「ゴムを使ってほしい女がうまく男をその気にさせる方法」100通りを記したリーフレットが表す、男女間・セクシャルマイノリティの不均衡

5月31日の朝日新聞で、厚生労働省が『ゴムを使う100の方法 女子のための the 100 ANSWERRS』という女性向けリーフレットを作成・配布していることが報じられました。ゴムってコンドームです。コンドームって基本、男性の性器に装着して使いますよね。セックスによる望まない妊娠や性感染症を避けるため、皆さん使用した経験があると思います。でも、厚労省が用意したリーフレットは、なぜか女性限定で、しかも内容は、ざっくりいうと“ゴムを使ってほしい女がうまく男をその気にさせる方法”100通り。それだけです。え、男はそもそもゴムを使いたくないので女がその気にさせる、って前提……? 私は不快感や違和感を覚えました。

◎ゴム使用は女性だけの悲願なのか?
コンドームは、避妊効果としては不確実な面がありますが(理想的な使い方をしていても2%は妊娠するので)、性感染症予防には必須アイテムです(コンドームでは予防できない性病もありますが)。一時期、女性用コンドームが売り出されたりもしましたが、装着が難しかったり価格が高かったりで浸透せず、現在女性用コンドームを製造している日本メーカーはありません。ネットで輸入物を購入することは可能ですが、日本人女性の身体にマッチしないことも考えられます。現状、性感染症を予防するには、男性がコンドームを使うしかないわけです。

厚生労働省が定める今年の「HIV(エイズウイルス)検査普及週間」は6月1日~7日。厚労省のエイズ対策研究事業の一環として、宝塚大学看護学部の研究班によって作成されたという今回のリーフレット『ゴムを使う100の方法 女子のための the 100 ANSWERRS』は、インターネットで集めた20~30代女性の“避妊具をつけてほしいことが男性にうまく伝わった体験談”を元に、100の方法をまとめたもの。ネットで無料ダウンロードできるということで、私はダウンロードのうえ精読しました。率直に申し上げて、わざわざ予算を設けて全国の若い女性たちに向けて配布するべき内容とは思えませんでした。女性誌やweb媒体がさんざん書いてきたネタを寄せ集めたものに近いです。

はっきりお断り系(例「つけなきゃダメ!」)、言い方や雰囲気を工夫する系(例 お互いにナチュラルな感じで「つけよっかー」)、沈黙のガード系(例 寝たふりをする)、妊娠のこと理由にする系(例「妊娠したら責任とれるの?」)など、8つのカテゴリーに分けて紹介されているのですが、どれも似たり寄ったり。そもそも女性が男性にゴムを使ってもらう方法を100も提案してどーすんだよって感じです。女性が望まない妊娠や性病感染を避けるために、男性にコンドームを使ってもらえるよう試行錯誤するという図式に心底、嫌悪感を覚えます。では男性は、妊娠させることや性病感染を避けるために自発的にゴムをつけようとは思わないのでしょうか? そんなことはないはずです。割合は不明ですがつける男性は大勢います。つけない男女が問題なのです。

◎HIVはゲイと女が気をつければ防げる?
『ゴムを使う100の方法』の狙いは、若い女性の性感染症に対する意識を高めたいこと、望まぬ妊娠で苦しむ女性を減らしたいことなどがあるでしょう。ゴムを使うべきだという知識があっても、いざそういう局面、つまり男性が予防に消極的でコンドームを使おうとしないとなると、女性から使うことを求めるのは勇気がいるだろう、そんな時これを参考にしてね、100の方法の中から男性がうまく応じてくれそうなやつをチョイスしてね! と。性病患者が増えるのは医療費掛かるし困るけど、若者(女性?)がセックス嫌い・セックス離れを起こすと少子化に拍車がかかってそれはそれで困る……! と、危惧した厚労省が、コンドームつけない男性の機嫌を女性にうまく取ってもらえばいい!と思いついたのか知らないですけど、パートナーにお伺いされなきゃコンドームを使えないような幼稚な男性の面倒を女性に押し付けないでほしいです。

『ゴムを使う100の方法』今回のリーフレットはつまり、女が一枚上手になればいい、女がうまくやれ、女が男を手のひらで転がせ、という女性への要請です。「実際にそうやって私は男を転がしてきたのよ、あなたもうまくやりなさいよ」と言う女性もいるでしょう。しかしそれで良いのでしょうか。男性にコンドームを使ってもらうために女性がうまくやる必要も義務もないと思います。性感染症予防はセックスする人の義務であり、男性が危機感を覚えなければ事態に変化は望めません。たとえば昨今、梅毒の若年層女性への流行が頻繁に報じられていますが、主に男女間の性行為で流行する性感染症を、どちらか一方の性別への警鐘で防ぐことは不可能ではないでしょうか。

『ゴムを使う100の方法』には、男性にコンドームを使ってもらう方法は書かれていても、リスクがあるのにコンドームを使わない男性はおかしい、とは書かれていません。女性はコンドーム使用を求めているけど男性は生でヤりたい。その状況でおこなわれるセックスって合意なんですかね? また、コンドームを使うのが男性である以上、女性がいくら頭を捻って男性に働きかけたところで、男性自身にその気がなければきっとどうにもならないケースだって存在するでしょう。そういった場合にどうすればいいのか、『ゴムを使う100の方法』では一切触れられていません。どうにもできなかった女性に責任が生じるのでしょうか。コンドームを使ってくれなかったのは私の伝え方が悪かったからだと、女性が受け止めてしまうリスクだってあると思うのですが。

避妊や性感染症予防についてのあれこれを男性のみに委ねるべきではないですし、逆に女性のみに委ねるべきでもありません。セックスは相手のいる行為であり、双方の合意と責任のもと行われるものであるはずです。今回、女性向けリーフレット『ゴムを使う100の方法』が配布されているという話を耳にしたとき、私が真っ先に思ったことは「女性向け? どうして?」ということでした。しかし補足すると、実は “女性向け”とつけない「使いたいと思っているけど、ちゃんと使えない人のための…『ゴムを使う100の方法』」というリーフレットも作成されています。こちらも読みましたが、同性愛男性向けです。

なぜ同性愛男性向けだったり、女性向けだったりになってしまうのでしょう? もちろんこれらがまったく必要でないとは思いません。ですが、異性愛男性を「我関せず」の状態に導くようなこのやり方、果たして正しいといえるでしょうか。HIV予防は、コンドームは、全てのセックスをする人に必要ではないのですか。次は異性愛男性への指導もしっかり、お願いします。

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