『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』日本的ではないという武器「もう一度 お父さんに逢いたい ~ホストの僕とフィリピンパブ嬢の母~」

2020/02/17 18:10
石徹白未亜(ライター)

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2月16日放送のテーマは『もう一度 お父さんに逢いたい ~ホストの僕とフィリピンパブ嬢の母~』。

『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより

あらすじ

 大阪のホストクラブで働くレオ、23歳。フィリピンパブで働く母と日本人の父の間に生まれた4人きょうだいの次男。だが父親は全員別々で、その父親に会ったのも13歳の時のたった一度きり。レオは高校を卒業し就職するもうまくいかず、ホストクラブの店長との出会いから居場所を見つける。レオはホストとして店に貢献したいが、営業成績は振るわない。

 ハーフとしての個性を生かしたほうがいいという店長からのアドバイスもあり、自分のことをもっと知りたい、とレオは母親の住む浜松へ。フィリピンパブ嬢の横のネットワークを生かし、ついに父親と再会。父親と息子は10年ぶりに静岡県のご当地レストラン「さわやか」で食事をする。

字面では、とんでもなさそうな両親の実態

 レオの母親は4人の子どもがいて全員、父親が違う。父親は母親がフィリピンパブで働いていた時の客で、レオが13歳で日本に来て日も浅いときに一度会ったきりになる。当時のレオは日本語がまだわからず、初めて会った父親と、ほぼ会話らしい会話もないままだった。それから10年が経過している。

 こうして字面で見ると、グレてもいいくらいの環境で育ったように思えるのだが、不思議とレオにはいじけた感じがない。親や自分の境遇に恨み言を言うわけでもない、感じのいい青年だ。

 番組が進むにつれ、両親の実態が明らかになっていく。まず帰省した先の浜松で、今もフィリピンパブで働く母親が出てくるが、明るくキュートで、微塵の暗さもない。浜松まで突然訪ねてきたレオに驚きつつもかわいがり、またレオも母親を気遣い、父親に会いたいと切り出すまでモジモジしていたりと「普通にいい親子関係」なのだ。

 フィリピンパブを舞台にしたシリーズは『ザ・ノンフィクション』の十八番で、前にも共にフィリピンパブで働く母親と日本人の父親の間に生まれたお笑いコンビを追った回があった。そのときの2人は、ハーフである自分自身にコンプレックスを抱いていた。しかしレオには、そういった部分が感じられない。

 そして番組の終盤には父親も登場するが、この父親は不思議なくらい飄々としていた。レオに、ホストで儲かっているのか、と何度も茶化すように尋ねていて、むしろレオのほうがあれこれ気を使っていた。この父親はろくでなしだとは思うが、こちらの毒気が抜かれるような雰囲気がある。レオの母親同様、明るくて暗さがない。一度しか会ったことのない息子が10年ぶりに自分を訪ねて来るのだ。「不義理にしていて申し訳ない」という気持ちだったり、逆にあまりの気まずさからそっけない態度を取ってしまうこともあるだろうが、そんなことは一切なかった。“日本人離れ”した父親だ。

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