角川慶子の「シロウトで保育園作りました」第31回

モンペ予備軍? 無理な要求を通そうとする入園希望の親たち

2012/12/01 16:00
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お友だちに読み聞かせをしている我が
子。最近では、見学や契約の方が来る
と“他人”になってくれるます。文字
が読めるのも成長ですが、お母さんの
心が読めるようになったのが一番の成
長かも

 駒沢の森こども園はほかの保育園より客層がいいのですが、入園希望者の中には「え?」と思うような、経営者を困らせる方もいらっしゃいます。今回は最近の“困った人”についてお話しします。

■ケース1:定員いっぱいなのに「入りたい」とゴネる

 その人は、園を見学して1カ月も過ぎてから、「12月から入園したいんですけど」と電話をしてきました。「現在はいっぱいです」と答えたら、「どうしても入りたいんです! なんとかなりませんか?」と言ってきました。「見学の際、『1名だけ欠員が出ました、入園ご希望なら早い方がいい』と申しましたよね?」と私が言うと、「いろいろほかの園を見てからと思って……。ここに入れないと困るんです、12月から仕事も復帰するし」となかなか引き下がらない。

 困るなら、すぐ申し込みに来いやー(心の声)。

 「定員を超えると安全が確保できないので、無理です」ときっぱり言うと、「週2回とか1回とか、なんとかならないですか?」と応戦。「東京都の指導で、児童数に対する保育士の人数の基準が決まっているんですよ。立ち入り調査もありますし、ほかのお子様に何かあっては困るので無理です」

 それでも「えー」と言って、なかなか電話を切らせてくれませんでした。

■ケース2:認可保育園に入るためのポイント稼ぎに利用する

 この方もケース1の方と同じく、見学から1カ月経過した頃に「12月から入園したい」と電話してきました。「現在はいっぱいです」と答えると、「12月から保育園に入らないと困るんです」とのこと。見学アンケートには「仕事復帰は4月から」と書いてあったので「あれ?」と思い、よくよく話を聞いてみると、「12月から認可外に入れてないと、認可保育園に入るためのポイントがつかないので」と言うじゃありませんか。

 認可に入るためには自治体の選考があるのですが、その際、夫婦ともにフルタイム勤務か、祖父母が同居していないかなど、家庭状況がポイント化されて審査され、ポイントが高いほど「保育の必要度が高い」とみなされます。申し込み時にすでに認可外に預けていると、それもポイントとして加算されます。ということは、認可保育園へのポイント稼ぎのために当園が利用され、私は入って1カ月しかたっていない子どもの保育受託証明書を書くことになるということです。

 受託証明のことを詳しく書きますと、書式や内容は区によってさまざまで、過去3カ月の利用状況を書くところもあれば、過去1カ月の利用状況だけのところもあります。不思議なことに「いつから園に来ているのか」といった項目がありません(少なくとも、私がこれまでに書いた受託証明にはありませんでした)。受託証明を見る限り、1年保育園に通っている人も、1カ月だけの人も、同じ扱いになるのです。だから、ポイントを稼ぐ目的で過去3カ月(区により1カ月)だけフルに認可外に通うという“ズル”はいくらでもできる気がします。年金不正受給と似てる気が?

 いままで3回、受託証明を書きましたが、いずれも何カ月も通ったお子さんです。認可は金銭的にもラクになるので、望まれる方もいるのはわかっています。快く受託証明を書きますし、送り出しています。ただ、預かり時間が少なかった方は、受託証明を受け付けた区の保育課から電話が掛かってきました。聞かれた内容は「何時から何時までの預かりをしているのか」「お迎えは誰なのか」「保育料は、きちんと支払われているのか」といったことでした。

 この時期、たくさんのお子さんを「定員いっぱい」ということでお断りしています。ポイント稼ぎのためのお子さんが入れて、駒沢の森こども園が一番行きたい保育園なのに入れないお子さんがいるのはおかしいのでは? と思います。ケース2の方には「12月入園のキャンセルが出たら、すぐ連絡してください」と言われましたが、キャンセルが出ても連絡しないつもりです。そもそもキャンセルは出ないですけどね。ポイント稼ぎで入園するのはご自由だとしても、それならせめて早い時期に来て、契約をして籍を確保してほしいです。間に合わない時期に申し込みに来て、文句を言わないでほしいですよ。

 ケース1、ケース2のような方が入園すると、モンスターになる可能性があります。お迎えが10分過ぎると、延長としてカウントしているのですが、「おまけしろ」とか「なんとかなりませんか?」といったことを言うタイプの親ですね。ゴリ押しするタイプは、ほかのことでもゴリ押しして、自分ルールを通そうとする傾向にあります。見学を含め、親をたくさん見ていますからね。カンが備わってきました。

角川慶子(かどかわ・けいこ)
1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。自身も元アイドルという異色の肩書きに加えて、ビジュアル系バンド好きで、元バン ギャルの”鬼畜ライター”としても活躍。2011年9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。家庭では4歳の愛娘の子育てに奮闘中。

最終更新:2012/12/01 16:00
『モンスターペアレント―ムチャをねじ込む親たち』
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