[女性誌速攻レビュー]「STORY」4月号

現実かい離が甚だしい、「STORY」が考える「女子が好きな『女っぽさ』」

2012/04/04 16:00
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「STORY」2012年5月号(光文社)

 自然体、シンプル、ANEGO肌……そんな昨今の「STORY」に一人“ちょっと待った”をかけるあのお方。今月は連載「出好き、ネコ好き、私好き」の林真理子先生のお言葉からスタートしたいと思います。2年前に目の下にいれたヒアルロン酸がうまく吸収されず、青く筋になっていたことが気になっていた先生。ヒアルロン酸を溶かす注射をしてもらったところ、「みるみる間に目の下がしぼんでいき、くっきりと皺が出来た。(中略)舞台で老婆を演じる時にほどこすメイクアップといおうか、まるでクレヨンで描いたように太く深い線がくっきり」してしまって大騒ぎ。

 先生曰く、ずっと若い若いと言われ続け、ファッションにも美容にも気を使い、どうしようもない深い皺にはごく“たま~に”ヒアルロン酸を注入してきたのだそうです。そして「私は悟ったのである。これが本当の私の顔なのだと」。結果、美容医療を施すのは「カツラをかぶるようなもの」であると結論づけた先生。いただきました、「エステは女のソープ」に続く名言です! いつも散々どうでもいい話をかましながら、なんだかんだで納得のいく着地点を見つけるところ、さすが腐ってもマリコハヤシ。やたらと高い自己評価も含め、勉強させていただきたいところです。

<トピックス>
◎大特集 40代は「着回し」で、毎日オシャレを発明中!
◎女子が好きな「女っぽさ」大研究
◎悩んだらピン子に訊け! 第9回「同窓会のこと」

山咲千里がNGってこと?

 そんな林真理子先生のコラムが絶滅危惧種に思えるくらい、ここ1~2年で「STORY」の趣向はガラっと変わりました。「女子が好きな『女っぽさ』大研究」では、40代女性が今どんな女性のどんな仕草やファッションが「女っぽい」と感じているのか、創刊10年の歴史を紐解きながら解説しています。

 このところの「STORY」で毎号見かける(気がする)天海祐希が4月スタートの新ドラマの番宣でまず登場。共演者である石田ゆり子との対談です。「今の“女っぽい”って、昔思っていたのと違いません?(石田)」「若い頃は、男性が思う“女っぽい人”、たとえば、最大限女であることを武器にしている人を“女っぽい”と思っていたけど、今は全く違う。最近は、女性に対して『男っぽいね』は褒め言葉。つまり“男っぽい”=“女っぽい”なんだと思うの(天海)」と40代独身生活を謳歌するふたりは語り合います。女であることに自信を持てるようになり、ことさらに性別を強調する必要がなくなってきた。シンプルな無糖派ファッション派は自立した感じで友達になりたい。男性にも“面倒くさくなさそう”とウケがいいのではないか。「女子が好きな『女っぽさ』」をそう考察していました。

 さらに「今、『女っぽさ』が変わった! 2年前の“女っぽい”は、今やナンセンス!?」と題して、10年での変化を取り上げています。注目は「読者100人に聞きました! “いい女っぽさ”、“イヤな女っぽさ”って?」というアンケート。「同性として『素敵』と思う人の“いい女っぽさ”」という問いに対して多かったのは「媚びない人」「よく笑う人」「さばさばした人」「自立した人」という答え。反対に「イヤだな」と思う女っぽさとして挙げられていたのは、「頑張りすぎている人」「40代なのにギャルな人」「巻き髪、つけまつ毛とナチュラル感のない人」などでした。この「イヤ」項目を総合して真っ先に思い浮かんだのが「山咲千里」だったことを告白させていただきます。ちょっと前まで「STORY」誌面に登場していただけに、恐ろしいもんです、時の流れというのは。

 「新しい『女っぽい』は、“こってり”はNG。女っぽさは、絶対的に“さりげなく”が基本。外見も、内面も媚を売らない“シンプル”こそが同性ウケの秘訣」と結論づけていた本特集。なんだか白いテーブルにミルクをこぼしたパズルを解くような難しさがありますね。結局はいわゆる“男っぽさ”(強さと潔さのイメージ)と“女っぽさ”(柔らかさや細やかさのイメージ)の、両方を持っていなきゃいけないってこと。最近の「STORY」は40代女性に課するハードルが高すぎ。これじゃあおちおち40代になれませんよ。

ご自身は同窓会には呼ばれないそうですが

 しかしどんなに「STORY」が新しい女っぽさを唱え、読者がその崇高過ぎるイメージに思いを馳せても、「裏表がなくて、さっぱりしていて、美人なのに気取ってなくて、人気があるのに恋愛ベタで、仕事デキるのに天然……」なんてぇのはドラマの中の天海祐希さんだけ。実際は、現実のドロドロやヌメヌメをたくさん抱えて生きているわけです。

 「STORY」の膿出し担当「悩んだらピン子に訊け!」にはそんな現実のおかしさと切なさがいっぱい。ちなみに今号のテーマは「同窓会のこと」。同窓会だけで一つのテーマになるなんて、その手のお悩みが多数寄せられているということなんでしょうね。

 まずは「高校の同窓会の案内が来たが、15kgも太っておばさん化した体を見られるのが恥ずかしい」というお悩み。これに対して泉ピン子さん「同窓会って、貧乏と金持ちは来ないでしょ? 中途半端な階級の人が来るの。いちばん太りやすい層。だから、この悩みは、あんただけじゃない」と一蹴。的確です。

 続いては「三高の夫と華々しく結婚したものの、夫の浮気から離婚。友達に会うのが恥ずかしい」というお悩み。「きっとあんたみたいな女は『夫、東大なの』『ジュエリー、夫に買ってもらっちゃった』って、自慢気にどっかで言ってたんだよ」と諫めてから、『渡鬼』由来の邪推が炸裂します。「でも、同窓会の席では大丈夫。女は、同情してくれるから。『この女も不幸になったわね』と、歓迎されるわよ。急にメールアドレス聞いてくるよ。(中略)でも、心の中ではみんな思ってるはず。『あんなにさあ、エラそうにちょっとスノッブだった女がね』『嬉しいわ。離婚されるわね』って」。人の不幸が好きなら、不幸を媒体に連帯できる生き物なのも、また女性。そのあたりも抜かりなく「あんたがプライド捨てたら、『あのコ頑張ってんのね』に、なってくるからさ」とキレイにまとめていました。

 カラっとした“女っぽさ”という理想と、「太っちゃったから同窓会に行くのが恥ずかしい」というウェットな現実。さばさば系に振る舞う女性が意外と根に持つタイプだったりすることは、よーくあること。以前「STORY」のレビューで「自分の中の“女”を克服するために、女に認められる必要がある」と書きましたが、自分の中の“女”を隠すために、さばさば系というガワをまとうというのもあると思うのです。コスプレみたいなもんですかね。そう考えると“シンプル”って、ややこしいし面倒臭いしで、全然シンプルじゃありませんね。バブル世代の“分かりやすさ”と“謎に高い自己評価”が急に愛しくなってきた、そんな春の「STORY」でございました。
(西澤千央)

「STORY」

「サバサバプロレス」っていうプレイですね、分かります。

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最終更新:2012/04/04 16:00
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