演技も好評らしいけど……

ブルゾンちえみの「パクリ疑惑」は著作権侵害に当たるのか? 弁護士に聞いてみた

2017/04/14 13:54
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ブルゾンちえみ公式プロフィールより

 4月13日からスタートした新ドラマ『人は見た目が100パーセント』(フジテレビ系)で女優デビューを果たした、お笑い芸人のブルゾンちえみ。桐谷美玲、水川あさみ、とともに女子力を求め奮闘する「理系女子」を演じているが、ドラマにも自身の「探さない、待つの」というネタが使われていた。

 そのブルゾンちえみに「パクリ疑惑」騒動が起きている。ネタが、占星術師Keiko氏の著書の一部に酷似しているというものだ。4月6日発売の「週刊文春」(文藝春秋)では、ブルゾンちえみ自身との一問一答が掲載され、本人は、「Keikoさんとは直接会ったことはないが、今回の騒動で怒るような人ではない」、「盗作ではなくインスピレーション」と述べているが、著作権侵害に当たらないのだろうか? アディーレ法律事務所の島田さくら弁護士に聞いた。

 類似しているとされているのは次の2点。ブルゾンちえみの「花は自分からミツバチを探しに行きますか? 探さない。待つの」「もし、その彼が本物の運命の相手なんだったら、あなたの細胞ひとつひとつが喜びのサインを出しているはずよ。細胞レベルで恋してる?」というネタが、Keiko氏の著書にある「探すんじゃない、準備するの。花は自分からミツバチを探しに行ったりはしないでしょ?」「その人がホンモノであれば、あなたの六〇兆個の細胞がこぞってこう叫ぶはず。『YES、he is!!』」という部分に似ていると指摘されている。

 まず、この種の話題で使われる言葉としてオマージュと盗作があるが、この境界線を島田弁護士は次のように説明する。

「『オマージュ』というのは、単に人の作品をまねて表現するのではなく、作者や作品に対する尊敬の意を込めて似た表現をする場合に用いられる言葉です。『オマージュであればなんとなく許されるのでは?』と思う方もいるかもしれませんが、日本の著作権法上、オマージュという表現や考え方は出てこないため、オマージュであれば特別扱いされて著作権侵害に当たらないということはありません。オマージュと主張しても、盗作の場合と同じく、既存の著作物をまねて、その特徴を維持しつつ新たな創作物を作ったかどうかという観点から、著作権を侵害しているかどうかが判断されます」

 では、もしKeiko氏が訴えた場合、ブルゾンちえみが実刑に問われることもありうるのだろうか?

「今回問題となるのは、著作権のうちの翻案権というもので、漫画を映画化する場合のように、著作物の大筋を残したまま改変をする権利です。判例によると、翻案にあたるかどうかは、『既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得』できるかどうかにより判断されます。

 ブルゾンさんの2つのネタのうち、『花は自分からミツバチを探しに行きますか? 探さない。待つの』の方は、Keikoさんの著作の本質的な特徴を直接感得できるものといえそうですが、『もし、その彼が本物の運命の相手なんだったら、あなたの細胞ひとつひとつが喜びのサインを出しているはずよ。細胞レベルで恋してる?』の方から、Keikoさんの文面、また著書を想起するのは少し難しいように思います。後者のネタについては、ブルゾンさんが利用したのがKeikoさんの『表現』ではなく『アイデア』だとして、著作権侵害とならない可能性が十分にあります。

 著作権法は、あくまでも創作的な表現そのものを保護しているのであり、その背後にあるアイデアを保護するものではないのです。仮に、ブルゾンさんがKeikoさんの翻案権および、著作物を改変する権利を侵害しているとして、ブルゾンさんが訴えられたとしても、ネタの披露の差止めや金銭で話がつくでしょうし、刑事事件化されて実刑というのは考えにくいと思います」

 この騒動に関し、Keiko氏は特に気にしていないような反応を示しているというが、ブルゾンちえみが同じネタを使い続けるのか、今後、注目を集めそうである。

アディーレ法律事務所

最終更新:2017/05/09 20:53
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