[連載]安彦麻理絵のブスと女と人生と

「AC」のCMを見ながら考えた、「毒」と「正しいこと」とAC的な女

2011/03/27 17:00
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(C)安彦麻理絵

 こんなにも、仁科亜季子の姿を目にする日がくるとは思わなかった。ACジャパン「子宮けいガン・乳ガンの検診を受けようキャンペーン」のCM。最初、母娘で「枝豆&ビールで女同士語り合ってる」のかと思ってたが、よくよく見てみたら、枝豆かと思っていたものは「きぬさや」、そしてグラスの中の飲み物は「ウーロン茶か麦茶」なのであった。やはり、酒飲みながらなんて設定はありえないか。

 二人はどうやら、きぬさやのスジを取りながら語り合っているようである。確かに、そうゆう「デリケートっぽい内容のCM」は、そんなシチュエーションの方が無難といえば無難である。しかし個人的には、「やっぱり検診は、面倒がらずに受けておいた方がいいわよ」なんて缶ビールをグラスに注ぎつつ、枝豆をむさぼり食いながら、っていう映像も見てみたかった。そんな母娘がいたっていい。そして「ちょっと、肉じゃがの残り冷蔵庫にあったわよね」「あ、持ってくる。一応チンしとく?」みたいな、日常的な会話も適度に混ぜ込んだ「無難路線をちょっとハズれた」CMだったら……。視聴者からの苦情、ちょっとは減ってたのでは……ってことはないか。すみません。

 この仁科母娘のCMに限らず、ACジャパンのCMに対する苦情が世間から噴き出している。なにせ、地震の後からもう、ず~っと、目に耳にするのは「AC~~♪」のあのフレーズ。「正直もうウンザリ」ってゆう気持ち、分からないでもない。てゆうか、すみません、私もちょっと……はい、ウンザリする時ありました、すみません。

 この「すみません」って気持ち、それはやっぱり「この御時世に、そんなことに文句たれるっていう不謹慎さ」の表れである。それと「正しいこと言ってるACのCMに対して文句たれる不謹慎さ」。そう、ACのCMは何も悪くない。ものすごく、当たり前の正しいこと、モラルとか、そういうことを伝えている。それなのに。

 やはり、人間には多少の「毒」が必要である、ということだろうか。そろそろ世の中は「正しいこと」ばかりに飽きてきたのではないだろうか。だんだん少しずつ、「ちょっとした毒」を口にしたくなってきてるのではないだろか。……ああ、地震が起きる前には、眉間にシワを寄せながら見ていたヒロスエの胃薬のCMが、今は懐かしく思える……。内田恭子の、ウソくさい口角の上がった笑顔までが遠い昔の出来事のような……。考えてみれば、今までは、そういう毒っ気の強い映像に疲れ果てたところで、ACのCMはさりげなく流れて、そして「……ああ、そうだよね、こころづかいって大事だよね」とか「むやみに110番とか電話すんのってよくないよなぁ」なんて、ふと胸を打たれる瞬間があったのである。しかし。

 地震後は、ACのCM漬けの毎日になってしまい、なんていうか、毎日毎日病院の入院食を食べさせられてるような、玄米菜食を強いられてるような……。そうなってくるとやはり、人間って、にんげんだもの、「あああ~、ヤ○ザキの菓子パン食いてぇ~!!」とか、「ピザ○ット食いたい!!」「○ックのフライドポテト~!!」ってなってしまうものだと思う。まぁ、今に限っては、いくら「AC~♪」にウンザリしても、ちょっとのガマンは仕方ないだろうとは思うのだが。

 てなわけで、これってもしかして「女」にもあてはまるわよねぇ、と考えてみた。要するに、まるっきり「ACのCM」みたいな女は、一緒に仕事してても酒飲んでても、確かにちょっとつまんないのである。やっぱり「毒」が、ひとつまみ、ふたつまみ程度、大さじ3杯くらいでもいい、そんくらい練り込まれてる女の方がおもしろいのは事実なのだ。なわけなので、世の中の「AC~♪」な女の人たちは、これをきっかけに、ちょっと己の中に「お茶目な毒っ気を少々」混ぜ込んでみてはいかがだろうか? (同性ウケは良くなると思う……ただし、男ウケに関しては、保証は出来ません……)

『おんなのこの正体 [単行本(ソフトカバー)]』

大さじ3杯までが上限ですよ~

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最終更新:2019/05/21 16:33
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