仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

壇蜜、卑猥な「宮城県PR動画」中止を釈明――男根主義的すぎる『サンジャポ』の愚かさ

2017/08/31 21:44

 アクセスが増えたという意味では成功だろうが、観光という意味で考えれば、完全に失敗だろう。確かに男性ウケはいいかもしれない、しかし、家族の前で「お父さん、壇蜜の動画見たら、宮城に行きたくなっちゃった」と言える男性はいるだろうか。たっかいお金、しかも復興予算を使ってこんな動画を作るのは、“宮城県にはこんなに知性の低い人間しかいない”と喧伝するようなもので、はっきり言ってイメージダウンである。そもそも、宮城県が夏でも涼しいことをアピールするのに、壇蜜の妖艶さは不必要だと思う。それを理解しないのが、男根主義というやつなのだ。デスクの上にヌードカレンダーを飾っている人が、それを撤回しなかったのと同じように、「男根が反応するものは、正義」なのである。

 騒動は、壇蜜にも飛び火する。8月27日放送の『サンデー・ジャポン』で、西川が「性的な表現に違和を感じなかったのか?」と尋ねると、壇蜜は「壇蜜というタレントを選んでもらったお仕事として、できる限りのことをやった」「これはいいとか、おかしいとか思ってはいけない」とコメント。企画に口を出すのは自分の仕事ではない、プロとして仕事をまっとうしたと正論で返したが、はからずもこれは、男根主義者が大好きな「男に逆らわないのが、いい女」というセオリーを踏襲している。

 男根主義の同番組で、この問題を話し合っても答えなど出るわけがなく、最後はMCの爆笑問題・太田光が「悪ノリして、怒られるくらいまで(宮城県民が)元気になったってことだよね」とまとめた。

 今では、東日本大震災で被災した地域のことを、ニュースが報じる機会は減った。被災地を実際に訪れる人も少ないだろう。私もその1人だが、多くの親戚が宮城県に居住している身として言わせてもらうと、「宮城県民が元気になった」というのは、県民をバカにしすぎではないだろうか。被災した人もそうでない人も、宮城県民は元気なはずである。なぜなら、国があてにならない以上、自分たちがしっかりするしか方法はないからだ。

 テレビの女性差別は今に始まったことではないが、震災の被害を受けた弱い立場の人をもバカにする。男根主義者にとっては、女体だけではなく、他人の不幸な出来事も“興奮材料”の1つでしかないように思えてならない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、最新刊は『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2017/08/31 21:46
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