夫婦別姓反対派にTBS宇垣美里アナが意見「名前だけでつながっているわけじゃないですからね」

2018/06/23 20:00

 今月18日、選択的夫婦別姓を求め、映画監督の想田和弘氏と、舞踏家・映画プロデューサーの柏木規与子氏夫妻が、国を相手に提訴した。夫婦別姓を認める立法を国が怠っていることは憲法違反であることや、婚姻関係の確認などを求めている。

 二人は1997年にニューヨークで結婚。日本の法律でも、海外で結婚する場合は現地の法律に則って手続きすれば婚姻が認められるため、二人は別姓を選択していても事実婚ではなく、国内でも婚姻が成立しているとみなされる。

 しかし、日本では別姓で戸籍をつくることができない。そのため、法律婚しているのにも関わらず、戸籍上で婚姻を証明することができず、税制や相続などの面で不利益が生じてしまう。

 そこで二人は、この法の不備は結婚の自由を定めた憲法に違反するとして、訴訟を起こした。

 そんな想田和弘監督が、ライムスター宇多丸がパーソナリティーを務める帯番組『アフター6ジャンクション』(6月19日放送分/TBSラジオ)に生出演。今回の訴訟の経緯を説明しているのだが、そこで『アフター6ジャンクション』火曜パートナーを務めるTBSの宇垣美里アナウンサーが鋭い発言を連発していた。

 急きょ、電話にて番組出演した想田監督は、まず、本稿で述べてきたような訴訟理由を説明したうえで、<僕らは同姓を選びたい人たちは同姓を選べばいいと思っているし、彼らの自由なんですよ。だから、僕らにもその自由を保証してください、認めてくださいと言っているだけなんですけど、なぜか反対派の人たちは……。(反対派は)いらっしゃいますね。ツイッターでもすごいやっぱり来るし>と語り、この訴訟のニュースが報じられて以降、保守派の人々からひどいバッシングを受けていると明かす。

 事実、ネット上には、<同姓がもたらす家族としての結束、ひいては日本人としての結束。そういう強さをバラバラにしたいと願う人々、もしくは近隣諸外国が存在するんでしょうね>といった偏見の強い書き込みが散見される。

 番組では、選択的夫婦別姓に反対する人々から寄せられている論拠として、想田監督が<家族の絆が壊れるとか、日本の文化が破壊されるとか>との意見を紹介するのだが、これに対し宇垣アナは、<日本の文化(笑)。そんな、昭和か明治ぐらいから始まったことなのに>と述べた。

 確かに、義務教育レベルの日本史の教養があれば、夫婦同姓が「日本の文化」などではないことは誰でも知っているはず。明治民法によって夫婦同姓が定められたのは明治31(1898)年で、たかだか120年ほどしか経っていない。

 また、想田監督が結婚したアメリカ合衆国はもちろん、現在でも選択的夫婦別姓を認めていない国はほとんど存在しない。そのため、国連の女性差別撤廃委員会から、2003年および2009年に、夫婦同姓の強制について改正を求められている。

 では、夫婦別姓を認めた国は、それによって家族の絆が崩壊して大変なことになっているのかといえばそんなことはない。これに対しても宇垣アナは<名前だけでつながっているわけじゃないですからねぇ>とコメント。

 宇垣アナは<それこそね、共働きの方も多いですから。そっち(別姓)のほうが仕事にも不利益出ない方、絶対多いと思うんですけどね>と語り、夫婦別姓がもたらすであろう社会的メリットを指摘するが、それに対し、夫婦別姓反対派の意見は非論理的なものばかりではないだろうか。

 では、反対派の本音はいったいどのようなものなのか。弁護士の打越さく良氏は以前Wezzyで行った夫婦別姓に関する講義のなかでこのように解説している(リンク)。

<反対意見はいずれも根拠のない、ふわ~っとしたことばかりですが、これを主張する人たちは、家族ひとりひとりが家に対して忠実であり、それぞれ夫や妻、父や母という役割をきちんと果たすことは、国家に対して忠実であり、国民ひとりひとりが国に奉仕することに繋がる、と考えているようです>

 これは、憲法24条を改正し、「家族は互いに助け合わなければいけない」という家族条項を付け加えようとする動きと軌を一にするものだ。日本会議をはじめとした保守層が押し進めるこの家族条項は、家父長制を復活させて女性差別を温存し、さらに、国が担うべき社会福祉を「自己責任」のお題目のもとで家族に押し付けるものになる。夫婦別姓を強行に認めたがらない人々が望む社会は、「父への忠誠」「国への忠誠」を求める、戦前回帰を指向する社会であろう。

 夫婦別姓禁止についての民法規定が憲法に反するという裁判はこれまでも起こされており、2015年には最高裁で争われたが、その際は合憲の判決が出ている。しかし、夫婦別姓に対する社会的要請は強い。2018年に内閣府が行ったアンケートでは、賛成(42.5%)が反対(29.3%)を上回った。夫婦別姓を求める裁判も、今年だけで3件目となる。今後もこの裁判の行方を注視したい。

(倉野尾 実)

最終更新:2018/06/23 20:00
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