仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

高橋真麻、テレビに出るために「不幸でいたい」戦略の落とし穴

2017/12/07 21:00

幸せになってしまうと仕事が減る

 真麻は表面上、テレビの二元論的価値観を受け入れる。テレビでは、「既婚者は独身より幸せ」「子持ちは子ナシより幸せ」で、「オンナ芸人はモテない」といった決めつけのもとに作られているが、真麻はこのルールに沿って、自分は「視聴者より下」であると印象付けることを、自らに課したようだ。ブログにぼっち飯を載せたり、交際中の彼氏とのノロケを書かないかわりに“うまくいっていないこと”をたびたびアピールするのは、一種の“サービス”なのだろう。

 11月30日放送の『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)に出演した真麻は、彼氏と結婚しない理由について聞かれると、「仕事が第一」「人は人の幸せに興味がない」「家族も仲良し、仕事も順調、新婚さんでラブラブになんて怖い」「だから、不幸でいたい」と話していた。幸せになってしまうと、視聴者にそっぽを向かれて、仕事が減ると考えているのだろう。

 お嬢さまなりに、一生懸命、世の悪意について考えたのだろうが、いかんせん、お嬢さまなので詰めが甘いというか、底が浅い。もし真麻が本当に「仕事が第一」なら、結婚して子どもを産む方がいいのだ。

 テレビが独身女性を不幸、結婚できないとイジるということは、テレビで働く真麻にとっては、仕事が増えることになるのでおいしい。しかし、この独身イジりには条件があり、「結婚できないはずがないから、笑える、イジれる」のである。具体的に言うのなら、「モテそうなルックス、職業である」「まあまあ若いこと」が条件であり、40歳以上の芸能人がイジられることは滅多にない(あるとしたら、井森美幸のように、とてもその年齢には見えない美しさを保っている場合である)。真麻は現在36歳。あと数年もすると、番組側がイジる対象でなくなる。今の営業方針では、頭打ちになる時が来るのだ。

 もう1つ、真麻の言う「人は人の幸せに興味がない」のは事実だろうが、不幸であればウケると言い切れるほど、視聴者心理は単純なものではないと私は思っている。

 バラエティの常連タレントたちは、年齢ごとに微妙にスタンスを変えている。例えば、HKT48・指原莉乃、フリーアナウンサー・田中みな実ら、20代半ばからアラサー世代に属する若いチームは、“自虐”で売っているが、真麻と同年代の女優・遠野なぎこや佐藤仁美は、自分の不幸経験をさらすことはあっても、“自虐”はしない。これは単なる偶然ではなく、意図的なものだろう。幸せを貯金と置き換えてみよう。若い時に、貯金がない(不幸である)の仕方ないことだが、ある程度の年齢になって貯金がない(不幸である)と、「何やっていたんだ」と言われるのと一緒である。

 真麻が本当に「仕事が第一」なら、テレビの世界が認定する幸せ、つまり“結婚して子どもを持ち”、悩みはあるけれど「まあまあ幸せ」を演出した方が、視聴者の気持ちはつかめると思うのだが。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、最新刊は『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2017/12/07 21:00
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