ドキュメンタリー番組レビュー

結婚できない男1000万人超、中国に見る「拝金主義」が染み付いた“婚活”が問うもの

2017/09/09 19:00
koukonjimain
NHK公式サイトより

 1979年から2015年まで行われた「一人っ子政策」によって、中国国内の男女比は完全に崩壊。農村部の女性の数は激減し、今、多くの男性が結婚難に陥っている。そして中国の政府系シンクタンクによると、2020年で一生結婚できない男性は1,000万人超と予想されている。

 そんな結婚できない中国人男性の婚活現場を取材したドキュメンタリーが放送された。タイトルは『光棍児(こうこんじ) 中国 結婚できない男たち』(NHK BS1、9月11日午後9時~再放送)。「光棍(こうこん)」とは「独身」という意味である。

 番組では、日本のほのぼのお見合いドキュメンタリーでは決して見られない、男女の駆け引きと心のズレ、また拝金主義に陥り、露骨な要求を突きつける女たち、そんな金目当ての女性に辟易しながらも愛を求める男たちを生々しく映し出していた。放送後、ネット上には「お金で男性が選ばれる時代なんて…」「愛とか恋の延長の結婚はなく、金、金、金。すべての価値観が金であることが切なすぎた」と中国の現状を悲観する声や、「日本もこんな格差社会になるんだろう」「日本だって所得問題で結婚躊躇する人が増えている。男女同数でも起こり得る事」「外国の話では済まされないと思う」と、この国とて同様だとする声など、既婚・独身、男女を問わず、さまざまな反応が上がった。

 本稿では、そんな番組に登場した3人の“光棍児”の姿を点描してみたい。

 見ず知らずの女性宅に突撃お見合い

 舞台は、甘粛省(かんしゅくしょう)慶陽。1人目は、コックをやっているという男性。お見合い相手に会うため、仲人に連れられて農村にやってきたが、その後の奇妙な展開をカメラはとらえていた。女性がすぐそばにいるのに、男性が話しかけることは一切許されなかったのだ。親の意向か女性の判断かはわからない。さらにはその後、彼らは外で待つように指示された。まるで「面接」の結果を待つように。1時間後、しびれを切らした男性が愚痴をこぼす。「交通費だってバカにならないのに、会うこともまともにできないなんて」。だが結局、色よい返事は得られなかったようだ。

 驚いたのは、外で待っているその間、男性の仲人が近隣の家に突撃訪問し、その親に「娘さんがいるなら見合いさせてくれないか」と交渉していることだった。見ず知らずの家にお見合いを掛け合うという行き過ぎた行為に、「手当たり次第やるもんじゃないでしょ」と当の男性は呆れていたが、仲人は「向こうの親父がいいって言ってんだから」となぜか鼻息が荒い。自分の仕事はとにかく結婚させること、と割り切っているのだろうか。

 押しかけた先の父親からその後、残念な返事が返ってきた。「実はさっき遠くから娘が彼を見て『会いたくない』って。『背が低いのが嫌だ』とさ」。仲人は「ちょっとでも会ってくれませんか」と泣きつく。「本人が嫌がってるんだから無理だ。親父の言うことなんか聞きやしない。『お見合いしたいなら父さんがすれば』って言われたよ」と父親もお手上げだ。

 「会った瞬間にそっぽを向いて帰る女はしょっちゅう」

 2人目は、リンゴ農家の三男で、現在は長距離バスの添乗員をしている楊瑞卿(よう・ずいきょう)42歳。自分の家にお見合い相手の女性が訪ねてくるとあって、居住まいを正す楊さん。電動カミソリで念入りにひげを剃り、靴を磨いている。さらに料理を作る母親に、「おふくろ、豆腐は細かく切ってね。量が多く見えるからさ」とお願いしている。そんな言葉がいじらしくもあり、哀しくもある。

 楊さんは過去十数年で20回以上はお見合いをしている“達人”だ。「会った瞬間にそっぽを向いて帰っちゃう女もいたよ。しょっちゅうだよ」。だが、彼はそんなことは慣れっこだという。「見た目が良くないからさ。はげてるし」。彼の頭はつるっぱげだ。

「ちなみにいい写真があるけど見る? 結構気に入ってるんだ」

 そう言って、長さ数センチの小さな写真を見せてくれた。「ちょっと修正してもらったんだ」と話すそこには、あろうことかフサフサの髪の毛を頭に合成した楊さんの姿が……。

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