本当にスキャンダルはいらない?

もし“文春砲”がなくなったら? 芸能プロ、テレビ局、マスコミ関係者が語る“芸能ゴシップの是非”

2018/02/03 19:00

「芸能スキャンダルをやるな」は危険

 最後に、タレントのスキャンダルを追う芸能マスコミ側は、その意義についてどう考えているのだろうか。ネットで巻き起こる、週刊誌バッシングに対して「何言ってるんだろうと思う(笑)」と語るのは、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク・神林広恵氏だ。

「“週刊誌の親分”といわれる新潮社の大物編集者・斎藤十一は、『週刊新潮』を新聞とは異なる、“俗物主義”という方針で編集し、“金と女と出世”に焦点を当てていました。人間は俗物であり、そういったものを求めている、と。そこから週刊誌は発展してきた歴史があるだけに、スキャンダルをやるのは、週刊誌ジャーナリズムの必然なんです。なので、『スキャンダルはなくなれ』って、いまさらなぜ? と感じてしまいます」

 これまで、プライバシーの観点から、「芸能人は公人か準公人か」と議論されてきたが、神林氏は「最近ではママタレなど、私生活を売りにする人も増えています。しかし都合のいい部分だけ見せていて、“実像はどうなのか?”という疑問がありますね。そこを担ってくれるのが、週刊誌。ネットには『芸能ニュースは、事務所の発表だけでいい』といった意見もありましたが、都合のいいところだけで知らされて、騙され続けてもいいのか? 本当はどういう人物なのか知らなくてもいいのか? と思います」と、“知る権利”を自ら手放そうとする人々に疑問を呈する。

 続けて神林氏は、最近のワイドショーが「世論形成に大きな影響を与えている」点を指摘し、芸人をはじめとするタレントがコメンテーターとして出演している以上、「その人たちの実像を知ることは重要。そこにもスキャンダルの必要性を感じる」と語る。

「もし、芸能スキャンダルがなくなったら、社会がどんどん閉塞しますよ。さまざまな権力に忖度する記事ばかりが出るようになり、言論の自由が侵されたら、民主主義国家じゃなくなってしまいます。それに芸能人の中で、この人のスキャンダルは報じてもいいけど、この人は報じてはいけないといった線引きをするのも、言論を萎縮させるきっかけになると思いますよ」

 またネット上には、「芸能スキャンダルではなく、政治問題をもっと報じるべき」といった声も出ている。これについて神林氏は、「最近の安倍首相は、よく芸能人と会食をするなどして、交流を持っていますが、一概には言えないものの『芸能人は影響力があることを知った上で、自身の政策に同調してくれる人を増やしているのではないか』とも思うんです。そういった点も含めて、『芸能スキャンダルをやるな』というのは危険ですよ」と語る。

 「文春」編集長の新谷学氏は27日、カンニング竹山との対談において、「表でこの人いいことばっかり言っているのに、実は裏でこんなことやってるんじゃないかっていうのを出したい。それがわれわれの仕事だ」といった発言をしたという。今後もさまざまな芸能スキャンダルが世に放たれるだろうが、それをどう受け取るべきなのかについても、熟考しなければいけないのかもしれない。

最終更新:2018/02/03 19:00
週刊文春 2018年 2/8 号 [雑誌]
私もみんなもそんな高尚な人間じゃないじゃん?
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