「日本行方不明者捜索・地域安全支援協会」理事長・田原弘氏インタビュー【前編】

SNSで大拡散される“行方不明者”捜索投稿の是非――「慎重に」とプロが警鐘鳴らすワケ

2018/02/21 18:00

Twitterでの情報拡散は犯罪に加担するリスクも

――もし身近な人が行方不明になった場合は、どうしたらいいのでしょうか?

田原 まずは警察に行方不明者届を出し、信頼のおける捜索協力団体などに援助を求めてください。

――最近はSNSで行方不明になった家族の捜索を呼び掛ける投稿をよく目にします。これらの方法をどう思われますか?

田原 多くの人の目に留まるという意味では、有効なこともあるでしょう。ただ、個人の連絡先などを記載すると、いたずら電話をかけられたり、写真から自宅を突き止められたりと、危険な側面も多いです。苦しんでいる家族に嫌がらせなんて……と思うでしょうが、“他人の不幸は蜜の味”なんですね。それに、たとえ連絡先を警察にしたとしても、先ほども言った通り、警察は事件性のない成人の行方不明者を積極的に捜すことはないため、寄せられた全ての情報が家族へ伝わる保証はありません。なので、私どものような捜索協力団体など、代理の連絡先を掲載することをおすすめします。それに、むやみやたらにSNSで情報を集うよりも、本人の行動範囲などを考えた上で、出没しそうな場所をある程度予測し、駅周辺でビラを配るなどした方が発見率は高いと思います。

 あと問題なのは、解決した後のことです。インターネットは完全に情報を削除することが難しいため、無事に発見された後も、捜索願の投稿がネット上を漂ってしまう恐れも。先々のこともよく考えた上で、投稿を判断する必要があります。

――捜索を呼びかける投稿を見る側が注意することはありますか?

田原 個人が投稿する捜索願の中には、家族を偽ったストーカーや借金取り、また、DVから避難したパートナーを捜している加害者本人のケースなどもあります。良心から拡散した結果、犯罪に加担してしまったということもあり得るので、慎重になるべきかと思います。実際にMPSに依頼に来た人の中にも、「怪しい」「借金取りではないか」と感じ、お断りしたことがありましたよ。この時は、「警察には行方不明者届を出していない」というので、「そういう場合は、依頼を受け付けないことになっています」「警察に届出をしてからにしてください」とお伝えしたのですが、SNSではその辺の事情はわからないですからね。

(後編につづく)

最終更新:2018/02/22 18:25
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