[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」3月10日号

全然甘くない! 「婦人公論」の“大人の恋”特集は、トラブルと勘違いのるつぼ

2015/03/05 17:00
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「婦人公論」(中央公論新社)3月10日号

 「婦人公論」今号の特集は、「大人の恋 運命の引きよせ方からトラブル回避術まで」。まずは表紙インタビュー「大竹しのぶ 相手の世界を好きになってワクワクしながら生きたい」を見てみましょう。大竹は最初の夫と死別後、ドラマで共演した明石家さんまと再婚、一女(IMALU)をもうけるも離婚、その後劇作家の野田秀樹と同棲するなど“恋多き女”として知られています。現在も「もう結婚はしないとか、男の人と一緒に暮らすなんて考えられないとかも、決めてはいません」と大人の恋に前向き。

 大竹いわく「オジサン」と感じる人は、年齢関係なく「人に対してオープンじゃなくなる男性」とのことで、そういうオジサンは苦手だそう。大竹が求めるのは“才能がある男”。「さんまさんはとても子煩悩でしたし、野田秀樹さんも子どもとよく遊んでくれ、家族との時間をすごく大事にしてくれました。でも私は、家族との時間より仕事で才能を発揮することが大事じゃないの、と思ってしまう」。そこには“才能ある男たちをよき家庭人にしてしまう罪な私”が見え隠れして、「大人の恋」特集の幕開けにふさわしい、なんともゾワゾワするインタビューです!

<トピックス>
◎特集 大人の恋 運命の引きよせ方からトラブル回避術まで
◎弁護士、税理士、FP、探偵……頼れるプロの見つけ方
◎打越もとひさ 師匠・やしきたかじんは本当の愛を知っている男でした

■絶対に触らせられない戦いがここにあった

 そして大竹はこうも言っています。「女性も、50年生きているから人生の楽しみ方もわかっているわよ、くらいの大きさがある人は素敵。そういう魅力を男の人も尊重してほしい」。そして自筆でどデカく「恋せよ、乙女!!」の文字。年をとっても、いや年をとるからこそ「いい恋しなきゃ」圧がすごい。それは「いい女でいなきゃ」圧でもあるのです。才能や経済力も含めて魅力的な男から愛され、愛されることでさらに磨きがかけられる“私”。しかし今号の特集、甘美なときめきに満ちた恋の素晴らしさとそれを謳歌するだけの女の度量について書かれているのは、大竹のインタビューと作家・工藤美代子のエッセイ「宇野千代さんの流儀に倣い、“愛情の消費”をしよう」、そして漫画家・西原理恵子と高須クリニック院長・高須克弥の対談「週1デートは家族公認。墓もお金もいりません」くらいなもの。それ以降は現実の問題ばかりに焦点が当たっているのが非常に興味深いところです。

 結婚相談所、お見合いパーティー、お見合いサイト……“生涯の伴侶”に出会うためにどれだけのお金がかかるのかを取材したルポ「熟年婚活のお値段、ハウマッチ?」、浮気調査を数多く手がける探偵がアドバイスする「携帯電話もカーナビも 秘密がバレない使い方教えます」など、まさに「運命の引きよせ方からトラブル回避術まで」を網羅。その中でもこちら「ホンネ集 熱い思いが冷えた瞬間」には、ロマンティック浮かれモードが一気に葬送曲へと変わるようなとびきりエピソードだらけです。

 デート代を1円単位まで請求される、実は借金苦だった、娘や孫の前で浮気相手の妻が怒鳴り込みなどは、“熟年恋愛あるある”なのでしょうか。別居中の夫の相談をしているうちに意識しだした元上司とようやく結ばれたものの、セックスはそれっきりで「彼は男性の部分をなんとしても私に触らせません」という女性。あとから聞けば1回目は「勃起剤を飲んでようやく1回できたんだ」とのことで、「ああいうことは一度すりゃいいんだよ」という元上司に「薬を使ってでも私はしてほしいのに、その言い方はないんじゃない?」。もうこれは勃起至上主義が生んだ悲劇というしかありません。その他「去年の春先に温泉に行ったときのこと。彼の口からとんでもない腐臭が漂ってきました」など、もう出だしでおなかいっぱい。何十年も生きて人生の楽しみ方をわかっている男女も、勃起で言い争い、口臭で別れる。熟年の恋もまた、儚いものなのですなぁ。

婦人公論 2015年 3/10 号 [雑誌]
恋のトラブルこそ、人生の味わいですから!
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