【連載】知られざる女子刑務所ライフ9

100人の女が全裸でシャワーの取り合い!?  女子刑務所の入浴は「仁義なき戦い」

2017/04/10 16:00

刑務官が辞める理由も「いじめ」

 話が横にそれちゃいましたので、戻しますね。

 報道だと、刑務官が早く辞める理由は「産休や育休が取りにくい」とか、「受刑者への対応の難しさ」となってますが、違います。そういうのもないとは言わないけど、辞める一番の理由は、刑務官同士のいじめだと思います。だって、すごかったですもん。

 刑務官の中に「派閥」があって、ボス的な存在が何人かいて、それぞれの派閥に分かれています。それだけならまだしも、それぞれの派閥に可愛がられている懲役たちがいるんです。これは、すべて「女性」の話です。念のため。オンナの園で起こっていることなんです。ちなみに女性の刑務所には男性刑務官も少しはいて、所長は男性のケースも多いです。そして、男性の刑務所に女性はいないです。いろんな意味で危険すぎますからね。

 そして、懲役の私たちも立場上、どこかの派閥に属さないとあかん雰囲気なんですね。かわいがってくれる先生の派閥に入るんです。つまり刑務官同士の勢力争いが受刑者のプレッシャーになっていました。刑務官は24時間体制ですから、自分の「敵対派閥」の刑務官が当直の日は特にタイヘンでした。誰かと目を合っただけで「今、合図したやろ?」とか、どうでもいいことでチェックされるんです。

 確実に先生が間違っていても「先生、それちゃいますやん?」なんて、口答えしようものなら大騒ぎです。「担当抗弁!」(刑務官にタテついたということです)とか叫ばれて、ほかの刑務官も走ってきます。こんなふうに、ちょっとしたことで「注意処分」を受けてしまったりしました。

 注意処分を受けると、翌朝の業務の引継ぎの時に自分を可愛がってくれている刑務官がハンメ(反目)の刑務官に叱られてしまうんです。なので、かなりピリピリしていました。それに、この注意処分を受けてしまうと、「進級」にかなり響きます。

 実は懲役にもランクがあるんです。マジメにやっていると、手紙や面会の回数、仮釈放の時期などで優遇してもらえるんですよ。さらには、慰問や記念日の集会で配られるお菓子にも影響します。注意処分を受けてしまうと、このお菓子をもらえなくなってしまうんです。

 私も半年間もらえなかったことがあります。こんなバカバカしい派閥争いのおかげで、何度お菓子を食べ損ねたことか……。数えるとキリがないです。今思い出してもガックリきます。懲役の楽しみなんて、お菓子くらいしかありませんから。いずれにしろかなり低レベルな話で、ホンマいい迷惑でしたが、こういうのになじめない新人の刑務官は、よくいじめられていました。

 「先生はこの仕事、向いてないんちゃう?」と何度か話したこともあります。腹を割ってくれる先生はトコトン話してくれるので、自分も情が移ってしまって、本気で(鉄格子挟んでになりますが)たくさん話してきました。「保母さんとかのが向いてるわ。先生は性格がよすぎるから、早く結婚して、こんなとこ辞めてまい」って言ってあげたくなる刑務官も多かったですよ。

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塀の中でも外でも、女は派閥争い……
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