可愛いあのコも病原菌だらけ!

愛犬とのキスで死ぬ!? 危険なペット感染症に注意

2008/09/16 06:30

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「やめてよ、エキノコックスがうつっちゃう!」
photo by jim 5

「待合室で患畜の犬や猫に頬ずりしたりする飼い主を見ると、正直ゾッとしますよ。ペットから人間にうつる病気は多く、獣医にも感染者がいるほどなのに。でも、注意できないんです。飼い主さんを怒らせるわけにもいかないので……」(獣医師)

 時代の変化とともに、飼い犬や飼い猫との関係が変わってきたと言われる。キスしたり、一緒に寝たりと、まるで・恋人・のようなスキンシップ。だが、ひとつ間違えれば、これらの溺愛ぶりは命にかかわる行為なのだ。犬、猫の飼育数増加に比例して、ペット感染症(人獣共通感染症)も増加し、重大な問題になっているという。


「現在、日本では、約60種の犬猫からの感染症が確認されています。中でも目立つのは、ほとんどの犬、猫の口内に繁殖するパスツレラ菌、血液中にいるコク
シエラ菌の感染です。口移しでエサを与えたり、ひっかかれたりするだけで感染します。健康な成人ならほとんど問題ありませんが、糖尿病や肝疾患の方、お年
寄りや乳幼児の場合、せきや熱など風邪と同じ症状が出たり、皮膚が化膿したりします」(東京医科歯科大学・藤田紘一郎名誉教授)

 その程度の症状で済めばいいが、ペット感染症の専門知識がない医師では、正しく診断できずに手遅れになり、最悪の場合は骨髄炎や敗血症、肺炎に至るケースもあるという。

 だがこれらは、まだまだ序の口。最も恐ろしいのは、エキノコックスという寄生虫によって引き起こされる感染症だ。感染経路を説明すると、まず、エキノ
コックスの幼虫が寄生した野ネズミを、犬やキツネが食べ、エキノコックスが体内で繁殖し産卵。次に、エキノコックスの卵が含まれた犬の糞が、植物や水を汚
染する。そして、それらを人間が口にすると、体内で幼虫になり肝臓に寄生、長い年月を経て機能障害を引き起こすという順序だ。例年、数十名の感染者、死者
数名が出ている。北海道での症例が多いため本州以南では安心とタカをくくっている飼い主も多いようだが、「飼い主の転勤などの移住で、年間約400頭の犬
が北海道から本州や九州、沖縄などに連れてこられます。そのため、各地で感染者が出るようになっています」(前出・藤田教授)という状況である。恐ろし
い!

 トキソカラ症という病気も同様に、犬、猫に寄生した回虫の卵が糞と一緒に排泄され、人間の体に入ると増殖。脳や眼球に寄生するため、失明する人がときどき見られる。

 また、藤田教授はこうも警告する。「中国では、感染症による死亡原因の1位は狂犬病。現地で犬に噛まれてそのまま放っておいたら、100%死に至ります」。折しも北京五輪の真っ最中、食中毒よりも、現地の犬に気をつけたほうがよさそうだ。

 日本における狂犬病は、1967年に根絶されたという説が一般的だが、東京都動物愛護相談センターによると「全国で飼育されている犬は約1252万頭と
推測されています。しかし、各都道府県に登録されているのは半数の660万頭。しかも、そのうち7割しか狂犬病ワクチン注射を受けていません」という。つ
まり、日本といえど、狂犬病の危険性はまだ潜んでいるのだ。

 これらのペット感染症を予防するには、「ペットに触れたら手を洗う、キスなど過剰な接触を避けること。ペットと人間の線引きを明確にして接すれば、間違
いは起こらないはずなんですけどね」(東京都動物愛護相談センター)だという。あくまでも、犬は犬、猫は猫。冷たい言い方かもしれないが、結局は動物であ
る。可愛らしい外見ばかりに心を奪われ、”恋人”や”子ども”のように接し、思わぬ病気をもらってしまわないように! (若松和樹)

最終更新:2009/12/29 14:44
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