[TVツッコミ道場]

どんな発言にも食らいつく、「いじってもいい」タレント・石原良純の懐の深さ

2012/06/28 11:45
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『石原良純のこんなに楽しい気象予報
士』/小学館

 番組司会者やひな壇の共演者が、ほぼ100%その人をいじり倒す流れになる出演者。最初からいじってもいい空気をまとい、猫にマタタビのように、みんながいじることに夢中になってしまうような出演者。そんなタレントが、少なからずいる。

 例えば大泉洋、それからハリセンボン・近藤春菜にカンニング・竹山隆範、ふかわりょう、最近ではアンジャッシュ・児嶋一哉なんかもそうか。いずれも、多少雑だったり、わかりづらいいじりをしても、即座にツッコミ返してくれ、「ビギナーでも大丈夫」といったハードルの低さを感じさせてくれる。「だからこそ、なのか……」という気がする。

 6月20日の『スタジオパークからこんにちは』(NHK)にゲスト出演した石原良純も、そんな「いじってもいい」空気満載の、みんなの好物タレントだ。

 それは、基本的に真面目なイメージのあるNHKアナウンサーだって同じだ。メインMCの永井伸一アナは、初対面でありながら、「こうやってお会いすると、意外と顔が小さいんですね」と、早速軽くいじる。すると、「“意外”と言わないでくれる? あんまりほめられた気が、今しなかった」と、即座に言葉を拾う良純。もう1人のMC田代杏子アナも、その良純のハードルの低さをかぎとったか、「あの……二枚目……ですよね、本当に」と続けるが、あまりこういう出演者いじりをやらないのか、ちょっとおそるおそる。良純の反応は、「はぁ!?」という、シンプルなもの。

 この「良純をいじってもいい空気」は、スタッフも了解しているようだ。トークテーマを紹介する際、モニター画面に映し出されたのは、良純の顔を取り巻くように配置されたハートマークに、1文字ずつ乗った<す き だ ら け>の5文字。趣味人の良純には、「好き」な物がたくさんあり、「好きなものだらけ」ということが言いたいのだが、どうしても「隙だらけ」とも読めてしまう。しかもハートマークなのが、スタッフにも軽く小馬鹿にされてるよう。やっぱりここでも、「あんまりほめられた気がしないですね」と、良純はぼやく。

 良純といえば、やはり気象予報士として、またウェザーキャスターとしての活躍が印象深い。もちろん「好き」の1つとして、空や天気に関する雑学やちょっといい話を披露する。しかし、ひとしきり熱く語ると、「全然興味ないでしょ!」と、何も言われていないのにツッコんでみたり、「だからぁ!」と、勝手に混ぜ返してみたり。さらに、ちょっと感心してもらえたら、「ちゃんといいこと言うんだよ」と、自らをほめてみたり、あれこれ自虐的だ。そこに、やや天然気味ながら、真面目な田代アナが「いいお話でした」と、ぶつ切りのようにまとめてしまったことで、「区切んなくていいから!」と、抜群のテンポでキレる良純。

 「好き」の話は、さらに、マラソンの話と、鉄道についての話へと続く。息子も立派な鉄道ファンだそうで、親子でプラレールに夢中になったりもするそう。田代アナの、おそらく天然のいじりが、ここで連続して炸裂する。プラレールに顔を落として、目線を一体化させ、「ここでホームに電車が入ってくる感じが必要なのよ!」と、良純が熱く語れば、「あの……怪しいので……ビックリします……」と、田代アナがまず1発。続けて、「ちなみに、こういうパパを見て、息子さんは、なんておっしゃるんですか?」と、2発目。軽く馬鹿にしているみたいだが、田代アナは雰囲気がほわっとしてるから、わかっていじってるのか、素で言ってるのか、ちょっとわからないところがミソ。
 
 さらに、もう1発。良純が、「そんな父と息子の姿を、奥さんはあきれて見ている」という話をしたところで、田代アナがポツリと、「あきれそう……」。以上、3連発。これを聞き逃さなかった良純が「ええっ!?」と声を上げると、「いやいやいや……私だったらあきれそう、って……」。フォローのはずが、結局ダメな感じの着地になってしまった。

 いじることに慣れていない人も、ついつい何かいじらせてもらいたくなってしまう。結局、そんな良純への信頼感あってのことなのです。
(太田サトル)

最終更新:2012/06/28 11:45
『石原良純のこんなに楽しい気象予報士』
昔はバーボンを飲んで血を吐くという無頼派に憧れていた良純(公式プロフィールより)
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