早乙女智子医師×福田和子氏対談(後編)

「日本女性は恐ろしい状況にいる」避妊の選択肢が示す“女の人権”とは?【早乙女智子×福田和子対談】

2019/07/16 17:00
千葉こころ
避妊法を一覧にしたシート(YOUR LIFE公式サイトでも参照可能)

  望まない妊娠を防ぐ“避妊”。女性の体やライフプランを形成する上で、大切な行為であるにもかかわらず、「ピルを飲むのは遊び人」「コンドームは男性に着けてもらうもの」などのイメージから、女性が主体的に行いにくい面もあります。しかし、多くの国で避妊について考えることは、「自立」した女性の証しとして当たり前に受け止められており、避妊の種類も豊富で無料で配布される場合や低価格で提供する国もあるほど。そんな日本と海外の避妊事情の違いを、前回、公益社団法人ルイ・パストゥール医学研究センター研究員で産婦人科医の早乙女智子医師と、日本の性を考える「#なんでないの」プロジェクト代表の福田和子さんに対談していただきました。後編となる今回は、日本の避妊事情をクローズアップしながら、女性主体の避妊について考えていきます。

(前回:日本の避妊は「途上国」以下――ガーナ人女性が激怒した現実

コンドームは避妊方法にカウントされていない!

――前回、海外の避妊法を一覧にしたシートを拝見して、選択肢の多さに驚きました。

福田和子さん(以下、福田) 日本で選べるのは、コンドーム、低用量経口避妊薬ピル(以下、ピル)、子宮内避妊システムのIUSとか(以下、IUS)くらいですよね。ただ、IUSは使っている人も少ないし、避妊目的なら原則で経産婦が対象になっているから、出産経験のない女性だとピルかコンドームのほぼ2択になってしまいます。「#なんでないの」プロジェクトの活動をしている中で「ピルが体に合わなくて、でも自分で避妊したい」という相談をいただくこともありますが、すごい切実な問題だと感じています。

――ピルが体質に合わないなら、コンドームを使用すればいいのでは?

早乙女智子医師(以下、早乙女) そもそもコンドームをちゃんと使用しても避妊の失敗率は2%もあり、正しく使えていなければ失敗率は15%とされているため完璧とは到底言えません。例え話ですが、雨が降っている日に会議をするとしたら、傘をさしながら野外で話すのと室内のどちらを選びますか? みなさん当然のように室内を選択すると思いますが、言い換えるとコンドームは傘でしかないんです。傘をさしても雨に濡れるでしょう。つまり、それが避妊失敗ということ。いかにコンドームの避妊率が低いのかわかると思いますが、何も特別なことを言ってるのではなく、当たり前の選択として「室内=成功率の高い避妊法」を使おうという話なんです。

福田 この表は13種類の避妊法が避妊の効果別に3列に分けられていて、一番上の方法が避妊効果の高いもので、下に行くほど低くなっています。多くの日本人が使用しているコンドームは一番下の列に表示されていますが、同列にある膣外射精やオギノ式は“伝統的”や“昔ながらの習慣”という意味の「トラディショナル」と呼ばれているんです。つまり、海外での認識としては、コンドームによる避妊はものすごく遅れていて、避妊法としてカウントされてないようなもの。

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