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東名高速観光バス事故、被害者への賠償は誰が払う?

2017/06/13 16:27
toumeibus
東神観光バス株式会社公式サイトより

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東名高速観光バス事故、被害者への賠償はどうなる?

 6月10日午前、愛知県新城市の東名高速道路で、東神観光バスが運行していた47人乗りの観光バスに乗用車が衝突し、バスの乗客ら45人が重軽傷を負った。乗用車は中央分離帯を乗り越えて反対車線に飛び出した後、バスに衝突。乗用車を運転していた男性は死亡が確認された。この事故の場合、過失はどちらにあったと考えるのだろうか? また、被害者への賠償はどうなるのだろうか? アディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に聞いた。

「観光バスの運転手がどのような運転をしていたのか、ハッキリとはわかりませんが、反対車線から車が突っ込んでくるという可能性は、通常考えられないでしょう。バスの運転手に大きな過失はなく、被害者であるという考え方で問題ないと思います。乗用車がセンターラインのオーバーだけだったとしても、基本的に過失0:100でバスが過失0となります。まして、オーバーした上で中央分離帯を飛び越えてきての衝突ですから、なおさらバスに過失がつくとは考え難いです。ニュース映像にも使われているバスのドライブレコーダーに鮮明な記録として残っているので、こういう記録も過失の有無についての検討材料になると思います」

 この事故でバス側の運転手をはじめ、乗客も重軽傷を負った。人数や規模から、賠償額はかなり高額になると予想されるが、誰がその賠償責任を負うのだろうか?

「通常、車を運転する際には任意保険(法律で加入が義務付けられている自賠責保険に対して、自ら加入する保険)に加入していますので、その保険会社から治療費や慰謝料などが支払われることになるでしょう。つまり、この事故の場合は、過失100となる乗用車の運転手側の保険から、乗客の治療費や慰謝料、バスの修理代や、その間に営業できなかったことに対する補償も、賄われることになります。被害者の人数と事故の規模から、かなりの高額になることが予想されます。ただし万が一、任意保険に加入していなかった場合、自賠責保険では十分な補償を受け取ることができなくなる可能性もあります」

 バスの運転手は、衝突直前に左にハンドルを切り衝突を回避したと報じられている。乗客に怪我人こそ出たものの犠牲者が出なかったのは、不幸中の幸いといえるかもしれない。運転する人は注意が必要なのは言うまでもないが、思いがけない事故も起こる前提で任意保険に加入したほうがよさそうだ。

アディーレ法律事務所

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最終更新:2019/05/21 20:03
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