[官能小説レビュー]

谷崎潤一郎『卍』に見る、女同士のセックスシーンを彩る「嫉妬」と「羨望」という感情

manji

 昔の文豪たちが書く作品には官能的で美しいものも多い。中でも江戸川乱歩や谷崎潤一郎は、耽美作品を多く手がけたことで有名だ。“和のエロチズム”が表現されている彼らの作品は、現代の官能小説とは一味違った味わいがある。

 今回ご紹介する『卍』(新潮社)は谷崎潤一郎の代表作である。主人公の園子が「先生」と呼ぶ人物に対し、かつて自分が溺れた恋愛を振り返りながら告白するという構成だ。

 弁護士の夫・孝太郎を持つ資産家の娘・園子は、結婚したものの、まだ子どもがおらず時間があったため、美術学校へ日本画を学びに通い始めた。

 園子は、授業で観音像を課題に出された際、とある女性の顔に似せて描く――それは、同じ美術学校に通う美しい女性、光子であった。光子は園子とは対照的な女性だ。和服が主流であった時代において、光子は常に洋服を着て、自由奔放に生きていた。そんな彼女に対して、園子はあこがれを抱いていたのだ。

 観音像を光子に似せて描いたことがきっかけで、園子と光子は同性愛の関係なのではないかというウワサが広まってしまう。すると光子は、どうせだったら本当に仲良くなろうと園子に提案をする。

 園子は、観音像の絵を完璧に光子に似せるために、光子を自宅の寝室に招いて、裸になってもらい、そこで2人は結ばれる。以来、手紙や電話でやりとりするようになり、園子は光子に夢中になるが、ある日、光子には栄次郎という婚約者がいると知る。自分以外の人物、しかも男と寝ていることを知った園子は激しくショックを受けるが、結局光子とよりを戻してしまう。

 一方で、夫の孝太郎と園子の仲がこじれたことから、光子は睡眠薬を使って心中するフリをしようと園子に持ちかける。しかし、その提案には別の目的があった。光子は、自分の睡眠薬は少なめにし、園子よりも早く目覚めるように仕向ける。そして、駆けつけた孝太郎を騙して、園子が眠る隣で2人は関係を持つのだった――。

 後半は、園子と光子の間に孝太郎が入り、こじれた三角関係が描かれているが、私はやはり、2人の女性が交わるシーンの艶めかしさに注目したい。

 容姿はもちろん、肌の質までも美しい光子と、そんな彼女に“嫉妬しながらも強く惹かれる”園子のベッドシーンは、同性同士だからこその感情が入り乱れ、震えるほど魅力的に描写されている。

 また、本作のような昔の作品には、現代には少ない“着物の質感”などを織り混ぜた、和文化ならではの、しっとりとした濡れ場の描写も多く盛り込まれている。さらに“仄暗い照明”しかない時代だけに、肌や髪の質など、視覚以外から得るエロスが綿密に表現されており、読み手のイマジネーションを掻き立てるのだ。こうした雰囲気の中で描かれるセックスシーンも、本作の見どころである。
(いしいのりえ)

やっぱり谷崎潤一郎でいい意味で狂ってるおじいちゃん

しぃちゃん

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