ZOZOTOWNのCMに震える。吉岡里帆さんの美貌と演技に騙されないで! ツケ払いの先に幸せな未来はありません。

2017/04/10 20:00

こんにちは! ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。先月、私の著書が発売されました。タイトルは『家計簿不要!お金がめぐる財布の使い方 財布の中に神棚を!』(永岡書店)。今回のテーマ「ツケ払い」に通ずる部分も多く書かれていますので書籍の方も読んでみてほしいと思います。

さて、私はあるテレビコマーシャルを見てガクブルと怒りと落胆が入り混じった感情になりました。それはドシャブリの雨に打たれた吉岡里帆さんが、画面に向かって「好き」だの「2カ月も待てない」だの真剣に迫ってくる超人気ファッション通販サイトZOZOTOWNが始めた「ツケ払い」をアピールするCMです。ドラマチックな雰囲気と美しい容姿に思わず見入ってしまうのですが……ちょっと待ってよ、ZOZOTOWNさん、「ツケ払い」って本気で言ってる!?

◎上手に使えばスゴいファッション通販サイト

スマホを持っている女性なら利用したことのない人の方が少ないのでは? と思うほど普及しているファッション通販サイトZOZOTOWNさん。

あちこち出向いて探し回らなくても、「ブルーのスカートが欲しい!」と思ったら、各種ブランドを一瞬で検索して一覧表示でき、お値段を安い順に並べられて、気になる服を比較するのも自由自在。うまくいけばクーポンもあるし、4,999円(税込)以上なら送料無料です。クレジットカード決済なら手数料もかかりません(各種分割払いならカード会社への手数料はかかります)。

わざわざ出かける準備をして電車や車に乗っていろいろなショップを歩き回らなくても、パソコンやスマホだけで用が足りてしまいます。それどころか、ハッキリと目的を持って買い物をすれば、目に入った余計なものを買うこともなく、欲しいものだけで済ませることもできるのです。電車代も、お買い物に付き物のランチ代もお茶代もかかりません。上手に利用すればとても便利で使い勝手の良いサイトです。私もしばしば買い物をしますし、見るだけでも楽しいので、ZOZOTOWNさんのサイトは頻繁にチェックしています。

◎まさかの「ツケ払い」推し?!

冒頭で紹介したCMを目にした人も多いと思います。あのCMを見たら、「ツケ払い」に悪くないイメージを、いや、むしろ吉岡さんの演技によって、もっとポジティブなイメージすら持ってしまうかもしれません。

CMってスゴい……女優さんってスゴい……でも、「おいコラ、ツケ払いって何なのよ!」といろんなため息が出てしまいました。

ZOZOTOWNさんによると、2カ月後までの支払いをOKとする「ツケ払い」は、

安心:商品の中身を確認してから支払いができるので、「初めての方でも安心」
便利:給料日前でのご注文、ご都合のよいタイミングでのお支払いが可能

といった説明がザックリされています。要するに、モノが届いてもすぐに支払わなくても良い、ということ。「安心」&「便利」だなんて、全人類にとって最高の組み合わせに感じるじゃないですか……。

しかし本連載の読者の皆さんには、これらの全てに疑問を持ってほしいです。

「どうして2カ月も待ってくれるの?」
「なんで高いお金をかけてCMまで作ってツケ払いを推すの?」

会社が儲からないことをするはずがありません。儲かる算段があるからこそ、CMに経費をかけるわけです。会社が儲けようとすることは当然のことですが、利用者にとってはどうでしょうか。便利に感じて利用してもその裏にたいへんな危険が隠れている可能性もあります。「ツケ払い」はそんな危険性を持つものだと私は思っています。

◎うら若き女子がツケ払いなんて、やめて…

私はまず「商品の中身を確認してから支払いができる」という点にツッコミを入れたいです。どこにそんな理由でツケ払いを利用する人がいるんでしょうか!? ツケ払いをするのは、「商品の中身を確認したい」のではなく、「お金がないのに欲しいから」に決まってるじゃないですか。わざわざ手数料を払って問題をどんどん先送りしているだけですし、2カ月後に突然お金持ちになる人はほぼいません。その月に少し楽をしたいがために、ツケ払いをしたら、2カ月後はもっと苦しくなる可能性が大きいです。

そもそも「ツケ払い」というのは、近所のなじみの店などに「信用」と「実績」があるからできる現金の後払い制度。もっというと、身元のわかっている調子のいいオッサンとか、テキトーなオバハンが近所の店で活用するものです。そして、「信用」と「実績」でツケ払いをしていても、お店側がお金を回収できなかったというトラブルや、「あの人、ツケだって。だらしないんじゃないの?」なんて陰口も昔から付き物です。実際、ZOZOTOWNでもツケ払いには与信審査といって信用や実績を確認する調査があります。与信審査をクリアしないと利用できません。いずれにせよ、お金に関して無傷の若い方の口から「ツケ」なんて絶対に聞きたくない言葉です!

そして、そのファッションでどこに行くのでしょう。デート? 合コン? まだお金を払っていない服でオシャレでかわいく着飾った女性を喜ぶ男性なんて、おバカに決まっています。その日は騙せても、まともな男性なら、いずれお金の使い方に問題があることに気がついて、去っていくのではないでしょうか。

ツケ払いを利用したいと思っている読者にとっては、厳しいことをビシビシ書いてしまったかもしれません。でも、ツケ払いを利用して幸せな未来が待っている可能性は限りなくゼロに近いことをぜひ知っておいてください。それどころかマイナス、深い傷を負ってしまう可能性の方が高いです。軽い気持ちで利用して癒えない傷を作ってしまわないように願っています。

■川部紀子
1973年北海道生まれ。ファイナンシャルプランナー(CFP® 1級FP技能士)・社会保険労務士。大手生命保険会社のセールスレディとして8年間勤務。その間、父ががんに罹り障害者の母を残し他界。親友3人といとこも他界。自身もがんの疑いで入院。母の介護認定を機に27歳にしてバリアフリーマンションを購入。生死とお金に翻弄される20代を過ごし、生きるためのお金と知識の必要性を痛感する。保険以外の知識も広めるべくFPとして30歳で起業。後に社労士資格も取得し、現在「FP・社労士事務所川部商店」代表。お金に関するキャリアは20年を超えた。セミナーに力を入れており講師依頼は年間約200回。受講者も3万人超。テレビ、ラジオ、新聞等メディア出演も多数。

最終更新:2017/04/11 12:55
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