長谷川町蔵×山内マリコ「小説で描く東京女子の生きざま」イベントレポート

“東京”と自分の距離感――長谷川町蔵×山内マリコが話す「東京女子の生きざま」

2017/03/13 20:30
miraihakitto
『あたしたちの未来はきっと』(ウィッチンケア文庫)

 『あたしたちの未来はきっと』(長谷川町蔵著、タバブックス)は東京郊外、町田の中学校を舞台に「イケてる女子グループ」に属した一人ひとりの、その後を追った小説だ。その刊行記念イベントとして『小説で描く東京女子の生きざま』が、下北沢B&Bで開催された。長谷川氏とともに出演したのが『ここは退屈迎えに来て』(幻冬舎)で地方と上京生活を描き、『あのこは貴族』(集英社)で東京の「貴族階級」を描いた山内マリコ氏。“東京”という街について語ったイベントをレポートしたい。

■町田や千葉、都心から離れる生活
 長谷川氏は小説の舞台となった町田市出身であり、「目黒区は豊かな感じがして苦手。ひがみなんですが」と、同じ都民でありながら都心への嫉妬心を感じていることを話す。電車の路線によっては、東京から神奈川を経由して到着することもあり、神奈川県にあると誤解されがちな東京都町田市。なお、天気予報は東京よりも横浜寄りであり、言葉遣いも「じゃん」を多用するなど横浜に近いという。

 ちなみに、町田市からさらに南に下った神奈川県藤沢市出身の中居正広氏は「だべ?」を語尾につけることがあるが、「だべ?」は藤沢を含む小田急江ノ島線沿線の言葉だと長谷川氏が続けると、場内は深くうなずく人々も少なくなかった。地方の人が聞くと神奈川出身の都会の人がバーチャルで“カッペ”言葉を使っていると思われるかもしれないが、「ガチなのだ」と長谷川氏。

 このように、東京といえども生活が神奈川ベースになっている町田市民だが、「町田なんかに住んでるの?」と言われることは、とても悲しいと話す長谷川氏に、山内氏が「三浦しをん先生が素敵に(町田を)書いてくれたから※」と励ます一幕もあった。(※直木賞受賞作の三浦しをん『まほろ駅前多田便利軒』(文藝文春)の舞台は町田がモデルになっている)

 東京からあえて離れるという選択肢もある。「千葉に越して、東京で遅くなり終電がなくなったらビジネスホテルに泊まると割り切って暮らしている知人が、とてもイキイキしている」と山内氏。ライフスタイルに1つの正解はないが、自分にあった暮らしができれば活力が湧くというのはとてもわかる。

 山内氏は上京当初、吉祥寺、荻窪と中央線沿線で暮らしており、町田で生まれ育った長谷川氏も小田急線沿線で住まいを探し「町田~新宿間から、じわっと広がったエリア」でしか住んでいないという。「離れると死ぬ的な、沿線の呪縛がある」と長谷川氏。なお、山内氏はその後、台東区方面と中央線沿線から離れるが、「年齢的に(生活)エリアを変えられるラストチャンスだったと思う。地方から東京に上京するとき並みの大きな転換だった」と振り返る。住んでいる街のカラーを変える、というのは、なかなかに決意や踏ん切りのいることなのだ。

『あたしたちの未来はきっと (ウィッチンケア文庫)』
あの頃、東京を夢見た自分が愛しくなる
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