[女性誌速攻レビュー]「STORY」9月号

林真理子の閉経宣言、泉ピン子の連載スタート! 「STORY」から何かが香る

2011/08/02 16:00
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「STORY」(光文社)2011年9月号

 「先日、ふとあることに気づいた。そういえば、この頃、生理が来ないな……」今月の「STORY」、林真理子先生の突然の閉経宣言からスタートしています。”女を降りる”という行為をごく自然に受け入れられたという先生。曰く、40代のうちにこっそりと「後ろめたい」ことをした女性は、50代になると静かに”女”を降りられるようになるとのこと。「STORY」で言う”後ろめたさ”って、若い頃に自分をちやほやした男性をホテルのラウンジで待ちぼうけさせたり、「元CAでバツイチ」って嘘ついたりすることですよね。「ヤンキーだった同級生に数年ぶりに会うと、その落ち着きっぷりに驚く」のと同じ法則ですね。

 とにかく、自然の摂理に抗うように「若さやかわいらしさ」を求められている40代女性のみなさま、あと数年はいろいろやらかして50代になれば「お先に~」と「大人カワイイ」の呪縛から逃れられるみたいですよ。「40代はモラトリアム」らしいっす!

<トピックス>
◎大特集「エア買い」で拡がる、私のオシャレ地図
◎40代でたぶん史上初!”髪悩み別”HAIRオーダーカタログ
◎人生をスロウダウンする「湘南の家」

「エア買い」が読者にもたらすもの

 先月から新編集長の下、新たなスタートを切った「STORY」。デニムにピンクのカットソーというシンプルなスタイルに、主張のあるハイブランドのアクセサリーをあしらった表紙の富岡佳子に感じるカラっとした昼間っぽさ。「オシャレでシンプル、小物でゴージャス」は少し前から「STORY」が提唱しているスタイルですが、さらにムダを省いて賢くオシャレというのがこれからの「STORY」のテーマのようです。ということで大特集「『エア買い』で拡がる、私のオシャレ地図」を見て参りましょう。

 「『エア買い』とは妄想ショッピングのこと。オシャレな人は衝動買いとは無縁というけれど、それは常にエア買いで空想ワードローブをリニューアルし続けているから」と、冒頭から難解なリードで読者を煙に巻きます。ここはひとつ「エア理解」で先に進みます。

 人気スタイリストから、長谷川理恵、木佐彩子、中村江里子まで「10万~100万あったら何を買う?」というテーマで妄想ショッピングを繰り広げております。注目すべきはタレントたちのエア買い。中村江里子のエア買い予算は10万、実はお気に入りブランドというZARAやH&Mのアイテムで揃えておりますが、「パリのH&Mはオシャレ上級者でいつも混み合ってる」「(ZARA)パリ店ではデニムや靴はサイズが大きすぎて……」など、パリを切り口にした激しいエクスキューズ。一方、長谷川理恵はファッションページだというのに突如「薩摩切子のお猪口」をエア買いしだして「らしさ」をアピール。彼女たちの激しい自己顕示欲が漂います。

 終始「これって普通の秋冬アイテム紹介ではないか……」という疑念が頭をよぎるわけですが、でも、結局ファッション誌の存在意味は「エア買い」。そこを敢えて「エア買い」などと銘打つことで逆説的に「意外とリアル」ということを読者に感じさせるという趣旨なのですね。最近では各誌通販を連動させ、エアをリアルに変えようと躍起になっております。あの手この手で購買意欲をかきたてる、女性誌の商魂ここにあり、な企画です。

ババァの悩みはババァにしか分からない

 5月号の「私たちのCHALLENGE STORY」にて登場し、知られざる読者の所帯じみたお悩みに『怪傑熟女!心配ご無用』(TBS系)ばりの鋭さで答えていた泉ピン子師匠。「『勇気が出た』『スカっとした』などの大反響を受け」、ついに本誌で人生相談連載がスタートしたようです。その名も「悩んだらピン子に訊け!」、サブタイトル「40代のためのツンデレ人生相談」。

 第一回のテーマは「夫婦のこと」。「あんたたち、何悩んでんだい? 40代、人生のいちばんいいときだよ」「はあ、セックスレスの悩みが多いって? そんなちっぽけな悩みかよ。先が思いやられるね」と、お悩みに答える前から一刀両断。さすがのツンデレ人生相談です。

 家事をしても感謝もされないという主婦に、「夫に感謝れされないのは宿命。リベンジするの」と斬新なご意見を。「うまいものは一人で食べる。布団も夫より高価でいいものを買いな」とのこと。なるほど~。夫が趣味に没頭して部屋から出てこないという悩みには、「何言ってんだよ、人生相談にもならないね」と前置きした上で、「あんたもあんたで好きなことすれば解決するってもんよ」と合理的なソリューション。

 件の「セックスレス」のお悩みに関しては「『ただいま営業中』とか『今晩いかが?』って、胸に札かけておいたらいいじゃない?」とセックスレスギャグを推奨します。しかしここからが鋭い。「ほら、自分の魅力がどの程度あるわけ? 『してください』と言える、ムラムラするものがあるか、自分を客観的にみてごらん」……そんなことに悩んでる暇があったら、自分磨きに時間をかける、必死のダイエットでウェストのくびれも復活して、やっとその日に漕ぎつけるも「そうしたら、高校生の子どもが隣の部屋で咳してる。そんな気分一気になくなるでしょう。家族ってそんなもん。悩まないこったね」。う~ん、”自分磨き”までは予測はできても、息子の咳オチは思い浮かばなかったです。師匠、やっぱりくぐってきた修羅場の数が違いますね。

 最近ではどのメディアももっぱら「お悩み=オネエ」。面白いのですが、無理やり毒づかせている感も否めないところ。「STORY」のこのお悩み相談は、同性由来の的確かつ自然な叱咤激励にどこか懐かしさすら感じてしまうものでした。やっぱりババァの悩みは大ババァに解決してもらうに限るのね。次号も楽しみです。

 前号で「実用的だけどどこか物足りない」とレビューで書かせていただきましたが、今月号でその方向性はより明確になった気がします。所帯じみたことを一切気にせずカワイイ私を夢想する雑誌、「STORY」も時代の流れから”カンバック、キャリア”志向になり、雑誌のテイストもギラギラのライトから自然光へと変わってきたのだと。しかし筆者的に最も気になるのが全体に漂う”ギャグ”感……読者が「STORY」に抱くイメージを逆手に取って面白がってるような……。「エルメスの”モリ盛り”巻きが新鮮!」「関西・名古屋の『女らしさ』が変わって来た!」など在りし日の「JJ」(光文社)のような、コンサバ回帰になっているのに、林真理子の閉経宣言と泉ピン子の連載が同じ誌面にあがっているとは。なんだか異様な昭和臭が漂ってくるのですが、それも狙いなのでしょうか。
(西澤千央)

「STORY」

中村江里子のパリ信仰はもうビョーキ

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最終更新:2011/08/02 16:00
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