘だったけれど、最大の親孝行ができてよかったと思いました。これで母親がいつ死んでも悔いなしです!

角川慶子(かどかわ・けいこ)
1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。自身も元アイドルという異色の肩書きに加えて、ビジュアル系バンド好きで、元バンギャルの”鬼畜ライター”としても活躍。2011年9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。家庭では7歳の愛娘の子育てに奮闘中。

最終更新:2015/06/06 16:00
月刊 HOUSING (ハウジング) 2015年 7月号
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