『なぜか不思議な三姉妹』ブックレビュー

かわいい率は姉たちより高い!? 『なぜか不思議な三姉妹』の末っ子愛

2011/09/08 16:30
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『なぜか不思議な三姉妹』(中経
出版)

 長女はしっかり者だが貧乏くじを引きやすい、ひとりっ子は独創的だがKY、などといった”きょうだい構成の性格分析”が巷をにぎわせている。成長過程での環境要因として、性格に大きな影響を与えそう、ということで”きょうだい構成”の支持者も多い。血液型や星座よりも信憑性はありそうなものの、きょうだいネタでいつも割を食うのが末っ子とひとりっ子。かくいう私もひとりっ子だが、我々が一体何をしたのか、ワガママ、気を遣えない、甘ったれ、と散々な言われようだ。

 そんなきょうだい構成ブームのさなか、三姉妹にフィーチャーした本『なぜか不思議な三姉妹』(優慧太/中経の文庫)が発売された。著者の優氏は、日本で唯一の三姉妹研究家なのだそう。

 蓋をあけてみると、単なる性格分析本というよりも、優氏が今までに研究し続けた三姉妹うんちくをふんだんに詰め込んだ作りのようだ。第一章では、大河ドラマ『江 ~姫たちの戦国~』(NHK)や、『3月のライオン』(羽海野チカ/白泉社)、『うちの3姉妹』(松本ぷりっつ/主婦の友社)といった三姉妹が出てくる作品を、一作品ずつ丁寧に分析。たとえそれが、三姉妹ありきの作品ではなく、たまたま登場人物の設定が三姉妹なだけだった、というような作品でさえも、無理やりあの手この手で三姉妹の性格分析にこぎつけている。さすがは三姉妹研究家、その三姉妹熱には舌を巻く。

第四章~第六章で、ようやくお待ちかねの長女・次女・三女の性格分析が始まる。第一章での各作品の三姉妹登場人物の性格分析と、多少食い違っている点も見受けられるが、それはご愛嬌。性格分析だけでなく、男性観や、男性との相性、職業観まで詳しく解説されている。世の中のきょうだい構成分析で言われているように、本書でも末っ子がひどい扱いなのかと思いきや、かなりの末っ子推し。「生まれながらのセンター・ポジション」「プレッシャーに強く、スポーツ界、芸能界で活躍」「三女のかわいい率は、上の姉たちに比べて高い」「理屈ぬきで三女はかわいい」等々……、この著者は、末っ子の女の子が好きなのだろうか。【三姉妹の「長女の法則」】と、【三姉妹の「次女の法則」】はそれぞれ20ページのところ、【三姉妹の「三女の法則」】だけ22ページと、微妙に割かれているページも多い。

 第七章では、昔のドラマ、映画、小説、童話にまで手を広げて三姉妹キャラクターについて語られている。ここでも著者の優氏は、各種童話を引き合いに出し、「(童話の)長女&次女のキャラクター:自己中心的・いじわる・怠け者・欲が濃い」「(童話の)三女のキャラクター:奥ゆかしい・気立てが優しい・まじめ・欲が薄い」と童話に出てくる三女がいかにいい思いをしているかを説いている。

 そんなに三女が最高の存在ならば、来世ではぜひとも三姉妹の末っ子になってみたいぞ。それか、ひとりっ子を褒め称えた研究本を誰か書いてくれないだろうか。世の中での扱いの悪い、末っ子&ひとりっ子にもっと愛の手を!
(朝井麻由美)

『長女・次女・三女 なぜか不思議な三姉妹』

いや、なんだかんだで姓名判断が一番っしょ

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最終更新:2011/09/08 16:34
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