性感マッサージ師の手で、プロジェクト開始以来・初の快感を得た! けれど…

 長いこと、夢子は病気の原因である俺のことが大嫌いだった。だが子宮である俺を摘出することになったとき、ヤツはネガティビティにまみれたその認識を変えたいと思ったーーつまり、内面のパラダイムシフトが必要だと考えたんだな。このプロジェクトは、俺への認識をポジティブなものに上書きすることで、自分の心の在り方を大きく変えることが目的でもあるんだ。

*   *   *

 よう、また会ったな、子宮だ。

 その店は、年齢・BMI制限のない性感マッサージさんだった。ブログもやっていて、文章に好感がもてた。女性を性感マッサージすることに対してハァハァと興奮している空気がなく、どこか冷めたふうである。「クンニとは」「膣イキとは」と説教臭く語っていないのもよかった。

 なにより、本業は整体師さんらしい。まず最初に整体をしてから性感マッサージを施術するようで「●●さんの場合、ここの筋肉を緩めればもっと感じやすくなる」などとブログに書いてある。整体なら腰痛でちょくちょく行くことがあるからなじみがあるし、どうせ体を預けるなら筋肉や骨格の知識がある人がいい。万が一、性感マッサージがハズレでも、ふつうの整体を受けたと考えれば、精神的にもラクだろうし。

 手術があるので2週間以内にアポをとれればありがたいと予約メールに書いたところ、早々に返信があり、翌日に施術可能だという。まさかそんなに早く予約できると思っていなかったので、手持ちのお金がなく、夢子は焦った。明日マッサージにかかるのであれば定期預金を解約せねばならない。今日は金曜日、夕方の5時を回っている。たしか定期に関するATM操作は、平日しかできないはずだ。

◎すぐに予約しなきゃ!

 もうダメか? それともATMはまだやっているのか!? 夢子は慌てふためき、ネットでATMの営業時間を検索、まだ1時間ほどやっていることを確認した。すぐさま通帳とキャッシュカードだけ手にもち、ノーメイク、ぼさぼさ髪のままATMに走った。

 自分がなにをしているのかよくわからなかった。アパートの階段を下りるときもふわふわして現実感がなく、転げ落ちないように気をつけた。

 いくら必要なのかが、わからない。性感マッサージの内容もぼんやりしているし、どのくらいの金額がかかるのかもはっきりしない。ああッ、こんな不明瞭な用途になけなしのお金を使うなんて! なんだか泣きたくなった。多めに引き出したお札を掴む手がじっとり汗ばむ。

 それでもゼイゼイ荒い息で部屋に戻り「明日、お願いします」と返信のメールを送った。

 すると、マッサージに望むこと・NG事項などを記入して事前に提出するアンケート、さらには性病検査の結果表まで送られてきた。丁寧なところだな、と夢子はすこし安堵した。

性感マッサージ当日、準備の段階から落ち着かず、拭いても拭いても夢子は全身から汗が噴き出すのだった。待ち合わせの最寄り駅には芋煮の芋のような数の人があふれかえっていた。

 緊張のあまり、夢子には離人症状が出てしまっているようだった。水中にいるかのように街の騒音がぼわーんぼわーんとおかしな反響をしているように聞こえる。うまく歩けず、何度も人にぶつかって痛かった。硬いはずのアスファルトの道路はぐんにゃりとした感触でしかなく、歩いても歩いても約束の場所になかなかつかない。

 やっとこさたどり着いた場所には、ウディ・アレンのような60代くらいの男性がいた。分厚い黒ぶち眼鏡をかけている。きっとあの人が性感マッサージ師さんだろう。そこで思い出した。自分はおじさん感のある男性が苦手だったということを。お金のことや、年齢・BMI制限など考えねばならない要素がたくさんありすぎて、すっかり忘れていた。だけどもう心も体も不安でぱんぱんに爆発しそうになっており、「前へススメ」以外のコマンドを夢子の脳は処理できなかった。

 お互いを認識し、「じゃあ行きましょうか」といわれた。夢子はぎくしゃくとウディさんの少し後をついて歩きながらも、めまいがしてまっすぐ歩けなかった。「あの、お仕事は……」とウディさんが口を開いた。夢子は身構えた。

「……お仕事は、座り仕事ですか?」

 てっきり職業を聞かれるのかと身構えていた夢子はほっとした。なるべく匿名の存在でいたかったからだ。喉がカラカラでうまく声が出なかったので、夢子は返答として、ヘッドバンギングのように首を縦に振った。

「そうですよね、骨盤がゆがんでますからね~」

 とウディさん。その語り口はのんびりとしている。見ただけで骨格のゆがみがわかるらしい。声が中性的なハイトーンだったことで夢子はすこし気持ちが安らいだ。おかげでようやく離人感がマシになってきた。夢から覚めたようにはっとして、初めて周りを見渡すと、そこは人通りの少ないラブホテル街なのだった。

 そのうちの1軒に入った。お風呂~整体を経て、性感マッサージという流れらしい。お風呂には、なぜかウディさんも一緒に入るという。絶対嫌なら一緒でなくてもよいが、同じ釜の風呂を浴びたほうが運動部の仲間のような連帯感が生まれ、リラックスして施術を受けられる、という理論だそうだ。この意識がぶっとびそうな状態が軽くなるのなら、と夢子は一緒に入浴することを選んだ。

◎一緒に入浴で至れり尽くせり

 お風呂でウディさんは母親のようにお世話してくれた。

「あっお湯熱すぎる? 今度は冷たすぎない? このくらい? 勢い、強すぎないかな? 大丈夫? ハイじゃあお体ながしますね~」

 夢子が「お風呂介護されるってこんな感じか……」と来るべき老いに思いを馳せていると、ウディさんが尋ねてきた。

「セックスしたくないわけじゃなかったでしょ?」
「いやあ、この10年くらい、性欲なかったですねー」

 夢子はウディさんの眼鏡以外は一糸まとわぬ姿をなるべく見ないように、浴室のあちこちに目線を泳がせたまま答える。

「ひとりではしてたんでしょ?」
「年に1回くらいでしょうか」
「えええええっ!」

 驚かれた。

(そうか、ひとりでするのが前提なのか。)

 夢子の場合、子宮内膜症でほぼ毎日出血があったし、自慰すると腹腔内の痛みが激しくなる。煩わしいことのほうが多いので、しないことが当たり前になっていた。具合が悪かったから欲求を感じたこともなかった。

(いろいろとないがしろにしてきたんだなあ)

 夢子は改めてこの10年の自分をふり返り、「性欲」という現象すら自分とは無関係と切り捨ててきたことに気がついて愕然とするのだった。

 家を出る前から汗でびちょびちょで不快だったので、お風呂から出るとさっぱりして人心地がついた。恐ろしい適応力も発揮されはじめ、ウディさんも自分も真っ裸なのがしごく当たり前のように思えるようにまでなっていた。ウディさんがいうとおり、一緒にお湯につかって生まれる安心感は馬鹿にならないようだ。

 まず整体の施術があった。ベッドにあおむけになった状態で足を交互に上げたり「ハイ、左右の足の長さが均一になりましたよー」という定番のやりとりもある、街の整体と同じものだった。ウディさんの話し方は、女性の看護師さんのようにやさしかった。夢子は肩こりや腰痛があるので、それだけでたいへん気持ちよくなり、うとうとし始めた。

 いよいよオイルマッサージでの性感マッサージである。こちらは頭が真っ白になるほど気持ちよく、何をされているかわからなくなるほどだった。快楽に任せてぐんにゃりとしているとウディさんが「ハイ、ここがポルチオですよ」と教えてくれた。

「おお、ここが!」

 さすがプロはポルチオがどこか知っているのだな! 夢子はどんな感覚に襲われるかわくわくと待った。

「どうですか、気持ちいいですかー?」

 ウディさんは俺(子宮)をぐいーとお腹側に押しながら聞いてきたが、夢子はなにも感じなかった。トイレに行きたくはなったけれど。

◎子宮を取るとイケないのか?

 「じゃあこれはどうですかー?」

 次に俺はウディさんの指によってぐいーと背中のほうに押されたが、これにも夢子はなにも反応しなかった。

 さきほどまで気持ちよさそうだった夢子がしーんとしているため、少しきまずい空気が流れた。夢子は教えを乞うた。

「子宮を取ると、イキにくくなっちゃいますかね?」
「子宮がなくなっても子宮でイケますよ。開発次第です」

 ウディさんはいった。

「子宮というよりは、女性は膣壁で感じるんですよ。性感が発達している人は、極端な話、腕をつつーっと撫でられるだけでもイケるんです。だからアンジェリカさんも今後、膣全体をもっと刺激していけば、膣でイケるようになりますし、つまりそれが子宮でイクってことなんです。

 なるほど、子宮摘出後も性生活をあきらめなくていいということだな。これを知ったら安心する女性はたくさんいるのじゃないだろうか。

 性感マッサージが終わり、別れ際、「応援してますよ。いい人が見つかりますように」といわれてびっくりした。こんなにやさしくしてもらっていいんだろうか。

 こうして夢子は、プロジェクトを開始後、初めて快感を得られた。と思いきや、家に帰ると嘔吐感がこみ上げ、口を押えたまま数日は寝たきりで吐き気と戦いつづけていた。

 うむ、親切でやさしい語り口ではあってもルックスが中性的ではない異性と素っ裸で時間を過ごすのは、こいつには精神的に無理なのだな。

 肉体的にも不具合が現れ、ばしゃーっと出血があった。横隔膜と骨盤のあたりがじくじくと痛む。まるで石臼で内臓をギリギリすり潰されているようだ。腹腔内で出血しているのだろうか、骨盤あたりが熱をもってだるく、不愉快極まりないのに、体は冷えて仕方ない。夢子は湯たんぽをかかえて震えている。

「そうだったわー、性的なことをするといつもこうなるのよワタシ。だから遠ざかっていたのよ。あーやだやだ、病気って!」

 上の口は手で下の口は生理ナプキンで押さえつつ、うんざりする夢子だった。

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