瀬沼文彰氏インタビュー

にゃんこスターはなぜ若者にウケる? 「YouTuber的」「いいね!感覚」変容する“面白い”の意味

2017/12/17 19:00

「ネタの質+ビジュアル」で評価される

――この3組は、歌ネタ、リズムネタという共通点があります。

瀬沼 そうですね。演じている本人が楽しそうにやっているのも共通していて、ウケていると思います。あと、“見た目”の面白さが、ウケているのではないでしょうか。にゃんこスターも派手な衣装ですし、アンゴラ村長の素人っぽさのある見た目も、テレビでは新鮮に映ったのかもしれません。ブルゾンちえみも、「女・男・男」という編成は今まであまりなかったので、見た目のインパクトがあったし、みやぞんは、やっぱり髪型(笑)。あの笑顔も人にインパクトを与えますよ。

――“視覚”の部分の目新しさに若者は惹かれるんですね。

瀬沼 ブルゾンちえみは、本人も言っていたように、「ミュージックビデオを参考にしてネタを作り上げた」というのが新しかったし、ウケたのではないかと思います。今の笑いは、「ネタが面白いかつまらないか」だけで判断されるのではなく、「ネタの質+ビジュアル」で評価されるというか、もっと“全体”として捉えられているのだと思います。音楽界では、80年代前半にMTVができたことで、「音楽の良さ+ビジュアル」で評価されるようになりましたが、ようやくお笑い界にもそういった流れがきたのかなと感じています。ブルゾンちえみのような“女性のあるあるネタ”自体は、横澤夏子や柳原可奈子もやっていますし、古くは、清水ミチコと重なる部分があり、特に新しくはありません。

 新しいといえば、にゃんこスターが付き合っていることを公表したこと。バラエティ番組で、デートに密着した企画もありましたが、YouTuberの動画っぽい感じがあって面白いなぁと。2人のことを一度「いいなぁ」と思ったら、「今日は何をしているんだろう?」とYouTubeをチェックするように楽しむイメージ。とにかく、身内になってしまったら、ネタの質うんぬんではなく、何をしても面白くなる……そういう点がYouTube的だと感じますね。まさに友達感覚で、距離が近い。2人がこの先テレビで通用するかはわからないものの、“消えていく過程”をウォッチすることもできますし、ドキュメンタリー的な面白さとも言えます。

――今の若い世代は、YouTuberが身近な存在になっていると聞きます。上の世代からすると、「YouTuberが面白い」と言うのは、少々憚られるような感覚もあるように思うのですが……。

瀬沼 YouTuberしかり、にゃんこスターをつまらないという人は、お笑いヒエラルキーの中で「どっちが面白いか?」という“縦軸”で芸人を見ている気がします。しかし若い人は「周囲の評価は関係ない」「自分が面白いと思うものが面白い」「ダウンタウンもにゃんこスターもどっちも面白い」と、“横軸”で芸人を見ているのではないでしょうか。ただ一方で、「友達が面白い」という芸人を「いいね!」感覚で、自分も面白いと感じるなど、他人の意見に影響を受ける面もあるようですが、それは“縦軸”における優劣の話とはまた別です。『キングオブコント』は、まさに“縦軸”で芸人をジャッジする大会ですが、その中に、にゃんこスターが変化球的に現れたのはやっぱり新しかったと思いますよ。

 あと、今の若い人たちって「優しい」という特徴があるんです。にゃんこスター、ブルゾンちえみ、みやぞんは、どこか優しく笑ってあげたくなる部分がある。それもウケている理由かもしれませんね。

――お笑いヒエラルキーから解放され、笑いへの自由度が高まったような気もします。

瀬沼 「面白い」という言葉の意味が、変わってきたともいえます。今の若い人が言う「面白い」って、“ワッハッハ”という笑いを基準にしているだけでなく、インスタグラムの「いいね!」とそんなに変わらないのではないでしょうか。「にゃんこスター面白い!」は、「笑える」ではなく、「いいね!」の感覚に近いのではないかと思います。

瀬沼文彰(せぬま・ふみあき)
桜美林大学講師。1999~2003年、吉本興業にてタレント活動をしていた経歴も。東京経済大学大学院コミュニケーション学研究科博士後期課程満期単位取得退学。専門はコミュニケーション学、若者論。著書に『なぜ若い世代は「キャラ」化するのか』(春日文庫)などがある。

最終更新:2017/12/17 19:00
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