知られざる女子刑務所ライフ19

ポン中だって“白馬の王子”に夢中! 女囚たちの愛読書は「ハーレクイン・ロマンス」

2017/08/27 16:00

nakanorumi19 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■獄中はヒマなので、本も読みます

 今年の夏は、7月は暑かったけど、8月の朝晩は寒いくらいの時もありましたね。ホンマお天気だけは、どうしようもないですね。

ムショや拘置所といえば「夏は暑くて冬は寒い」場所の典型で、とにかく夏は暑かった記憶しかありません。布団敷いて寝てるのに、朝には布団の下の畳が汗で濡れてしまうという始末……。毎夏に貸与されるうちわでパタパタとあおぎ、暑い空気をかき回していたものです。それでも女子刑務所はマシなんですよ。男子刑務所は、よく死人が出ないなあという感じです。

 そして、涼しくなってくると、「読書の秋」がやってきます。シャバでは本どころか文字が読めないようなレベルのコたちが、ムショでは必死に字を覚えることも珍しくありません。まあ塀の中は「とにかくヒマ」だからなんですけどね。

 本は、基本的に親族などからの差し入れに頼ります。届いた本は、本来「規律違反」なんですが、同じ房のコたちにも貸してあげて、みんなで読んでいました。施設内には「官本」(かんぼん)といって、備え付けの本もあります。これがまた昭和時代の本ばっかりで、めちゃめちゃ古くて汚かったですね。

■「実話ドキュメント」は、みんな読んでたのに……

 今年はついに「実ドキュ」こと「月刊実話ドキュメント」(マイウェイ出版)の休刊が発表されました。ヤクザを扱う雑誌を作っている会社には銀行がお金を貸してくれないのだそうで、それも失礼な話ですけどね。

 女子刑務所では、「実話時報」(竹書房/こちらもとっくに廃刊)や「実話時代」(三和出版/こちらは健在)などよりも「実ドキュ」のほうが人気でした。企画も組織(暴力団)の人事は少なめで、結構、読者目線だったんです。

 特に、「拘置所通信 塀の中からの真実の叫び」はみんな読んでいて、私も投稿して掲載されたことがあります。接見禁止処分を受けている時などは、弁護士に頼んで投稿してもらえることも人気の秘密でした。まあ内容は結構しょうもないんですが、それでもうれしかったです。

 あとは、「出すに出せない一通の手紙 塀の中のあの人へ…」も好きでしたね。当時の彼からの励ましの手紙が掲載されていたことがあって、「いつまでも待ってる」とか書かれて、もう泣いちゃいましたね。

 当事者にしかわからへんように「○○の□□ちゃんへ」みたいに書くんです。それと、巻末の「逮捕者一覧」に知り合いが出ているかどうかも、いつもチェックしてました。「うわー。○さん、殺人教唆ってアカンやん」みたいな(笑)。こういう実話系の雑誌は、広告もおもしろいのが特徴でしたね。ハゲやED(勃起不全)の薬とか、スタンガンとか防弾ベストとか催涙ガスとかが普通に並んでるんです。

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