【連載】別れた夫にわが子を会わせる?

「元夫が今後再婚しても、親子関係は継続してほしい」障害のある子を守りたい元妻の願い

2018/01/11 15:00

元夫が今後再婚しても、親子関係は継続してほしい

――その後の調停の様子は?

 合計3回、調停をやったんです。最後の調停では、すでに離婚を考えていたので、財産分与の項目を加えました。元夫の主張は、一貫して変わりません。私による娘への虐待とかサイコパスとかいった虚偽の申し立てを、相も変わらず並べ立てていたんです。彼は、ぶるぶる震えていたそうで、それだけ追い込まれていたのかもしれません。ちなみに3回目は9カ月もかかりました。これで調停はすべて終了です。1回目の調停開始から、6年がたっていました。

――終了というのは、どういうことですか?

 離婚が成立し、財産分与の問題が解決したんです。家を建てるときに使った私の父の保険金を返してもらい、マイホームは元夫だけのものになりました。もうあそこに行くことはありません。離婚が成立したので、婚姻費用ではなくて、養育費という名目で娘に毎月支払ってもらうことになりました。離婚して、私なりにすっきりしました。夫にしても将来、私を養わなきゃいけないということがなくなって、すっきりしたでしょうね。だけど、長年、調停を続けて、正直疲れました。調停をすると、実生活のかなりの時間が失われます。たとえ勝っても、失うものが多すぎますよ。こういうことをしていると、人生が無駄になってしまいます。

――家に入れなくなった後の、息子さんとの関係は?

 3回目の調停の最中に、弁護士さんが見つけ出して、会ってきてくれたんですよ。それでやっと様子がわかりました。息子は大学を卒業して、会社員をしているそうです。なぜ今でも会いたがらないのかが、私にはわかりません。やはり元夫から私の悪口をずっと聞かされていたという事情が影響しているのではないかと思いますけど。

――旦那さんから、「娘に会いたい」という要求はないんですか?

 それがまったくないんです。かといって、元夫の娘への愛情がなかったわけでもない。こっちに引っ越したばかりの頃は手紙をよく寄越していましたし、一時的に止まりはしましたが、その後は養育費をちゃんと払ってくれてますし。

――今、旦那さんに思うことは?

 恨みはありません。ただ陳述書のオリジナルを書いたのは誰だったのか、なぜ嘘八百を並べるような文章を許容したのかってことに関しては、真相を知りたいですね。元夫が今後、再婚したりしても、親子関係は継続してほしいです。元夫には、音信不通になった私たちと息子の仲を元に戻してほしいし、娘にも関わり続けてほしい。一応、身辺自立はできていますが、それでも娘は、ややハンディがあります。彼女を守れるのは、家族しかいないです。

 夫と別れてもなお、東さんは親子の絆を信じて生きている。夫婦の絆は途絶えても、親子の絆が修復されることを私は祈っている。

西牟田 靖(にしむた やすし)
1970年大阪生まれ。神戸学院大学卒。旅行や近代史、蔵書に事件と守備範囲の広いフリーライター。近年は家族問題をテーマに活動中。著書に『僕の見た「大日本帝国」』『誰も国境を知らない』『日本國から来た日本人』『本で床は抜けるのか』など。最新巻は18人の父親に話を聞いた『わが子に会えない 離婚後に漂流する父親たち』(PHP研究所)。数年前に離婚を経験、わが子と離れて暮らす当事者でもある。

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最終更新:2018/01/11 15:00
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