【連載】知られざる女子刑務所ライフ8

塀の中でもクスリの乱用はアリ? 秘められた刑務所医療事情

2017/03/25 17:00
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法務省矯正局の矯正医官募集ポスター

 覚せい剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■ムショで病気になるとタイヘンです

 「刑務所」の別名って、ご存じですか? 「別荘」や「大学」がわりと知られているかと思いますが、以前は「健康ランド」というのもありました。早寝早起き&酒タバコ(もちろんドラッグも!)厳禁の生活ですから、確かに健康な人、健康になれる人も多いです。

 でも、実際にはきちんとした医療を受けられずに持病が悪化することもありますし、心の病で自殺する人も少なくありません。私の知り合いもそれで亡くなっています(涙)。

 なので、最近もヤクザの親分がムショ内の医療不備について行政訴訟を起こしたり、刑が確定しても、健康状態を理由に執行停止を求め、認められていたりするニュースがありましたが、気持ちや状況はとってもわかります。だって、危なすぎますやん。

 そもそもの問題として、刑務所や拘置所はお医者さんが足らないそうです。自分が医者やったら、そんなややこしいところで働きたいとは絶対に思いませんしね。私が看守なら殴ったろかと思う懲役(受刑者)もたくさんいてましたし、医者であっても同じ立場だと思うんです。たとえEXILEのATSUSHIに勧誘されてもイヤです。

 って私は注射打つのは上手やけど、医師免許ないから無理やねんけどね(笑)。なので、全員とは言いませんが、ムショ医者は「『懲役を懲らしめる』という異常な正義感に燃えている」または「シャバで何かやらかして、おれんようになってムショに来た」のかどちらかだというのが定説です。つまり少し間違えば、同じ懲役やったかも知れへん人ということです。

 そんなですから、ちょっとくらいの発熱や腹痛ではカンタンには診てもらえません。歯医者なんかヘタをしたら「3カ月待ち」です。そんなもん、診てもらう前に折れてるか、キンキンに腫れて大泣き入れてますけどね。

 だいたい3カ月の間ずっと歯が痛かったり、おなかが痛かったりしたら、絶対にアカンやつですよ。そこまで痛みが続かなくても、ちょっとした異常で「ガンやったらどうしよう」とか悩んで、心をやられてしまう人も多いのです。

 私も歯が痛すぎて、「頭に菌が回ったらどないしょう」って不安やったし、ピル(処方してもらえました)でじんましんが止まらんかったとき、「ああついに変な病気にかかってもうた……。もう終わりやな」って、自分で心にピリオド打ちましたもんね。じんましんは、ピルをやめたら半年かかって、ようやく治りましたけど、その間はずーっと不安で心が折れてましたよ。

塀の中の患者様――刑務所医師が見た驚きの獄中生活
その舌技、何かに使えないかな
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