『あなたには帰る家がある』真の主人公は、家族ごっこをしていた木村多江とユースケ夫妻のほうだった

 全11話のドラマ『あなたには帰る家がある』(TBS系)が、いよいよ最終回の放送を迎える。ホームドラマかと思いきや不倫ドロドロ系、ホラー展開もありつつカラッと離婚してみせるなど、一筋縄ではいかない作品だ。四人の大人たち(と、それぞれの子供)の、なんともいえない交流を通じた“気付き”を丁寧に描いてきた同作。ある種、大人の青春ドラマのような趣もなくはない。

 6月15日放送の第10話では、茄子田綾子(木村多江)の過去が明らかになると同時に、絶望的なモラハラ夫だった茄子田太郎(ユースケ・サンタマリア)の違った面が描かれたことで、いびつな夫婦関係しか築けなかった茄子田夫妻の全容がようやく掴める1時間だった。序盤であれだけ横柄な言動・行動を取っていた中年おやじ・茄子田太郎が短期間で改心したかのようにも見えて違和感はあるものの、人間は多面的な生き物だ。どこを見るか、どこを見せるか、それによって全然違って見えるだろう。太郎をただの嫌なやつ、酷いモラハラ夫として描くのではなく、その背景まで掘り下げている。それは綾子についても同様だ。

 第10話では、綾子の実母の葬儀が地元・栃木で営まれ、真弓(中谷美紀)と綾子は路線バスで、秀明(玉木宏)と太郎は車で、それぞれ一緒に栃木まで向かうハメになる。真弓と秀明の娘・麗奈(桜田ひより)が登校せずに綾子と太郎の息子・慎吾(萩原利久)と一緒に栃木に向かっていると知り、行き先が綾子の実家である以上、真弓は綾子と一緒に行くしかなかったのである。もちろん楽しい道中になるはずもなく、2人は静かに火花を散らす。快活で物怖じせずクラスの中心にいたであろう真弓と、地味で目立たないが男子ウケはそこそこ良かったであろう綾子は、互いに「あなたみたいな女が嫌い。昔から」と罵るのだった。なお、口火を切ったのは綾子のほうだ。

 一方、太郎の運転する車で向かった秀明と太郎は、道中で車が泥沼にハマって立ち往生している母娘と遭遇。太郎はテキパキと動き、洋服が泥ハネで汚れることも厭わずに彼女たちの車を救出する。秀明は太郎に指示されて小さな女の子を見ているのみだったが、それなのに、母親と女の子がお礼を言ったのは「かっこいいお兄さん」の秀明だけだった。太郎が“愛されない男”であることを強烈に印象付けさせる描写である。

 綾子の亡き母の葬儀会場では、綾子に気づいた姉(森口瑤子)が「なぜこんなに早く来るのか」と怒りを見せ、さらに慎吾も連れてきたらしいと知るとビンタ。「あんたのそういうところが昔から……」と憤る。実は、慎吾は綾子と太郎の子供ではなく、綾子と綾子の義兄(姉の夫)との間に出来た子供。義兄に「初めて会った時からずっと憧れていた」綾子は、姉との結婚式前にその気持ちを義兄に伝え、義兄は「応じてくれた」という。そのことを知った綾子の両親は、見合いを強引にセッティングして綾子を家から追い出そうとした。綾子はすでに義兄との子供を身ごもっていたが、「赤ちゃんには父親が必要だったから」、「一番、女性に縁がなさそうな人」「家族の幸せを一番に考えてくれそうな人」である太郎と結婚した。太郎は綾子が義兄の子供を妊娠していることを承知で結婚したのである。

 見合いで綾子と知り合うまで女性経験がなかった太郎は、自分の身の程を“冴えない、女に愛されない男”だと認識しており、だからこそ自分のような冴えない男の元に来た綾子を愛し大切にしようとした。子供と血がつながっていないことなんて「どうでもいい」ことだったのだという。綾子と秀明が不倫関係に陥ったことにより離婚してしまったけれど、真弓と秀明の夫婦関係は、色々問題はあったにせよ、茄子田家と比較すれば屈託がなく健康的だったようにも思える。

 さて、綾子は太郎との離婚および秀明との再婚を望んでいる。太郎は本音では綾子と離婚したくないけれども、記入済みの離婚届を渡した。イケメンで人気者である秀明が、綾子を幸せにしてくれることを願って。そんな太郎の額に、真弓はキスをする――。

 というわけで、何ひとつ解決していない波乱状態のまま、最終話に突入だ。秀明はメンヘラ全開の綾子に引いており、真弓を失ったことを後悔している。真弓はおせっかいから、太郎と綾子を再びくっつけようと目論んでいるようだ。綾子の思惑は。太郎の本音は。おそらくすべてにカタをつけるべく、全員がブチまけあうことになるだろう。

 茄子田太郎は、ユースケ・サンタマリアの演技力もあって、ただの無神経な男というよりは狂気的な存在として描かれてきていたように思う。まず、いつも衣装がすさまじくダサい。猫背で髪もボサボサ。清潔感がない。初対面の営業マン(秀明)にも横柄。エロいというより“いやらしい”。スナックでの振る舞いも最低。なにしろ、真弓に向かって“男から見た性的に惹かれる女の順位”を「一盗二婢三妾四妓五妻」だと説明したうえで、「そんな可愛げないの顔ばかりしてると、旦那に抱いてももらえないよ」と豪語。

 さらに家では妻(綾子)を使用人のようにこき使い横柄な態度を崩さない。寝室では綾子を「おい」と呼びつけて、愛撫もなく性交。しかしここへ来て、女性との接点がなさすぎるがゆえに、女性観が歪んでいたり、愛情の示し方がわからなかったり、性交のやり方もよくわからなかったりしたのでは……という見方も出てきた。

 とはいえである。綾子と結婚してから10年以上も、この夫婦は何をやってきたのだろう。本音を明かすこともなければ、癒し合うこともなく、夫婦ごっこ、家族ごっこをしていただけではないのか。そんな夫婦が最終話でどう転がるのか、気になって仕方がない。歪んだ二人の男女、太郎と綾子こそが、本作の主人公だったように思う。

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