[官能小説レビュー]

同性愛や売春も……250年前の官能小説『ファニー・ヒル』に見る、セックスへのたくましい想像力

fanihiru
『ファニー・ヒル』(河出書房新社)

 官能小説の面白いところは「セックスを物語で表現する」という実に単純明快なルールの上で書かれているところである。

 筆者がよく聞かれるのは「恋愛小説と官能小説の違いは?」という質問だが、この答えは簡単だ。恋愛小説の目的は“恋愛”であって、官能小説の目的は“セックス”である。最近では、この境界線が非常に曖昧になっていて、読者の受け取り方に委ねられる部分もあるが、それだけ“官能小説”というジャンルが、さまざまな手法でつづられるようになったということではないだろうか。

 官能小説、かつては性愛文学と呼ばれていたジャンルが誕生したのは、実に250年以上前に遡る。今回ご紹介する『ファニー・ヒル』(河出書房新社)がそれに当たる。

 舞台はイギリス・ロンドン。タイトルと同名の15歳の少女・ファニーは、美しい容姿を持つ貧しい田舎娘である。ひょんなことから彼女は故郷を離れてロンドンへ移り住むが、仕事や住処を提供してくれるとアテにしていた女性は何の世話もしてくれず、その代わりに、品の良い格好をしたブラウン夫人に声をかけられ、彼女についていくことになる。

 「あなたは私の話し相手として雇われた」と夫人に告げられたファニーは、その夜、屋敷の女支配主であるフィービーにベッドの中でキスをされ、体中を触られる――彼女は、ブラウン夫人に騙されて売春宿に雇われたのであった。

 まだ処女であったファニーは、フィービーやほかの売春婦たちからセックスの話を聞き、想像を膨らませる。また、ブラウン夫人がセックスをする様子や、売春婦の“仕事”を覗き見しながら、次第にセックスや男性に対しての欲望を膨らませるようになっていく。

 そんなある日、彼女は美しい青年のチャールズと運命的な出会いをする。すぐに2人は恋に落ち、ファニーはブラウン夫人の売春宿を抜け出して、チャールズに処女を捧げるのだった。

 彼はファニーが処女であることに驚きつつも喜び、アパートを用意して、ともに生活を始める。しかし、2人にとって極上の幸せを1年ほど過ごしたある日、父親に騙されたチャールズは外国へ行くことになり、2人は引き裂かれてしまう。

 この先どう生きればいいのかと、路頭に迷っていたファニーに、とある男の愛人になる話が持ち込まれる。こうしてファニーは安定した生活を手に入れたが、彼がメイドと関係を持つ場面を目撃し、復讐しようと企てる――。

 本作のように、金のない田舎娘が身ひとつで愛と、そして金も手に入れるというシンデレラストーリーは、250年も前からの定番であったことがわかる。そんな主軸であるストーリーの面白さはもちろんのこと、特筆すべきは、ファニーとチャールズの男女のノーマルなセックスの様子から、ファニーが汚らしい初老の男に嫌悪を感じながらも体を買われるシーン、また、屋敷の支配主の女性・ファービーとファニーの、いわゆる“百合”の関係も描かれていて、非常にさまざまな要素のセックスが描写されている点である。

 まさに、現在の多種多様な官能小説の原点ともいえる、セックスへの想像力が詰まった本作。ぜひご一読いただきたい。
(いしいのりえ)

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しぃちゃん

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